成岡マネジメントオフィス

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2008年度特別セミナー

2008年6月14日(土)に、からすま京都ホテルにて、「知恵を出せ!元気になれ!中小企業!」と題して、2008年度特別セミナーが開催されました。大変多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございました。当日の模様をレポートでお届けします。

<第1部 基調講演>

「知恵を活かす中小企業はここが違う」
株式会社成岡マネジメントオフィス 代表取締役 成岡秀夫

まず、講演会の第一部として主催者の成岡から、「知恵の出る中小企業の特徴」というテーマで基調講演を行いました。

ここ数年、経済産業省、中小企業庁も「知恵経営」という言葉がキーワードになっています。また、最近では京都商工会議所も、会頭が交替し、新会頭からは「知恵ビジネス」ということばが、頻繁に発せられるようになりました。そのような環境や背景を踏まえ、今年度の基調講演のテーマに、この「知恵」を選択しました。

ご存知のように、この不況の厳しい経営環境にもかかわらず、非常に立派な業績を挙げていらっしゃる企業も、多く存在します。そのような中小企業の事例紹介を踏まえて、「知恵」を活かして業績を伸ばしている企業の特徴や傾向を紹介しました。

「知恵」は知識ではありません。知識はストックであり、蓄積はされていきますが、その知識をビジネスに活用するには、現場に即した「知恵」が必要です。ストックされた知識からビジネスモデルに発展さすには、特に中小企業の場合は、経営者のなみなみならぬ決意と覚悟が必要です。

そして、自社の強みを再認識し、徹底的にその部分で「尖る」ことです。飛び抜けることです。頭ひとつ抜け出すと、日本ではすぐに叩かれますが、叩かれないほどに飛びぬければいいのです。そうなると、届きません。届かないくらいに飛び抜けるには、では、どうすればいいのか。

それは、顧客志向を徹底し、顧客感動に結びつけるくらいまで、昇華さすことです。他と同じことをやっていたのでは、差別化になりません。区別はできても、差別化にならないと意味がありません。そういう意味では、特に京都の老舗は徹底的に経営資源を集中しています。

本業もしくは本業の周辺の、自社の強みを活かせる事業領域(事業ドメイン)に特化し、そこを徹底的に掘り下げます。「小さな池」で「大きな魚を釣る」のです。小さな池で大きな魚を釣るには、池が深くなければいけません。大きな魚が住めるくらいの深さまで、掘り下げることが必要です。

深く掘るには、その分野で事業が営める「ビジネスモデル」を構築する必要があります。「仕組み」を作る必要があります。その仕組みの作り方がうまい企業が、環境の変化に適応できて、生き残っていくのです。


<第2部 企業事例発表>

京都市中小企業支援センターVCプランを受章された企業3社に、そのユニークな製品開発への取り組みを発表していただきました。

株式会社三輪タイヤ 代表取締役 三輪智信氏

▼特殊な移動式タイヤ交換トラックによる大型タイヤの交換及びトラックの開発

本業はタイヤの販売ですが、この業界もご多分に漏れず、大手メーカーが自社の販売網を拡充してきているので、体力勝負になってきました。

そこで、弊社は大型バス、大型トラックなどの大型業務用車両の現地でのタイヤ交換に特化する作戦を立てました。会社は京都市の山科区小野ですから、半径 50km以内の企業が対象です。こちらから、特殊な改造したトラックで先方の会社に伺い、現地でタイヤ交換の作業を行います。これは非常に感謝されます。

次に、その事業のために開発したトラックがビジネスチャンスを生んでいます。つまり、現地に出向いてタイヤ交換をするので、大きな発電機やコンプレッサーをトラックに積み、現場作業では電源が必要です。そのために、作業中はエンジンをかけたままになります。

そこで、最近の環境技術、省エネ技術を研究し、コージェネタイプの発電機を開発しました。この技術は特許も申請し、既に公開されています。地震体験車、現場中継車などへ、適応できる分野が多くあり、今後非常に有望と考えています。ビジネスモデルとしては、この開発したトラックのレンタルが事業になるのではないかと思っています。

株式会社中川パッケージ 代表取締役 中川仁氏

▼革新的な包装材料「キュービックフローター」の開発

明治37年創業の老舗包装材メーカーです。もともとは、「木綿」などの緩衝材から出発しましたが、時代と共にダンボールを中心とした包装資材を扱っています。最近では、創業100周年を期に、全く新しいパッケージ包装材として「キュービックフローター」を開発しました。強力なフィルムで商材を上下にはさんで、完全に浮いた状態の包装パッケージとして使用します。シンプルで機能性に優れ、環境にも非常に優しい包装材料です。用途は、ディスプレイ、ギフト、パソコンなどの運搬に利用されています。

イタリアで開催された国際展示会で賞をいただいたり、雑誌に掲載されて評価いただいたり、その機能性とアイデア、ハンドリングの容易性、デザインなどは高く評価されています。

今後の課題は、商品の知名度を上げること、用途開発を図ること、提案営業で拡販することなどです。 思いもかけないアイデアや用途があると思っています。ぜひ、みなさまから新しいアイデアやヒントがいただけると嬉しい限りです。

エルティーアイ株式会社 代表取締役 坂部昌一氏

▼省エネ型蓄光式避難誘導製品の開発

特殊な蓄光塗料を含有させた蓄光の安全表示板を開発しました。従来の表示は蛍光灯式のものが主流ですが、この方式だと電気代も不要になります。停電時の安全誘導と省エネの一挙両得が期待できる革新的な安全表示板です。

2年前に消防法が改正され、この表示板の使用が認可されました。当社は、その以前から創業していましたので、創業当初はなかなか大変でした。最近、市場が大きく広がってきたことを実感しています。

方式としては、既に蛍光灯方式の表示板の上に、この蓄光式表示板を取り付けます。これで蛍光灯の点灯が不要になり、大きな省エネ効果が期待できます。もちろん、新設の建築物には、当初から設置できます。

ただし、不特定多数が出入りする建築物、具体的にはデパート、ホテル、病院などには設置ができません。学校、テナントビルなどは問題ありません。 代理店を通じて営業展開していますが、まだまだ大きな市場があるのに、手が回っていません。今後は、マーケティング活動を重点的に取り組もうと思っています。


<第3部 特別記念講演> 

「ベンチャーキャピタルからみた企業評価のポイント」
フューチャーベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役社長 川分 陽二氏

10年前に創業し、3年で株式上場できました。ベンチャーを支援する投資会社が、先に上場してしまったわけです。我々は、ベンチャーファンドですから、投資家から預かったお金を、これから成長しようとしている企業に投資するわけです。ですから、一番大事なことは会社を、企業を評価する「眼」が重要です。

まず、一番大事なのは、社長すなわち経営者の方の経営姿勢そのものです。人格やヤル気、熱意といったものです。やはり、頑張る社長さんへは支援の気持ちが動きます。経営能力は、むしろ他から補えます。姿勢は補えません。人を惹きつける魅力がないといけません。人生観も大事ですね。

次に、その業界が伸びる業界であるか、ということです。やはり、成長を目指すには、沈滞している業界では、非常に難しい。今後、成長が見込まれる業界で仕事をしているなら、大きな成長が期待できます。市場の成長性が大きく、かつ、その企業が差別化できるリソースがないといけません。

最後に、これが一番大事かと思いますが、経営管理能力です。成長を目指すというと、先に商品開発や営業に力を入れるトップが多いのですが、実はいくら頑張っても、管理能力が欠けていると成長は望めません。人事管理、収益管理、資金管理などが主なテーマです。特に、ベンチャーの場合人事管理がほとんどできていない企業が多いように感じます。成長軌道に乗っている企業は、やはりリスクを取っています。リスクを取るには勇気が要りますが、トップが決断することです。人の採用もリスクがありますが、人は一番回収の可能性が高いと思います。

当社は、相当以前から新卒採用に力を入れてきました。それも、数名の集団で採用を毎年行い、もちろん退職する人もいますが、相当な人数と勢力になってきました。中途採用も必要ですが、新卒のほうが教育などに手間がかかるものの、純粋培養で育てられます。

最後に、経営者の方に申し上げますが、業績が悪化しても、最後の最後まで諦めないで頑張る、粘ることです。一生懸命やっていれば、応援してくれる人も現れます。エンジェルと呼ばれる人たちです。最近は大幅な税制の優遇措置が図られています。そして、粘り強く金融機関と交渉することです。決して諦めてはいけません。


<懇親会>

講演会に引き続き、隣の会場で賑やかに懇親会が開催されました。講演会に参加の方々が、多数ご参加いただきました。

主催者の成岡の挨拶と乾杯で始まり、宴たけなわのところで、恒例の参加者全員紹介をいたしました。参加者お一人お一人を成岡からご紹介し、初参加の方には一言ご挨拶いただきました。50名近い方々をご紹介すると、1時間ちかくかかりました。

会場には、事例発表で講演いただいた、株式会社三輪タイヤ、株式会社中川パッケージ、エルティーアイ株式会社の代表取締役社長の3名と、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社の川分社長にもご参加いただきました。

1時間半の短い時間でしたが、参加者同士の相互の交流には非常に有意義な時間であったと思います。 ビジネスのきっかけは、人と人との出会いです。全く縁のないところに、ビジネスは始まりません。これを何かのご縁にしていただいて、参加者同士が交流を深めていただいて、何か新しいものが生まれると、主催者としても非常に嬉しい限りです。

最後に、主催者の成岡からお礼の言葉を述べて、お開きになりました。多数のご参加、まことにありがとうございました。来年は、6月に大阪で開催の予定です。