桜も散って、日中は20度を超す日も珍しくなくなって来ました。春本番と思って いたら、季節は、もう、初夏に向かって驀進中です。 3月末決算の会社が多いと思いますが、みなさんのところではいかがでしたか? 株価が比較的持ち直したので、大企業の業績はなんとか持ちこたえられる水準で したが、中堅中小企業の業況はいまだ明かりが見えないなかでの決算でした。 ところで、先日、昨年6月に急逝した親父の高知の実家の遺産の関係で、高知市 に行ってきました。現地で地元の方のお世話で、多少時間があったので、色々と 案内をしていただきました。 今回は、いつもと違って、「地方はなぜ活性化しないのか?」を考えてみたいと 思います。 **************************************************************** 高知市は、北に山が迫り、南が太平洋に向き合い、町の中を大きな川がふたつ走 り、南北に分断されています。県内への交通アクセスは悪く、県外へは高速道路 があるとはいえ、あまり頻繁な往来はなく、港は喫水が浅く、大きな船がつきま せん。空港は、市内から車で30分、そう遠いとはいえませんが、滑走路は短く、 機体の整備体制も難しく、お世辞にも空路が整備されているわけでもありませ ん。 つまり、関西や首都圏への交通や、マーケットへの物流が非常にネックになって います。 民間の企業が、このような状況からなかなか進出を渋っている現状を、さらに悪 化に拍車をかけているのが、県民性です。高知出身の方がいられたら、ごめんな さいですが、これが真実です。 高知の最大の企業は、なんと、「県庁」でした。「県庁」が最大の雇用数を誇る 「企業」なのだそうです。「県庁」が最大の企業となると、それ以外に大きい企 業がないということですから、県民の平均所得水準は4,000千円ないそうです。 数年前に国体の開催があり、道路がつき、ホテルが建ちましたが、それ以降、国 体バブルも終わって、消費を活性化する大きなきっかけがないそうです。 製造業は物流のネックから大きな工場がなく、これといって目玉になる観光資源 もなく、従来の産業では、将来の高知県の発展が期待できないことから、若年層 の県外への流出が深刻な問題となっています。 これはなにも最近始まった課題ではありません。従来から分かっている問題点な のです。それでも、問題が深刻であり、かつ、対策も簡単ではないことから、い つも、行政は解決を先送りし、一時しのぎの対策に終始してきました。 民間企業なら倒産している状況でも、県庁に就職していれば安泰という、親方日 の丸の風潮が、活性化を阻害してきました。 沖縄がコールセンターを中心としたIT産業に活路を見出そうと、サミットをきっ かけに企業誘致を盛んに叫んで、何とか県内の産業の活性化と県内所得の改善を 図ろうと、一丸となって進め成功したのとは対照的です。 私の浅学の範囲内でも、有名なところでは、大分県全体や愛知県の一部地方都 市、山形県や福井県の一部地方都市でも、ITを駆使した、大きなうねりが起こっ ています。特区も、その一部の動きです。四国では徳島県が非常に新しい企業が 多く勃興し、また、ユニークな企業も沢山排出するなかで、高知県だけが、な ぜ、IT化が遅れ、時代のスピードに取り残されたのか? IT産業の一部の業種は、立地も関係なく、従来の商流にも関係なく、新しい発想 で産業の新興に大きなインパクトを与えてくれます。なぜ、地方でこのような産 業が起業され、地方が活性化しないのか? 地方で新しい産業をIT技術を駆使して起こすには、地方における教育やキャッ シュ、バックアップ体制などのインフラを整備することが重要です。小手先のテ クニックではなく、5年先、10年先を見た、大局的なジャッジをする必要があり ます。グランドデザインを描くことが重要です。 それも、IPOだ、金融機関への説明だ、などと他からの要請で、しぶしぶ作成す るのではなく、本当に経営者や幹部が額を寄せ合って、ああだ、こうだと、喧々 諤々の議論をして、そして、ようやく出来るものです。 経営者が大きな絵を描いて、そして幹部が色を塗る、メンバーが、その塗られた 色の部分部分をきちんと達成する。そして、毎年、グランドデザインを見直す。 一度決めたから、数年間は安泰ということはないのです。ローリングして、毎 年、毎年、見直しながら、精査していくことが重要です。経営は生き物ですか ら、その時に考えていた前提は変わってきます。環境の変化は早いです。 高知県の立ち遅れは、このグランドデザインの欠如です。高知空港からプロペラ 機で大阪に向かって離陸して、空から高知市内を見たときに、改めて「グランド デザイン」という文字が頭を横切りました。 他人事ではありませんよ。あなたの企業でも毎日起こっている問題と根っこは一 緒です。これを、他人事と見過ごすか、我がことと思うか、そこが、経営者とし ての見識と先見性を問われるところです。 *****************************************************************