例年より少し早い入梅とのこと。 昨日の日曜日は、東京は終日じとじと降雨で、せっかくのテニスのお誘いも 雨で流れました。 久しぶりのテニスだったのに・・・・。残念至極。 しばらく、うっとおしい雨とのお付き合いです。でも、この雨がないと、 おいしいお米も出来ないし、まあ、自然の流れに身を任せるしかないかと。 最大の問題は、単身の身で洗濯物が乾かないことでしょうか? さて、このメルマガも、回数を重ねるごとに読者も増えてきました。 今回は、もしかしたら、関係者もいらっしゃるかも知れませんが、三菱自工の例 を検証して、企業のコンプライアンスに関して、ひとこと。 ================================================================= 単純に、今回の三菱自工の「リコール隠し」を糾弾するのは簡単ですが、あの報 道経過を見ていると、他人事とは思えない、様々な側面が浮かんできます。 振り返って、自分の企業や周辺に、絶対にあのようなことがないと、断言できる 組織があるでしょうか? 個人も法人も、この社会で生き残っていくためには、聖人君主のようなことを 言っていては、それこそ競争社会に置いてきぼりを食うことになります。 だからと言って、法律を破ってまで、企業の存続や利益を確保するのが正当化さ れるわけではありません。 しかし、実際の局面局面では、非常に難しい選択を迫られるのも、事実です。 成岡の所属する組織でも、いま、人事制度の改定を検討中ですが、悩ましいのが 「時間外業務」に対する「残業代」の支払いです。 どこの企業でも、人件費というコストは下げたい。いや、なるべくなら沢山払い たくないのが、本音だと思います。 低コストで高い生産性を出してこそ、中国やその他の近隣諸国と対等に競争が出 来る、そう信じている経営者の方は多いことと思います。 一度、正確に時間外手当を計算してみたところ、月間一人平均80時間くらいにな りました。それに、数回の休日出勤があります。深夜に残業がなると、申請して もらうようになっていますが、全員が正確に出しているとは思えません。 もちろん、企画書が間に合わなくて、徹夜で仕上げて、仮眠して、翌日プレゼン というぎりぎりの仕事も結構あります。 これを、年間の労働コストに跳ね返すと、約1億円の人件費が増加します。年間 の売上が20億円くらいの企業で、人件費が1億円増加したら、これは、人件費倒 産になりかねません。 現状は各人が申請をした時間に対してコストを払っていますが、すべて、いい意 味での自己管理型の裁量労働制を標榜しています。 しかし、時間の経過と共にだんだん、この理屈が難しくなってきました。ひとつ は、今年度から10名以上の大卒新入社員を採用したことです。 彼らには、きちんと理屈が説明できないといけません。 二つ目には、仕事をする環境の変化です。というか、クライアントの業態が少し 前に比べて大きく変化しました。 以前には、製造業が中心で、土曜、日曜日はほとんどが担当部署も休みだったの ですが、最近のクライアントさんはサービス業が増加し、むしろ、土曜日、日曜 日が出勤日の企業が多く、こちらも、その時間への対応が必要になりました。 大企業でも、通年採用や、4回生の授業に配慮して、休日や夏休みの採用活動を 取り入れる企業が増えてきました。 結果、年間で十日以上の休日出勤が発生し、代休をとれるわけがありません。 そういうわけで、自主的な自己管理型の裁量労働にも限界が見えてきて、9月以 降、新しい制度に切り替えるべく、現在検討中です。 コンプライアンス的に言えば、現在の時間外手当ては当然給与としての支給対象 になりますが、そこを非常に曖昧に運営しています。これも、三菱自工の内容と は異なりますが、ある意味、企業としての倫理観や経営の基本スタンスが問われ るところです。 確かに、我々のような業種(採用活動のコンサルタント業)では、時間に換算し た賃金の払い方は出来ないと思いますが、一定の成果を期待するなら、ある程度 の時間が工数としてかかることは、避けられません。 ゆえに、次の制度では、ある程度の裁量の範囲を決めて、「みなし労働時間」と いう考え方を導入することとしました。一定時間を「みなし労働時間」として、 予め給与に算入します。 完全に法令遵守かと言われれば、不備な点はありますが、それでも、会社として の姿勢は見せることが出来るとの英断です。 この増加した人件費ベースで来期の予算を逆算してみると、大きな売上の増加が ないと、当初の利益計画を達成しないことが明白になりました。 ゆえに、来期は増収減益が考えられますが、ここをまた、適当に現実対応でやる と、同じ苦労を永遠に続けないといけないので、このパラダイムを一端リセット することを決断しました。 おそらく、三菱も、かっての雪印も、一度誤魔化したアクションを取ると、それ を正当化するために、また、何か事実を歪曲したりして、嘘のスパイラルに落ち 込んでいったものと思います。 どこかで、誰かが、過去をリセットし、勇気を持ってコンプライアンスの確立を 目指すことが、将来の企業のブランドに大きな影響を与えることを、今回の一連 の三菱の対応は物語っています。それは、経営者しか出来ません。 おそらく、復活の確率は低いと思います。ひょっとしたら、企業存続の問題にま で発展するでしょう。 あのとき、正常な姿に戻るチャンスだったのに・・・・。嘆いても時間は戻りま せん。 経営者の姿勢が最もよく見えるもの、それが、コンプライアンスへの対応だと、 最近つくづく思います。 ブランドの形成には時間がかかりますが、崩壊は一瞬です。きちんとした対応が いかに大切か。三菱自工の事件は、そのことをいやというほど、我々につきつ けました。 ======================================================================