**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1062回配信分2024年09月02日発行 日常生活を変える酷暑の影響 〜ビジネスモデルを変える大きなインパクト〜 **************************************************** <はじめに> ・今年の真夏の猛暑も、いくぶん和わらいで少々過ごしやすくなってきた。さ すがに、高校野球が終わり、2学期が始まると秋の気配が漂ってくる。つくつ くぼうしから赤とんぼに切り替わり、花火やビニールプールがしまわれ、生活 が秋のスタイルに切り替わるはずだ。しかし、今年の予想は残暑がとりわけ厳 しいとなっている。9月になっても、おそらく酷暑とまではいかないが、最高 気温が35度を超えることが数回あるだろう。台風が来て、空気が入れ替わるの が普通だが、台風の来襲も例年と様相が変わっている。8月にこれほど多くの 台風が来るのは珍しい。まして、この前の東北地方から日本海に抜ける台風な ど、ほとんど聞いたことがない。やはり世界中の気候が以前とは大きく異なる 様相を呈している。 ・異常気象の理由は様々言われているが、過去に例のない気温の上昇が最大の 原因だ。空気も、海水も、異常に温度が高い。これに影響されて、風の流れが 変わり、海流の流れが変わる。何もかもが、以前のデータがあてにならない。 AIで過去のデータから天候を予測するのが難しくなっている。日常生活も、こ の異常な酷暑で大きく変わりつつある。この気温がまだまだ続くなら、自社の ビジネスモデルも変えないといけない企業が多くなる。住宅、食生活、衣類な ど、衣食住の多くの生活に関わるテーマが修正を余儀なくされるだろう。今回 は、この続く酷暑に関連するビジネスモデルの変化を、日常で気づいたものを 揚げてみる。まだまだ、関連する事項は多いだろうが、少し感じただけでもこ れだけあるのだ。他人事だと思っていたら、意外な落とし穴にはまる可能性も ある。 ・まず、季節感が変わった。春と秋の期間が短くなり、極端に言えば、冬から いきなり夏になり、残暑を感じている間に急に寒くなる。乱暴な言い方をすれ ば、四季の移り変わりが変わってしまった。特に影響が大きいのが、衣類。春 物、秋物というカテゴリーが将来消滅する可能性がある。あるいは、春、秋が 極端に短くなり、夏の後に残暑というカテゴリーが登場するかもしれない。背 広の合いものというのは、最近ほとんど見ない。夏にネクタイをして、背広の 上着を着る機会は、ほぼ皆無に近い。冷房の効いた、ホテルの宴会場などの正 式なパーティなら別だが、通常はほとんどノーネクタイ、シャツで終わり。西 陣織の夏物のネクタイも、ちゃんとした背広も要らなくなった。この傾向は当 分続くだろう。背広全国チェーン店の商品構成も大きく変わる。百貨店のバー ゲンセールのやり方も変わってくる。 <衣食住すべてに大きな影響が> ・住環境も、この酷暑の登場で変わる可能性がある。以前ならクーラーは限ら れた部屋にしかなかった。戸建て住宅は気密性が悪く、ふすま、欄間などがあ り、冷暖房がうまくできない。室外機を設置する場所と、冷やす部屋が離れて いて、天井を延々とパイプを通さないといけない。また、古い構造のマンショ ンでは室外機を置くスペースがないマンションがある。過去には窓に設置する ウィンドファンで事足りた。しかし、昨今の酷暑ではクーラーは必須のアイテ ムだ。昼間の気温が高い時間帯のみならず、夜間の就寝時間帯もエアコンをつ けっぱなしで寝ることが多い。そうなると、室外機が置きにくい古いマンショ ンの価値は相当下がるだろう。40年前ごろに建設されたマンションは、エレ ベーターの設置と室外機の置き場が難しい物件が多い。 ・ゲリラ豪雨の影響が激しい。昔の夕立というような風情のある話しではな い。30分くらいの短い時間で、ものすごい雨が降る。また、午後から入道雲が もくもく上がり、おおよそ予想のできる夕立ではなく、突然真っ黒な雲が来 て、すぐに豪雨に襲われる。昨今は携帯の雨雲レーダーで雲の動きが手に取る ようにわかるので、あまり慌てないが、それでも突然の豪雨には驚かされる。 自動車の水没もアンダーパスを無理に通ろうとして、頻繁に起こる。豪雨とと もに、突風が吹きまくり竜巻が起こり、雹が降ったり、雷がおちたりする。停 電が起こったり、下水が溢れてマンホールのフタが飛んだり、交通がガタガタ に乱れる。これほどの突発的な豪雨の発生は記憶にない。過去の経験、教訓が 役に立たない豪雨の襲来が、夏場は特に日常茶飯事になった。 ・食生活も影響は大きい。海流の蛇行や海水温度が高くなり、魚の生態系が破 壊されている。獲れる魚が獲れなくなり、逆に今までお目にかかったことのな い魚が網にかかる。魚中心の飲食店、料理屋、レストラン、すし屋なども多大 の影響が出ている。また、すり身を加工する練り物製造事業者も大変だ。野菜 の生育にも影響は大きい。路地ものの生育には多大の影響が出て、野菜の価格 が乱高下する。カット野菜、漬物を始め、野菜がビジネスの真ん中にある事業 者への影響は深刻だ。解決方法は、人工栽培、人工飼育だろう。つまり、魚で 言えば養殖だ。野菜は工場で人工的に製造する技術も確立されつつあるが、有 望なのは魚の人口養殖だろう。あるいは、染色体を人工的に変化させる技術だ ろう。この温度の上昇が止まらないなら、養殖は今後のキーワードになる。 <酷暑で消滅するビジネスも> ・屋外で作業する仕事に対する危機感は高い。建築現場での作業は、細切れの 作業中断が頻繁に起こり、効率が非常に悪くなる。温度、湿度の関係から、熱 中症の予防にアラームが鳴り、作業がしばしば中断する。作業服に送風機を設 置したタイプの売れ行きもいいそうだ。屋外のみならず、室内の作業者も着用 している。大きな工場、倉庫など、空調が効きにくい作業場などでは必須のア イテムになってきた。連続して長時間の作業に対し、軽くて寿命の長い電池の 開発も必要だ。また、日傘の内部に送風ファンを取り付けた新タイプも現れ た。若い女性のファッションとして、送付ファンのアイテムは売れている。 ネッククーラー、塩飴など、以前には考えられないアイテムが日常目につくよ うになった。 ・日本ではまだあまり目立たないが、山火事の発生頻度が高まっている。雨が 降らないので、山林が極端に乾燥している。砂漠化現象が進行している。平均 温度が2度Cくらい高くなると、あらゆる生態系に大きな変化が起こる。地中 の微生物、バクテリアも、現在の環境では生きていられない。昆虫も生態系が 変わると、植物の受粉に変化が起こる。野菜の生産地域の分布が変わり、寒暖 の差が大きい地域に野菜の生産がシフトする。逆に南方系の野菜の生産が盛ん になる。国内で原料が獲れた野菜、魚類、肉類などの主要な食材が生産できな くなる。大量の水が必要な水耕栽培の代表であるコメの生産がピンチになる。 乾田栽培という新しいコメの生産手法が脚光を浴びている。あらゆる分野で技 術革新が起こる。 ・海辺で海水浴という夏のお馴染みの風景が、どんどん見られなくなる。あま りに暑いので、砂浜での海水浴も、屋外のプールも、いまいち流行らない。日 焼けは皮膚がんの原因になるということで、特に女性は全身をカバーした銀行 ギャングのようないでたちで屋外テニスをするようになった。高校野球もスパ イクは白い色が全盛だ。伝統のユニフォームを白いタイプに変更した有名校も あった。強硬な反対があったそうだが、監督が押し切った。白色に変えること で、キャッチャーの頭の温度が相当下がったそうだ。周囲の雑音より、身の安 全を守る行動を図るほうが優先する。過去の伝統に拘っている場合ではない。 生徒や社員の身の安全を守ることが先決になる。夏場の猛練習などと言うの は、自殺行為になった。 <ビジネスチャンスと考えるか> ・酷暑の時期が始まるのが、早くなった。もう、6月に入ると非常に暑い日が ある。また、9月になっても暑さが収まらない。10月にも、最高気温が30度を 超える日がある。酷暑の期間が、おおよそ6月から10月とすると、約5か月間 は酷暑期間だ。前後を含めると、年間の半分近くは暑い、暑いと叫んでいる時 期になる。これは明らかに異常だ。しかし、これが現実なら、徐々に生活スタ イルが変わり、食生活、住環境、日常生活に大きな変化がもたらされる。酷暑 期間が長くなることで、ビジネスチャンスが生まれる業界もあれば、大きくマ イナスを生じる業界、職種、職業もあるだろう。この傾向は当分続くはずだ。 地球温暖化への取組は、少しずつではあるが進んではいるが急激に変化をもた らすことはない。 ・この酷暑の時期は外出を控えるという人が多くなる。午前中の10時くらいま ではいいが、その後太陽が沈む18時くらいまでは屋外での仕事、活動はなるべ く避けるようになる。建物の中で空調の効いたところでの仕事は問題ないだろ うが、工場現場、倉庫業務、建築現場など、どうしても屋外での作業が切り離 せないなら、少し時間帯を変えないといけない。先日の高校野球のように、午 前と夕方の二部制にする業務も出てくるだろう。つまり、コストアップにな り、効率は悪くなり、利益を阻害する方向にシフトせざるを得ない。しかし、 仕事によっては連続性が欠かせないものが多い。一度温度を上げるとそのまま 使わざるを得ない、溶かすとそのまま使い続けないといけない、一定の温度で 保持しないといけない、などなど二部制に馴染まない仕事も多い。 ・当分相当の間、この地球温暖化、酷暑は避けられそうもない。一人が、単独 の企業が逆立ちして頑張っても解消できる課題ではない。ならば、ゼロカーボ ンに協力はするが、この酷暑時期のビジネスのやり方を根本的に考え直さない といけない。以前の猛暑は、7月末から8月のお盆頃までの3週間くらいの間 だった。ところが、今では酷暑は4か月くらい続く。恒久的な対策を立てない と、一過性で終わる課題ではない。また、この逆境を逆手にとって、これをビ ジネスチャンスと活用できるか。某チョコレート店のように、この期間店を閉 めるという快挙に出て、それが評判を呼び11月の再開時には多くの待ち望んだ 顧客が列を作っていたという有名なお店もあった。考え方ひとつ、問題意識を どう持つかだ。逆張りで行くか、効果的な対策を立てるか。