**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1068回配信分2024年10月14日発行 石破政権の大博打解散 〜混迷の時代には戻って欲しくない〜 **************************************************** <はじめに> ・与党内野党の立場で、歯に衣を着せない毒舌でストレートな物言いで評価が 高かった石破新総理だが、出だしから党内各派閥からのブーイングが激しく、 世論との板挟み、股裂き状態で難儀を究めている。今ならご祝儀相場で野党の 体制が整わないうちに選挙をすれば自民党の得になるという身勝手な理屈で、 27日の総選挙に打って出た。ところが、公認、非公認のところで、世論の大逆 風を感じて迷走した。中途半端な仕置になり、損する人、得する人が出て、百 家争鳴、喧々諤々の大騒動になっている。選挙当日まで、あとわずかしかない なかで、右往左往する人が続出している。きちんとした政策論争もあいまい で、このままでいいのだろうかと危惧する向きも多い。このままなし崩しで総 選挙になるが、結果はどうなるだろうか。 ・企業で言えば、代表取締役社長になって、初めてそのポジションの重たさに 気が付く。副社長以下の役員の時代とは比較にならないくらい、その地位は重 たい。特に、中小企業では、大株主、代表権者、最高意思決定者であるので、 すべては社長の一存でことは運ぶ。会議を開いて、反対意見が多く出ても、最 後は総意と反対の決断を下すことも、ままある。それでも、クーデターはほと んど起こらない。たまに、中堅企業で社長以外の役員が結束して、取締役会で 緊急動議を出して、社長を引きずり下ろすことはあるが、これはごくごく稀な ケースだ。よほど、社内で大きな意見の相違、ぶつかりがあり、大方針を巡っ て亀裂が発生する場合だろう。ほとんどの中小企業では、反対はあるが、最後 は代表者が出した結論に従うことになる。それでも反対したら、会社を去る覚 悟がいる。過去の成岡がそうだった。 ・石破氏は過去に5回自民党総裁選挙に出馬して、一敗地にまみれてきた。選 挙に負けたあとは、ほとんど非主流派でやってきた。党内野党のような立場で 諫言を発してきた実績は立派なものだ。世間も、その胆力、意志の強さに期待 をした。しかし、なってみて初めて分かったが、敵も多かった。過去からの経 過があるから、日本では継続性を重んじないといけない。総理大臣は変わって も、官僚機構はそのまま残る。アメリカのように民主党、共和党と、政権が変 わると、ワシントンのスタッフは大半が失職し、次の大統領が指名したスタッ フと入れ替わる。大統領選挙のあと、ワシントンでは引っ越しの大騒動にな る。次の政府の要職に入るスタッフは、民間企業や大学、専門家などから選ば れる。日本とは大違いだ。 <出だしで混乱しつまづいた> ・確かに、したいこと、やりたいことと、出来ることは違う。理想と現実の ギャップが大きいと、それまでに言ってきたことと、かなり相違のあることに なりかねない。今回は、どうもそのような印象が強い。総裁になったいきさつ からして、多くの利害関係者に義理があり、借りがある。逆に、敵に回った人 も多い。あちらを立てればこちらが立たずという、四面楚歌の状態になってい る。かたや身内の自民党の中に反対勢力があり、かたや国民の方を向けば事前 の言質を守らないといけない。まさに、前門の狼、後門のトラで、にっちも さっちもいかない。「信なくば、立たず」などと格好いい台詞を念じている場 合ではない。選挙の後には、相当事態が混乱する可能性もありそうだ。結果次 第では、倒閣運動が起こるとうそぶく重鎮がいる。 ・政治が混乱すると、経済も混迷する。ようやくデフレ脱却の兆しが少しは見 えてきたかと思ったが、まだまだ物価高は続き、実質賃金はマイナスの状態 だ。最低賃金が上がる10月になったが、急に懐が温まる様子はない。中東やウ クライナの戦争は続き、アメリカ大統領選挙の行方も不透明だ。中国との関係 も、一向に改善の兆候が見えない。為替も不安定で、140円台をアップダウン している。株式も乱高下を繰り返し、一向に落ち着く気配がない。物価高や人 手不足での倒産も相次ぎ、先月も小職が知己の企業が民事再生を申請した。過 度な設備投資が原因だが、見通しが不透明なことが最大の原因だろう。過去の 歴史に比べると、2000年代になり、変化の度合いが加速している。過去に経験 のないスピードで世界は変化している。 ・若者が将来の日本国に見切りをつけて、不安感が増して、海外に出ていく人 が増えている。ますます働き手の確保が難しくなり、海外からの労働者に依存 せざるを得なくなる。まだまだ現在の日本では、海外からの移民的な労働者の 受け入れ環境は整っていないので、首都圏では外国人労働者が原因の悲惨な交 通事故も起こっている。埼玉県では、いくつかの中堅都市で、住環境の悪化が 激しく、人口の流出が起こっている。少子化も簡単には歯止めが効かないが、 少なくとも若い人たちが未来に希望が持てる社会環境を作らないといけない。 少子化は、婚姻数の減少が原因だから、若い人が結婚して所帯を持って、子供 をたくさん産んでも安心だという社会にしないといけない。急激にはできない だろうが、遠い将来に希望が持てるビジョンを示して欲しい。 <政治の混乱は避けたい> ・対抗勢力の野党もだらしない。自民党のオウンゴールで何点ももらっている のに、勝ち試合に結び付けられない。相手がエラーや四球を頻発してくれてい るのに、残塁の山で肝心なタイムリーヒットが打てない。そのうちに、潮目が 変わって、また、元の木阿弥に戻りかねない。野党も誰かビッグな人材が出 て、大きくひとまとめに大同団結を図らないと、小さな勢力が小さな家の中で いがみ合っても、仕方ない。そのような腹の大きな、肝の据わった人材が輩出 できないか。このままでは、抵抗勢力にはなれても、二大政党で拮抗する状態 にはなり得ない。今のままでは、大同小異で未来の日本国の運営を任せるだけ のポテンシャルを持ち得ない。若手の中から、未来を背負える人材が出ないだ ろうか。 ・政治家があてにならないなら、自分たちで何とかしないといけない。地域、 地方で、素晴らしい活動、活躍をされている若手経営者の方はたくさんいるは ずだ。従来の考え方に染まらず、自分自身の意志と信念をもって、表舞台に登 場して欲しい。何といっても、国が成り立つのは経済がしっかりしていないと いけない。それが大前提だ。資金が乏しいと、何をやるにも先立つものがない と、できない。あるいは、海外から投資を呼び込んでもいい。日本の未来は捨 てたものじゃないと、海外の投資家に評価してもらえるような環境作りが大切 だ。それには、あまりに日本は規制が多い。既得権を主張し、既存の勢力が新 興企業の台頭を妨げる。正しい競争がきちんとできるような環境を作らない と、ユニコーンは育たない。 ・統治機構を維持する官僚のなり手がない。バカみたいな国会のつまらない答 弁書の作成に、深夜まで残業、残業し、最終電車にも乗り遅れ、ムダなタク シー代を税金から支出している現状を変えないといけない。何かが狂ってい て、どこかがおかしい。企業なら、これほどムダなことをして、結果の出ない ことを続けていると、間違いなく事業価値は棄損し、競争相手と戦えず、資産 は目減りし、売上は減少し、いつかは倒産の憂き目に会うはずだ。ところが、 国は国債という借金をどんどん売り出して、それを中央銀行が買い入れる。国 の借金は膨大にあり、稼ぐ力の2倍以上の借金がある。さいわい、国民個人の 資産があるので、それを足せばカバーできるが、収入に見合う支出に均衡さす ことができないでいる。まず、国会議員の定数を削減することだろう。自らの 足元から始めればいい。 <投票して民意を示そう> ・27日の総選挙の結果、どうなるかは不透明だが、いずれにしても、それほど 大きな地殻変動は起こらないかもしれない。しかし、与野党の勢力が均衡し、 不安定な政権運営になるだろう。その昔、社会党の土井代表が吐いた有名なセ リフ、「山が動いた」という事態には至らないだろうが、少しは動くに違いな い。動いて、正しい方向に向かえばいいが、逆に不安定になり、妙な合従連衡 が起こり、その都度その都度で、仲間が決まる。そうなると、一貫した方針が 出せないから、外から見れば非常にわかりにくい。ちぐはぐになり、模様にな らないパッチワークになる。矛盾した施策になり、帯に短し、タスキに長し、 という状態になる。黒でもなく、白でもない。はっきりしないといけない場面 で、中途半端な結論になる。 ・武家政権の最後、江戸時代に終止符を打ち、ときに明治新政府を打ち立て、 海外からの圧力に屈せず、その後の繁栄を築いたのは、明治政府の優秀な若手 官僚だった。若くして海外に出向き、世界の情勢を勉強し、その後の国の方針 を大きく間違わなかった。分かりやすい四文字熟語でスローガンを打ち出し、 全国民のベクトルを揃えることに成功した。資源が乏しかったので、海外に出 ていく中で、アメリカ、ヨーロッパの強国に肩を並べるまでに至った。人口が 急増し、資源がなかったので、東南アジアに資源を求めて進出した。当然、周 辺諸外国とぶつかり、ABCD包囲網の中で、太平洋戦争に突入した。終戦後の体 制を作るときに大きく改革をできなかったことが、今日の原点になっている。 ・心配事は、この総選挙の後、政権が不安定になり、事態が流動化すること だ。しかし、自民党の大勝利となり、何のお咎めもなく、みそぎは済んだとい う事態も良くない。勢力均衡し、不安定になり流動化するのは好ましくない が、お灸をすえる意味では正しいか。次の関門は来年の参議院議員選挙。この 2回の選挙で2020年代後半以降の日本の針路が大きく決まる可能性がある。投 票率が数%上がるだけで結果は大きく変わる。アメリカのように大統領を直接 選ぶ仕組みではないので、まず、政権選択選挙であるこの衆議院選挙を棄権し ないことだ。直接民意を反映できる機会は多くない。権利を遂行し、最低限の 意志を示すことが大事だ。選挙制度そのものにも問題や課題があるが、それは さておき、まず投票権を行使しよう。棄権は消極的な現状肯定につながる。