**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1077回配信分2024年12月16日発行 もっと海外事情に目を向けよう 〜海外諸国との関係で日本経済は成り立っている〜 **************************************************** <はじめに> ・自社の事業経営には関係ないとおっしゃる方も多いかもしれないが、最近の 国際情勢の揺れ動き方は尋常ではない。少しの動きも、為替や金利などの財 務、通商などの交易や輸出入に大きく影響があり、動向を把握しておかないと 自社の経営に結局大きな影響を及ぼす。以前は、日本国内の動向にのみ関心を 持っていればよかったが、昨今はとてもそんな生易しいものではない。遠い国 の少しの動きが、まわりまわって自社の経営に大きな影響を及ぼす。なにせ、 資源がほとんどといってないわが国なのだ。原材料を世界から輸入し、製品や サービスに加工し、国内はもとより海外に輸出して稼いでいる。当然、世界の 多くの国との関係は非常に重要だ。小学校の社会科の授業でも教えることだ。 ・まず、食糧から見てみよう。食料自給率はご存じのようにカロリーベースで 40%前後だ。これを国は早いうちに、とりあえず50%に上げようとしている。 その目標はとりあえずおいておくとして、一番の課題は従事者の高齢化対策だ ろう。コメ農家、酪農、野菜、果樹、漁業などいろいろとあるが、平均年齢は 65歳を超えているはずだ。そして、後継者のなり手が少ないので、どんどん従 事者は減っている。このままでいけば、20年後、30年後には極端に減ってい く。当然、食糧生産はいくら生産性を上げても追いつかないだろう。構造的な 仕組みを変えないと難しい。農産物ではJA農協が流通を抑えている。農地の扱 いも難しい。法人の参入も幾分緩和されたが、それでも多くの制約、制限、規 制がある。一度大きくリセットする勇気が要るだろう。 ・当面、海外からの食糧、飼料は輸入に依存するしかない。それも、特定の食 糧、飼料は圧倒的に輸入に依存しているという事実を冷静に認識しておかない といけない。友好国からの輸入ならまだしも、関係が薄い国や遠方から危険な 地域を経由して、船舶で運んでくる食料は、何かが起こったときは入手困難に なる。あるいは、最近の天候不順や地球温暖化で、収穫できるものができなく なる。あるいは、タネ、種苗の栽培が海外で行われていて、その国の政情不安 や天候不順で、一気に情勢が変わることがある。最近では、カカオ豆が生産国 の天候不順で収穫量が一気に減少し、あっという間に価格が高騰した。日本で はどうすることもできない。激変した状況を甘んじて受け入れるしかない。そ のような食料品が、実は山ほどある。 <平和ボケしている日本> ・石油、原油はどうだろうか。昭和48年、1973年に勃発したオイルショックの 記憶は、まだなまなましい。その当時と比較して格段に省エネは進み、油への 依存度は下がっている。しかし、ガソリン始め、まだ多くの石油製品は原油の 輸入に頼っている。天然ガス、LPGもその類だ。とにかく、国内消費エネル ギーの大半が海外から輸入されている。石炭は多少国内でも採れるが、CO2の 排出量が多いので地球温暖化対策から今後使用量は格段に減るはずだ。原子力 の利用も、国内で意見の一致を見ないまま政府は明確な方針を打ち出せない。 中東で紛争が起こり、運河や海峡でトラブルがあると、まだまだ大変な事態に なる。急に対策を打てと言われても、こればかりはどうにもならない。日常生 活への影響は大きい。 ・食べ物、油の次は、現代技術革新に欠かせないレアアース、つまり希少金属 だ。希少でなくても、例えばアルミニウムの原材料であるボーキサイトは日本 では全くと言っていいほど採掘できない。同様に、多くの金属、希少金属はほ とんどが輸入に依存している。コバルト、マンガン、アンチモン、ゲルマニウ ムなど、まだまだ多くの重要な金属があるが、ほとんどは中国、東南アジア、 アフリカなどから輸入している。これらの供給が停滞し、停まると途端に産業 の歯車が狂いだす。超優良企業のニデック(旧社名日本電産)などが製造する 小型モーターなどはこのレアアースをふんだんに使っている。磁石にも多くの 金属が使われている。半導体も、精密電子部品にも多くの希少金属が利用され ている。供給に支障が起こるとパニックになる。 ・それ以外にも、産業の重要な原材料、素材は多くを海外からの輸入に大きく 依存しているという現実は、中学高校の社会の授業では習ったが、それで認識 は切れている。社会人になり、自分が入った企業でその現実に遭遇し、改めて 認識を新たにする。しかし、日常の業務に関係する範囲でしか意識しない。 いったん外に出ると、食事をしたりコーヒーを飲んだりしても、一向にその意 識は戻らない。平和ボケした日本人には、危機感が薄い。ヨーロッパや中東で の戦争、シリアでの政権崩壊、中国における深刻な経済不況、アフガニスタン やミャンマーでの難民問題、韓国での政治不安など、国際情勢の動きは激し い。そこに、1月20日からアメリカでトランプ政権が復活する。 <日本は陸地で国境を接する国がない> ・日本は地図で見ると、陸地で国境を接している国はない。しかし、海で近接 している国は多い。ロシア、韓国、中国、北朝鮮、アメリカ、フィリッピン、 台湾など(まだ抜けているかもしれないが)。それぞれが、それぞれの複雑な 事情を抱えている。体制的には専制国家である、ロシア、中国、北朝鮮。韓国 は、最近トラブルが多く政情不安定。フィリッピンは治安が悪く、日本から犯 罪者が逃げ込む温床になっている。台湾は、中国とにらみ合っている。アメリ カはトランプ氏に政権が移行するので、過渡期だ。安定的に経済も順調で、友 好的な国はほとんどない。日本は、首相が3年ごとくらいでコロコロ変わる が、今までは与党が安定的に政権を掌握していた。裏金疑惑で与党が総選挙で 惨敗し、与野党伯仲の状態になったが、まだそれでも安定している。 ・韓国などは北朝鮮と38度線で接している。京都と滋賀県が逢坂山の境目でに らみ合っているようなものだ。陸地で接しているのは非常に恐怖だ。国境を簡 単に突破しようと思えばできる。横一線に戦車を並べて、一斉に前に出れば止 められない。ヨーロッパも、縦横斜めで国境を接している。同様な島国のイギ リスのみが陸地で接していない。中東も、アフリカも、西アジアも、ほとんど の国は陸地で隣国に接している。この陸地で接している国境をガードするに は、非常にコストがかかる。アメリカもカナダ、メキシコと陸続きで国境を接 している。不法移民を企てる人たちが、どこかから抜け道を作って国境を不法 に超えてくる。止めようがない。止めようと思ったら、何千キロの国境に壁を 作らないといけない。そうしないと、越境を止められない。 ・陸地で接している隣国が敵対的になったら大変だ。北朝鮮と韓国、ウクライ ナとロシア、イスラエルとアラブ諸国は、常時戦闘態勢だ。中国とインドの国 境もきな臭い。アフリカ諸国も、紛争が絶えない。そんな世界中の国から、貴 重な資源を輸入し、食糧を全世界から買い漁っているのが、わが日本国の現状 だ。国際情勢が動くと、途端にいろいろなサプライチェーンが途切れて、多く の生産が停止する。多少の備蓄はあっても、すぐに底をつく。日本で生産する 工業製品の原材料の大半は海外からの輸入に大きく依存している。だから、常 に仲良くできるかと言うと、そうでもない。中国は北朝鮮、ロシアの後ろ盾 だ。この3か国は何らかの形で結びつきは強い。中国は、アメリカがトランプ 政権になる前に日本と仲良くしたほうが得だと判断し、最近接近し始めてい る。 <もっと外国を見てくる> ・国際情勢が動くと、為替が大きく変動する。現在の150円前後のレートで は、貿易赤字は大きい。120円くらいがいいのかもしれないが、日本の都合だ けでは為替レートは決められない。以前は労働力が豊富だった中国が、経済不 況と少子化で揺れている。個人的にはあまり好きな国ではないが、それでも大 国で隣国の引っ越しできい関係だから、何かあると困る。すきではないが、付 き合い方は慎重にならざるを得ない。先日も、ユニクロの柳井さんが新疆地区 で生産された綿を使用していないという発言が炎上して、大騒動になった。中 国では、ユニクロ製品のボイコットに発展している。昔では考えられない海外 諸国との取引、付き合いが企業の致命傷になる。なかなか中小企業ではそこま でカバーできない。 ・個人的には信頼できる国はベトナムか。仏教国で対日感情も悪くない。欠点 は英語が通じないことだ。永らくフランス領で、ベトナム戦争でアメリカと 戦った。英語は敵国語だったので、若者の教育課程に英語がない。今はどうか 分からないが、大学生でも英語が話せない。タクシーに乗るとドライバーが翻 訳アプリで対応する。しかし、人柄は悪くない。中産階級の人数も増えてき て、これから発展するだろう。社会主義国だが政権は安定している。ベトナム からの留学生、労働者も多い。ベトナム語の発音は中国語と似ていて、母音の 発音が難しい。日本人には苦手な言葉だ。とても今から勉強しようという気に ならない。会話アプリで誤魔化すしかない。 ・中国が不安定で、朝鮮半島の情勢も混沌としている。台湾との戦争が勃発す るとは思えないが、一触即発状態になる可能性はある。日本は防衛に相当のカ ネを投じないといけない。少子化が避けられず、国力が伸びない中で防衛予算 が突出する。人口が減るなら、ある程度の海外からの移民を受け入れる覚悟が 要る。そうやって海外からの人々を受けいれて、何とか国力を維持するしかな い。今のままの少子化が続くと、遠い将来日本国はなくなる計算になる。それ なら、海外諸国と同じように国際化するしかない。今から、海外の近隣諸国の 情勢に目を向けるべきだ。そして、数年に一度は海外に出かけて実際に自分の 目でその国の状態を見てくる。百聞は一見に如かず。現地、現物、現場を見 て、自分で判断できる物差しをもつことだ。NETの不確かな情報に惑わされて はいけない。