**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第1141回配信分2026年03月09日発行 来るか令和のオイルショック! 〜中東イランでの戦争勃発にエネルギー事情緊迫〜 **************************************************** <はじめに> ・衝撃的なアメリカ軍のベネズエラ侵攻からしばらく時間が経過し、少し状況 は落ち着いてきたかと思いきや、アメリカとイスラエルがイランに空爆をしか けて世界に衝撃を与え、最高指導者以下多くの要人を殺害した。怒ったイラン は、中東の多くのアメリカ拠点、イスラエルに空爆で反撃し、出口の見えない 戦争に突入した。ホルムズ海峡が閉鎖されたとの情報もあるが、正確なところ は分からない。しかし、どこかのタンカーが攻撃を受けたとか、多くの深刻な 情報が錯綜し、緊張が一気に高まっている。このまま数週間戦闘が続けば、世 界経済は相当の混乱になるだろう。アメリカの株式相場も大きな動きを見せて いるし、為替も連動して大きな値動きを示している。非常に不安定な状態だ。 EU諸国も敏感に反応している。 ・報道でご存じのように、現在日本国の原油の備蓄は250日前後あり、急にパ ニックになることはない。LNG(液化天然ガス)の備蓄は数週間と言われてお り、この方が問題だ。エネルギーに関しては、急に太陽光や地熱発電に切り替 えることはできないので、この戦争が長引くと日本経済に大きな打撃を与える ことは間違いない。中東方面から90%近くの石油を買っている日本にとって は、中東からの石油ルートが断たれると、大きな問題だ。250日とは8か月く らいだから、慌てて走り回る必要はないだろうが、不安は不安だ。ガソリンの 小売価格は反応して、少し値上がりしている。一気に高騰するとは思えない が、備えあれば憂いなし。準備しておくに越したことはない。しかし、何をど うしていいかは分からない。 ・昭和48年、1973年の秋に起こった第一次オイルショック。小生は大学の4回 生で就職先も決まっていた。中東でイスラエルとアラブ諸国との間で戦争が始 まり(それまでにも何度も小さな衝突はあったが)、その影響で中東からの石 油の輸送が止まり、日本経済は大パニックに陥った。当時の備蓄は90日くらい だったと思う。3か月で石油が底をつくという情報が駆け巡り、一時騒然と なった。現在の様にインターネットの情報もなく、何が正しいのか分からな い。TVや新聞の報道しか情報ソースがないので、いろいろな噂が駆け巡った。 ご存じのように、スーパーの店頭からトイレットペーパーがなくなり、多くの 生活物資の欠乏が起こるとの風評が流れた。笑い話しのようだが、現実に起 こったことだ。庶民はパニックになった。 <1973年のオイルショックの再来か> ・節電の大号令が発出され、TV番組は23時で打ち切り。読売TVの看板番組の大 橋巨泉の11PMという番組がなくなった。ネオンサインも23時で消灯。夜の街が 真っ暗になった。ガソリンスタンドは日曜日休業。遠方に出かけるには、高速 道路のサービスエリアで給油するしかなかった。一度、この間ガソリンが減っ て給油のために名神高速道路へ給油に走った。琵琶湖の大津SAで給油しようと 思ったら、路肩にあまりに多くの車が停車していて、それが給油のための車列 だと分からず、通り過ぎて次の多賀SAまで走って給油したことがあった。次の 料金所の手前でUターンして通行料を節約した記憶がある。大変な思いをし て、日常生活を何とか凌いだ。どれくらいの期間続いたか忘れたが、1年以内 に何とか戻ったと思う。 ・特に製造業への打撃は深刻だった。成岡が就職した化学繊維製造業でも、原 材料の調達に支障を来し、操業を50%に落とした。4月に就職して、5月連休 明けに配属先の事業所工場に出勤したが、製造機械は半分止まっていた。工場 の一部は照明を落として、暗かった。日本全体が暗かった。仕事があまりない ので、出勤日数は半分だった。雇用調整助成金が支給されたので、給料は減ら なかったが、独身寮ですることもなく、テニス三昧に明け暮れた。これで随分 うまくなった。あとは、食堂で卓球をし、夜は麻雀に明け暮れた。悲惨だった のは、構造改革で希望退職を会社が募ったことだ。多くの中高年の従業員が退 職に応じ、組合長が集会でお詫びの言葉を述べた。雇用を守れなかったという のだが、組合の責任でもないだろうが。 ・オイルショックは数年後にももう一度起こり、またぞろ希望退職の募集が行 われた。新卒採用が数年間ゼロになり、大学院生のみの採用になった。おかげ で、成岡以降の大卒新卒者の採用がなかったので、いつまで経っても後輩が 入ってこなかった。おかげで、イベントの世話役や組合の役員、独身寮の運営 責任者、高卒寄宿舎との窓口など、多くの損な役回りを引き受けさせられた。 しかし、この経験が後日になって大きく生きてくるのだが、その時点では分か らなかった。人間、何がプラスになるか分からない。特に、組合の役員を長く やらされ、その間に地方選挙が数回あり、選挙対策の職場代表として数か月張 り付いたこともあった。これもオイルショックの副産物といえばそうだろう。 振り返ればプラスもあったのだ。 <企業業績への影響は大きい> ・今回の中東戦争の落としどころは分からない。どうなったら戦争が終結する のか。イスラエルとアラブ諸国との紛争も絡んでいる。イランの核開発の問題 もある。ここに、中国、ロシアが関わると、もっとややこしくなり、一層の混 迷を深める。日本の立ち位置は難しい。アメリカべったりもできないし、かと いって反米の立場も取りにくい。スペインやカナダの様にあからさまにトラン プ政権と対立するのもマイナスだ。この間、大臣が関税交渉の続きで訪米して いる。関税交渉も、まだ完全に決着したわけではない。そこへ降って沸いたよ うにイランで戦争が起こった。現状は、小競り合いを通り越して、完全に戦争 状態だ。イランの最高指導者の後継者はトランプ氏気に入りでないとNGが出 る。傀儡政権になるのだろうか。 ・日本が取れる選択肢は限りなく狭いし、小さい。エネルギー源を急に石油以 外に求めるのは困難だ。太陽光にしても、洋上風力にしても、地熱発電にして も、すぐには難しい。まだ、原子力の方が安全を確保して動かす方が現実的だ ろう。エネルギー源の大半を海外から輸入している日本では、海上交通路が遮 断されるのが最もリスクが高い。しかも物流のほとんどは海上輸送だ。もちろ ん、中東を経由しないで物資も運ばれてくるが、中東からインド洋を通り、マ ラッカ海峡を経て日本の港に運ばれる。生活物資の原材料、食糧、工業製品の 原材料などの大半は、海外からの輸入だ。過去のオイルショックで学習したの で、一定の石油の備蓄はあるが、それでも資源は有限だ。紛争処理に手間取る と、大きな痛手を被る。 ・為替への影響もある。紛争が世界各地で起こると、安定的な通貨が値を上げ る。つまり、円高になるはずだ。しかし、現状の為替の動きはそうでもない。 さらに円安になると、物価高に拍車をかけることになる。現状でも155円の水 準はかなりの円安だろう。これが160円になり、まだ円安が続き、石油の輸入 に赤信号が灯ると、またぞろ物価高が進む。企業業績にも影響が出てくる。消 費が停滞し、サービス業、小売業など消費者直結のビジネスの業績が悪化す る。さらに、金利が上がってくると、余計にそれに輪をかけて景気は停滞す る。一部の狭い業界の製造業は潤うが、他の業種、業界は水面下に沈む可能性 が高い。少し希望が持てそうだと思いきや、この中東での戦争で足元がすくわ れるかもしれない。 <大きな転換の契機になる> ・1973年のオイルショックの際には、その後の技術開発が省エネ一本に絞られ た。日本国民は偉いもので、その後エネルギー原単位は大きく低下し、省エネ 効果で企業業績は回復した。もう一度オイルショックが数年後に襲ってきた が、そのとき企業体力は相当ついていたので、あまり痛まなかった。そこまで 今回リカバーできるか自信がない。そもそも、日本の電気代、電気単価は以前 から相当高い。1980年に海外出張した際に電気代の比較を行った記憶がある が、そのときアメリカと比較して電気代単価は4倍だった。国際競争力という 意味では、非常に厳しかった。今回、これを契機にエネルギーコストが高止ま りすれば、さらに国際競争力は低下する。世界に伍してやっていけるだけの競 争力はどんどん削がれていくだろう。 ・今後、人口減少に拍車がかかり、電気代、水道代、ガス代などのインフラコ ストは際限なく上がっていく。なにせ、維持する人口が減って行くのだから仕 方ない。最近、JR東日本が運賃の値上げを発表した。相当なアップ率だった が、利用者の減少も大きな要因だという。同様に、いろいろなインフラコスト が高止まりする。果たして、この状態の日本国でモノ造り産業は維持できるの か。製造業だけでなく、小売業、サービス業、卸売業の中小企業は海外に出て いける体力は乏しい。資金も厳しいし、何より人材がいない。この戦争を契機 にますます企業間の合従連衡が加速するか。中小の2社が合併して1社にな り、経営統合し少しでも体力をつけるか。大が小を吸収するだろうが、それで も企業体力が上がればいいのではないか。 ・出口の見えないイランでの戦争は遠い世界の出来事だが、日本のエネルギー 事情には大きなカゲを投げかける。石油化学製品の製造コストも上がるだろ う。ガソリンにとどまらず、燃料費の高騰で運送コストが上がる。ハウスで栽 培する野菜の値段も高くなる。化石燃料の消費量は以前に比較して下がっては いるが、大きく減少しているわけではない。特に、東日本大震災の影響で原子 力の利用が停滞したことが大きい。核融合発電という夢の技術もあるが、実用 化にはまだまだ相当の年月がかかる。節約も限界があり、ゼロにはできないか ら、抜本的な省エネルギー生活を考えないといけないか。ムダをなくす程度で は難しい。車のない生活スタイルに転換するなど、大きな変革をする必要があ るだろう。原材料の乏しい日本では不可避だと覚悟することだ。