□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第178回配信分2007年09月23日発行 原因の奥にある真因を見つける 〜真因を直さないと真の問題解決にならない〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ 医療の言葉に「全人的医療」ということばがある。ホリスティックケアと英語 に訳されているが、日本語では「全人的医療」という。つまり、病気そのもの を直すのではなく、患者人間全体を見て治療するという意味だ。人間の全部を 医療の対象と考える。 成岡も6年前に十二指腸に穴が開き、待ったなしの緊急手術をしたことがあ る。日曜日の夕方に穴が開いて、這ってタクシーに乗り込み、転がるように病 院にたどり着いた。そして、翌日緊急の手術で何とかなった。腹膜炎直前の危 ない状態だった。 直接の原因は十二指腸に穴が開いたのだ。しかし、そもそもの原因は、20年前 に遡る十二指腸潰瘍だ。ずっと20年間、痛い、おかしいといいながら、抱いて いた。一度、35歳くらいのときに、疲労が極限になり、東京の御茶ノ水の駅で うずくまったこともある。 そのときは、3日間くらいの安静で戻ったが、十二指腸のねじれは治らない。 幸い、胃潰瘍は胃がんに進行することが多いが、十二指腸潰瘍はがんにならな い。十二指腸がんというのは聞いたことがない。なので、意外とノー天気で ほっておいた。 それが、40歳後半になってあばれだした。その原因は、ストレスだった。いろ いろなことが重なって、非常に厳しい状態が長く続いた。何とかカバーしてい たが、とうとう体が悲鳴をあげた。そして、ついに穴が開いた。それが、真実 だった。 企業経営が破綻したり、経営不振に陥る企業も、これと同様だ。いや、そんな に大変な状態にならなくても、普通の状態でも、企業は問題や課題との戦いの 毎日だ。表面的な原因ばかりをつぶしていても、一向に業績が上がらない。経 営者はなぜか分からない。 よく考えてみると、俗に言う「もぐら叩き」状態になっている。とにかく、目 先の問題をつぶしていく。それも間違いではないが、一向にらちがあかない。 成岡の病気で言えば、ストレスの本当の原因=真因をつぶしていないからだ。 なぜストレスがそんなに溜まるのか。本当の原因は、仕事か、家庭か、生活状 態か、あるいはそれが全部関連しているのか。食事をきちんととり、充分な睡 眠時間を確保し、適度な運動をする。当たり前のことができないから、ストレ スが溜まる。 そこを治さない限り、真の解決にはならない。問題の真因に迫らないかぎり、 またぞろ同じことが起こる。経営者の方からヒアリングしても、当初、初対面 でなかなかそこの本質的なところまで行き着かない。なので、表面的なことし か分からないことが多い。 それが、数回面談したり、こちらも経験を重ねると、短時間のうちにことの本 質が見えてくる。優秀な医者は問診と聴診器だけで病気の真因が分かるとい う。そこまで行かなくても、時間を少々かけてでも、ことの本質に迫らない と、また同じことが起こる。 売上が上がらない、設備投資に失敗して多額の借入金が返済できない、息子の 後継者がうまく会社を切り盛りできない・・・・。いやはや、毎日、いろいろ な相談ごとが飛び込む。しかし、そのどれもが、目先の現象の奥にある真因か らそもそもが始まっている。 成岡の十二指腸潰瘍は、待ったなしの緊急手術で、根治治療となった。4週間 の入院後、2ヵ月後からテニス、1年後のマラソン大会に復帰できた。いまで は、本当にあのとき手術をして良かったと思っている。そうでないと、いま、 こんなリズムで生活できない。 自分では意外と気がつかない問題の真因。それを、どうしたら自分で見つけら れるようになるか、そして、対策のアクションを取れるようになるか。課題を いかに冷静に、客観的にみつめられるのかがポイントだ。のめりこむことも 大事だが、ときどき一歩引いて見つめることだ。 人間の体はおかしなもので、こうしたい、ああしたいと想いと逆の動作をする ことが多い。真っ直ぐボールを飛ばそうと思うと、飛ばない。飛距離を稼ごう と思うと、飛ばない。売上を上げようとすると、あがらない。自然体で、顧客 本位に考えていると見えてくる。 見えてきたときに、すぐに対応できるかどうかは、一重に経営者のものの考え 方や性格に依る。慎重な人もいれば、大胆な人もいる。それはそれでいいが、 一番のポイントは、それが真因の解決策になっているかだ。手戻りは、大きな ロスを生む。 小さな規模の企業に手戻りの余裕はない。だから、真因を見極めることを間違 わないようにしないといけない。間違った臓器を手術しても、何の結果も生ま れない。体力と財源を浪費するだけだ。そこを見極める眼力を養うことが大事 だ。