□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第184回配信分2007年11月05日発行 固定費の削減はまず代表者から 〜身近にある見えないコストを削減する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●いろいろな中小企業の経営再建のご相談事にのらしていただいているが、お おむねどちらの企業も業績が思わしくなく、かつ、借入金過多で返済原資が少 なく、資金繰りに苦しい状態が続いている。なんとかしてあげたいが、金融機 関のご協力なしでは、なかなか前に進まない案件が多い。 ●総じて売上の伸張が大きく期待できない中で、どうやって返済原資を捻出す るかとなると、変動費率を低減するか、固定費を削減するのが常道ということ になる。または、何か事業性の薄い資産を売却して負担を軽くして、金利負担 を減らし、返済原資を少しでも楽にする。意外と選択肢は少ない。 ●さて、変動費率を下げるというのは、仕入の材料費を低減する、商品の仕入 代金を下げる、原動費コストを下げる、その他いろいろと考えられるが、いず れも相手との交渉ごとになることが多い。時間がかかるものもあり、一方的に こちらの言い分が通ることも少ない。双方にぎくしゃくした関係が生まれる。 ●それに引き換え、固定費の削減は社内の意思決定でできるものが多い。決算 書を持ってこられて、当社はぎりぎりの固定費で運営していて、もうこれ以上 削減することは不可能、とおっしゃる代表者もある。確かに、決算書だけを見 れば、固定費は毎年変わらず、結構少ない金額で運営されている。 ●では、打つ手はないかと言えば、そうではない。数字では見えてこないロス が会社にはいっぱいある。必ず、先方の現地を拝見させていただくが、なんと 段取りの悪さや非効率的な日常の運営で、業務の生産性が悪いところが多い。 たとえば、幹部の行動予定が書いていない、分からない。 ●10時くらいに事務所に電話をすると、女性の事務の方がでて、代表者に取次 ぎをお願いするが、行き先が分からないという。最近は、それでも携帯電話が あるので、すぐにつかまることが多いが、かえって行動予定を書かないことが 多いという。帰社の時刻も不明のままだ。小規模な企業ほど、これが多い。 ●代表者がこれでは、社員の方々も推して知るべし。また、比較的年齢が高い とパソコンを使っていただけないケースも多い。あるいは、少々できるけれ ど、中途半端に個人的に使用していて、データの持ち方が悪く、他者が利用で きない。メールが少しできるだけで、格段に業務の効率が上がるのに、それが ネックになる。 ●代表者がそうだと、当然、部下の管理職もそうなる。親父が依然として、口 頭でのマネジメントしかしないから、管理職も部下に同じようになる。よって 旧態依然としたマネジメントしかできない。それでいて、名刺にはご立派にア ドレスが書いてある。そしてメールを送ると、総務の女性がメールを開けると いう。 ●固定費の削減は、交際費や交通費、広告宣伝費を削減するだけではない。こ ういう目に見えない、数字で現れない非効率のコストをいかに削減するかが、 大事なのだ。会議もそうだ。非効率な会議が多い。各自が資料を準備しない。 口頭での報告で終わる。議事録もない。まして、先に会議の課題設定がされて いない。 ●幹部数名の会議でも、結構報酬が高いから、全体を加えた時間当たりのコス トは馬鹿にならない。そして半日くらいかけて会議が行われる。日程の決め方 もルールがない。決めておけば、仕事の段取りもスムースに行くと思うが、そ の場で次回の会議の日程が決まる。不都合この上ない。 ●まずは、代表者が自ら率先して会社のマネジメントのルールを決めて、徹底 する。それだけで、目に見えないコストが随分節約できる。業務の生産性も上 がる。情報の共有が進めば、連絡ミスや資料を探す時間もなくなる。必要なも のがどこにあって、いつ、誰が、どう直したのかわかる。自分だけ分かってい たのでは、仕方ない。 ●こういう地道な努力の積み重ねが、毎日の業務の効率化につながる。パソコ ンを各自に1台ずつ購入したから、明日から生産性が目に見えてあがるかと言 えば、そんなことはない。道具は使ってなんぼだ。非効率な使い方は、かえっ てロスを生む。まず、代表者の足元から、固定費の削減につながる業務の非効 率を修正する。 ●会社や組織は、ひとつ歯車が好循環すると、連動して動くところが多い。車 の発進と同じで、最初動かすのに大きなエネルギーが要る。静止している状態 からのスタートは、摩擦係数が高い。そこを、動かすのは経営者の大事な仕事 だ。まずは、自分から変えていくこと。自分が変わらないで、周囲に変われと 言っても、誰も動かない。