□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第196回配信分2008年01月28日発行 社長が本業や社業に専念できているか 〜経営者の本業への集中度合が課題〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●業績が思わしくない企業のトップが、果たしてどれだけの時間とエネルギー を社業、いや、社業の中でも本業に集中できているか、はなはだ疑問なことが ある。社業や本業が不振だから、結果的に周辺の問題解決、特に資金繰りに時 間を取られ、本業への集中度合いが下がっている場合もあるだろう。 ●確かに、結果論だし、卵と鶏の議論になってしまいそうだが、果たしてそう か。そもそも、経営トップは、社員と取引先、いや、周辺のあらゆるものを背 中に背負って、その責任を全うすべき立場なのだ。どうも、それが、ぴんとが ずれてはいないかと、思わざるを得ないことも多い。そもそも、社長のミッ ションは何ですか?と。 ●社長のミッションは、簡単に言えば経営に対する全責任を負っているわけだ が、どうも、そうではないケースも多い。役割分担をしていると言えば聞こえ はいいが、周囲に丸投げをしている場合も多い。そして、ご自分は本業とすこ しずれたところで、一生懸命汗をかいていらっしゃる。それで一生懸命と勘違 いされている。 ●もちろん、資金繰りに関して奔走していただくのはやぶさかではないが、資 金繰りがタイトになったそもそもの原因をつぶさないと、またぞろ、来月も同 じことが起こる。結局、しばらくして、行き詰る。基本的なところの手当てが できていない。抜本的とまでは言わないが、肝心なところに手をつけていな い。 ●業績不振で自社の不動産を売却したり、株券を処分したり、その他の資産を 切り売りして、当面をしのがないといけないことは、多い。しかし、キャッ シュが本業から生み出されたものでないと、早晩、行き詰る。その、本業から いかにキャッシュを生み出すかに、どれくらいトップが集中できているか。 ●周辺に問題があるケースも多い。副業でやりだした事業に、手を取られる。 時間をとられる。全然、シナジー効果(相乗効果)のない事業に、エネルギー をそがれる。そして、立ち上がりから、うまくいかないとなると、何とかしよ うと、さらに突っ込まざるを得なくなる。かくて、何が会社の本業か、分から なくなる。 ●たいがい、こういうケースは、両方がおかしくなる。新規の副業に、本業の 資金が流れていく。金融機関は、本業に資金を貸し出してはいるが、トンネル で周辺の事業に資金が注入され、リターンがなくなる。そのうちに、本業もお かしくなってくる。最悪の、負のスパイラルに落ち込んでいく。こうなると、 なかなか、止めるのは難しい。 ●振り返って、何が問題だったのか。経営トップが、本業に、もっと言えば、 社業のコアの部分に、どれくらい集中できたのか。そもそも、その会社の キャッシュの源泉は何であったのかと。そこを勘違いされてはいないか。本業 で、利益が出ているからと言って、安心して手を抜いてはいけない。本業とい えども、激烈な競争の中に身を置いている。 ●いまの時代、楽して利益の生まれるビジネスなど皆無だから、利益の出てい る本業だからといって、手を抜くことは許されない。むしろ、利益の出ている ときが危ないので、余計に注意し、神経を尖らせ、対策を打たないといけな い。不振の症状や兆候が見えてからでは、遅いことが多い。それくらい、変化 のスピードは速い。 ●昔は良かった、という昔が、実は3年前くらいというのが、最近の実感だ。 10年前などは、はるか昔の話で、戦前の感覚だ。いまや、インターネットの普 及で、情報はあっという間に世界を駆け巡る。そんな時代に、トップが一瞬で も本業のコアから目をそらせば、あっという間にライバルに持っていかれる。 ●それでも、少しずつでも、新しいことに取り組んでいかないといけない。全 く、旧態依然とやっていれば、いつかは制度疲労や金属疲労が蔓延し、組織体 制の硬直化が起こり、業績の悪化は止まらない。本業との相乗効果が見込め、 やがてはひとつの柱に成長する事業ならいいが、必ずしもそうでないケースも 多い。 ●資金繰り、労働問題、周辺住民との環境問題、資産の売却交渉、従業員の事 故、取引先とのトラブル、などなど、事業をやっていると、そういう課題はつ きものだ。しかし、トップはできるだけ、事業の中心から離れず、その事業の 3年先、5年先を見据えて、ビジョンを描くことが、ミッションなのだ。方針を 決め、任せる部分は任せる。 ●要するに、自分は何をやらないといけないかが明確になっていない。あるい は、勘違いされている。中小企業のトップは、オーナー兼経営者が多いから、 周辺の社員から、なかなか苦言は言いにくい。かくて、我々のような立場の者 から言わざるを得ないが、なかなか簡単に、ああそうかと言っていただけるこ とは少ない。 ●結局、トップがそういう体制を取れない、作れない経営の仕組みに問題があ る。また、そうならざるを得ないという原因をつぶさないといけない。往々に して、中小企業の場合、それを人材不足で片付けることが多いが、本当にそう か。トップが自分自身を納得さすために、そこに逃げてはいないか。真正面か ら問題を捉えることが大事だ。