□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第205回配信分2008年03月31日発行 軸がぶれると底辺での振幅が大きくなる 〜トップの迷走は末端での大きな動揺を生む〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●4月からの暫定税率の問題や、円高、アメリカの景気の低迷などの大きな関 心を引くテーマが目白押しだったので、プロ野球が開幕したことを、うっかり 忘れていたくらいだった。新聞には、確かにパリーグの開幕、そしてセリーグ の開幕などの記事があったが、それもあまり関心を引かなかった。それくら い、プロ野球の価値が下落しているのだろうか。 ●昔は、球春待ち遠しいという気持ちで、プロ野球の開幕を待ち望んだ。プロ 野球くらいしか、スポーツでわくわくするものがなかった。それが、昨今はJ リーグはあるし、世界フィギャでの日本選手の活躍もあった。高校野球もやっ ているし、相対的にプロ野球の価値の低下は、一目瞭然だ。旧態依然とやって いると、いつかは飽きられる。 ●さて、本題の暫定税率の迷走問題は、目に余る政治の貧困からことは起こっ ている。現時点では、どうなるかは予測の域を出ないが、いずれにしても大半 の知事や首長が反対し、一般消費者はほぼほぼ歓迎し、経済界は意見が分かれ ている。確かに、難しい問題ではあろうが、ここまで問題を引っ張って迷走し ては、いけない。 ●暫定といいながら、毎年延長し、暫定でもなくなった取り決めを修正でき ず、ずっと引っ張った政治の貧困がなせる業だろう。官僚の人たちは、自分た ちの代で荒っぽいことをしたくないから、問題先送りパターンでやり過ごす。 それが、ずるずると結論を出さないから、ヘドロと膿がたまりにたまって、と うとうここまで来てしまった。 ●新聞にも大きく載っているが、トップがどうしたいのかが、全く見えないの が一番の原因だ。いい、悪いは別にして、明確に方針を示さないから、混乱に 拍車をかけることになる。会社では、トップが決断しないと、最終的には会社 が潰れる。大企業の大きな決断は、新聞に華々しく掲載されるが、中小企業も 同じことだ。 ●大企業の億円単位の投資が、中小企業なら百万円単位の投資になるだけだ。 ことの重さは同じことだ。意思決定のブレは、経営の軸が揺らぎ、最終的には 末端の振幅が大きくなる。なによりも、顧客や消費者が敏感に感じ取り、黙っ て冷ややかに離れていく。気がつけば、後ろを振り返っても、誰もいないとい う事態が起こりかねない。 ●そうなったら企業は終わりだから、そうはならないように努力する。ところ が、官僚の世界は先送りが尊重される。全部が全部そうかとは言わないが、一 般的にはそういうことが多い。決めないことがいいことで、何かを決めたら利 害が対立する。旧態依然ということが、まかり通る。同じことを繰り返す。だ から、今回のような事態が起こると収拾がつかない。 ●軸がぶれるとは、基本的な考えがしっかりしていないからだ。消去法でなっ たトップだから、なぜかお鉢が回ってきた。誰もやらないから、引き受けた。 そういう人がトップになると、能力はともかく、意欲が低いレベルだから、軸 がしっかりしていない。過去の首相では、中曽根康弘氏だけは自分が総理大臣 になったら、やるべきことをいっぱい箇条書きにして持っていた。 ●意欲と能力の両者を備えている人は少ないが、一国のトップになるからに は、それは必要十分条件だ。それがないと、国そのものが迷走する。金融行政 のトップも空席では、恥ずかしいとしか言いようがない。常に、自分は何をし ないといけないか。会社はどうあるべきか。そもそもの理念はなんだったか。 今の判断は間違っていないか。 ●経営とは環境適応業だが、苦しい場面も、辛い場面もある。断腸の思いの決 断ということも、まま、ある。ときとして、全員が反対してもやらないといけ ないときは、やらないといけないのだ。それくらい、トップは孤独であり、自 問自答して、迷い、不安になり、自信がなくなることもある。しかし、経営理 念に基づいた基本だけは、しっかりしていないといけない。 ●コマと同じで、軸がブレだすと倒れるのは早い。運動エネルギーが一点に集 中していると、効率はいいが、一端揺らぎだすと止まらない。自助努力では、 解消できない。日頃から、経営理念を復唱し、この基本的な命題に沿って、判 断する。苦しいときほど、しんどいときほど、基本に帰るのが経営の原則だ。 決して、ばたついてはいけない。 ●一番不幸になるのは、末端で汗をかき、頑張っている従業員や社員の人たち だ。そして、取引先にも、お客様にも、金融機関にも、大きな迷惑をかける。 結果的に、自分だけのことで済めばいいが、そうはいかないことがほとんど だ。トップはそれくらいの荷物を背負って歩いている。今回の、政治の迷走を 見ていると、果たしてそれくらいの気概があるのか。 ●小泉氏が辞めてから、安倍政権、福田政権と、自民党の自助能力の低下は目 を覆うばかりだ。不幸なのは、第二勢力がきちんと育っていないことだ。後継 者不在の企業と同じだ。周りから見ていると、不安でしかたない。本当に、大 丈夫かと心配になる。そういう意味でも、トップは、常にしっかり、判断の軸 を明確に持つことだ。