□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第206回配信分2008年04月07日発行 新しい部署では新しい発想で頑張る 〜前例踏襲の引継ぎは止めた方がいい〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●この4月1日から新年度が始まった企業や組織も多いと思う。日本では、1月 開始の事業より、4月の新年度の開始のビジネスが多い。一般の企業も、それ に併せて事業計画や予算措置を4月〜翌年3月で組むことが多い。4月の開始 は、新入社員の入社、異動、転勤、職場の変更、組織替えなどなど、落ち着か ないことが多い。 ●筆者の知己の方々も、多く新しい部署や部門に異動された。しばらくは、転 勤や異動の挨拶で、騒々しいことだった。突然の異動もあったようで、新聞で その異動を知った。ご本人とは最後まで顔を合わすことなく、異動された。そ の異動が、納得か不本意かは別として、組織に属する限り、人事に関する異動 や変更は避けがたい。いちいち、気にしていては、やってられないという気持 ちのほうが強い。 ●異動の後遺症を引きずる方もあるが、決してそれは得策ではない。誰がこれ を決めたんだという恨み節も分からないではないが、来る人も出る人も、それ なりの理由と背景を背負っている。人事にはいろいろな意味がある。目先目先 の理由もあれば、相当長期を睨んでの人事異動もある。末端では、そこまで推 し量れない。また、推し量っていったいどれくらいの得があるのか。 ●そんなことをごちゃごちゃ考えるより、割り切って早くスタートダッシュを 切ることだ。いろいろなことを引きずっては、とてもいいスタートは切れな い。気持ちの切り替えが大事だ。そうでないと、今年の某球団のように、開幕 何連敗を引きずることになる。どんな部署にもどんな仕事にも、それなりの存 在理由がある。もし、やってみておかしいと思ったら、どんどん変えればい い。 ●人事異動の大きなメリットのひとつは、人が異動することで、新しい目で業 務の見直しを図れることだ。先例が必ずしもいいとは、決して限らない。むし ろ、過去の成功体験は悪だと思ったほうがいいくらいだ。そういう意味では、 異動して新しい人がフレッシュな気持ちで担当すると、何か新しい知恵が出る はずだ。日本の社会は農耕型民族だから、先例重視がまかり通る。 ●ヨーロッパのようにゲルマン民族が狩猟をしながら国家を形成したのとは、 わけが違う。なので、どうしても経験重視、先例重視になる。過去に、こうし たらうまくいった。それはそれで、事実としては正しいが、すべて「そのとき の条件と環境では」という、枕詞が付く。その条件と今とは同じか?果たし て、そうか?条件が全く同じということは、ビジネスの世界ではあり得ない。 ●細かく見れば、すべて違うはずだ。しかも、それを違う人が、違う環境で、 違う方法で行う。結果が同じということは、本来あり得ない。人事異動や組織 変更も、確かにたまにはミステークもある。あれば、すぐに修正すればいい。 面子も格好もない。過ちを正すに憚ることなかれ、である。朝令暮改も、時と して、止む無し。ただし、納得のいる説明は、必要だ。 ●人事異動は、新しい人が新しい目で業務の見直しをしたり、やりかたを考え たりするから、値打ちがある。前任者からの引継ぎも大事かもしれないが、筆 者は数回の転職と限りない部署の異動を経験し、実は毎回ほとんど引継ぎをし ていない。引継ぎをしいようかと言われたこともあったが、大事な資料をきち んと残していただければ、大丈夫とほとんどお断りしてきた。 ●ほとんど、それで支障はなかった。ただし、お互いにきちんと資料を整備し ておいての話しだが。いつ異動があってもいいように、日常きちんと引継ぎの 資料を準備しておく。今日言われても、明日すぐに異動できるように、周囲を 整理しておく。デスクに書類が山積みの人は、本当に仕事が大丈夫か、疑わし い。 ●金融機関の異動は発令から1週間以内というらしいが、得意先への挨拶も全 部できないかもしいれないが、無駄な時間を得意先の挨拶回りに費やす必要は ない。むしろ、心のこもった手紙や、メールでもきちんと相手に伝われば、そ れでいい。異動の後遺症を引きずらず、それをバネに変えて、早く新しい業務 の問題点を把握する。もちろん、その前に一定の習熟は必要だが。 ●組織は、異動で生産性が一時期多少落ちても、早く回復して新しい組織での 生産性の向上に期待している。何も付加価値の下落を願って組織の改変や異動 をしているのではない。当事者になれば、そんな悠長なことを言ってられない という人もいるかと思うが、それなら、それで結果を出せばいい。有名な経営 者として名前をなした方の多くは、一時期不遇な部署に行ったり、困窮の子会 社を立て直したりしている。 ●そういう方の発言のほとんどは、苦労は買ってでもしろと。その苦労は、必 ず後で役に立つ。いや、自分で役に立つようにしないといけない。せっかくの 経験が活きない。異動の理由をあれこれ詮索するより、さっさと新しい部署の 実態をつかんで、自分なりの考えをまとめることだ。組織は異動によって、新 しい息吹が吹き込まれることを、期待している。 ●それに応えれば、また、次の展望が開ける。実は、次の展望を開くのは、人 事部でもなければ親しい役員でもない。あなた自身の問題なのだ。混んだバス に乗らないといけないことも、ある。ガラ空きのバスのときもあるだろう。そ れでも、粛々と頑張る。少し時間が出来たら、自分に投資する。新しい勉強を 始めてもいい。苦手なところを補強してもいい。 ●異動はチャンスだ。筆者は、何回も転職し、その都度、あまり関連のない業 界に行った。それが、いま、非常に役立っているが、その都度新しい仕事で戸 惑った。しかし、ほとんど引き継ぎはしてもらわなかった。また、引き継げる ほどのストックもなかった。それで、よかったと思っている。前例がすべて悪 いとは思わないが、ビジネスはひとつひとつが、全部条件が違うのだから。