□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第207回配信分2008年04月14日発行 ご存知か「アベリーンパラドックス」 〜はっきり言うことは、実は非常にいいこと〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●ご存知だろうか「アベリーンパラドックス」という話しを。ずいぶん前に、 以前某出版社の役員をしていた時に、某コンサルティング会社の研修で教えて もらった有名な話しだ。ある心理学者が妻の実家での出来事から考え出された 仮説だ。合意していないことに合意するふりをすることが、個人にとっても、 企業にとっても、人生や組織を崩壊に導く恐ろしい所業であるというもの。 ●行きたくもないアベリーンの町にはっきりと意見を言わないがために行くは めになったことから、「アベリーンの逆説(パラドックス)」とか「アベリー ンへの道」などと呼ばれている。日曜日の夜に、どこかで外食をしようという ことになった。家長の父親が家族全員に諮ったところ、誰もはっきりした意見 を言わない。なんとなく、かなり離れた町アベリーンに行くことになった。 ●外に出たらいいけど、天候の異変で砂漠の町から、離れたアベリーンに行く のは大変だった。必死の想いでただどり着いたのはいいけど、日曜日でお目当 てのレストランは満員。仕方なく、高いお金を払って、非常に満足度の低いレ ストランでの食事となった。また、帰りが大変だった。時間はかかるわ、疲れ るわ、高いコストはかかったわ。 ●帰宅してから、誰かがクレームを言い出した。なんで、こんな日にアベリー ンに行ったの?誰が決めたの?犯人探しが始まったが、誰が真犯人か分からな い。また、犯人はなかったのだ。その場の雰囲気、空気、なんとなくの風が支 配し、結果的に誰が決めたわけでもなく、結論が決まってしまった。それで、 結果は最悪だった。 ●これを、有名な「アベリーンパラドックス」という。アベリーンはアメリカ の砂漠の中にある町の名前だ。よく企業に起こりえることだが、組織はほとん どこれに気づかず、不成功の道を歩んで行く。誰が悪いというわけではない。 なんとなく、そういう結論になった。誰が決めたわけではない。そういう空気 が支配していた。 ●事例として、結婚したくないのに結婚してしまった男女の話し。ピーナツか らジェット燃料を作ろうとしてプロジェクトを立ち上げた会社の話し。米国ニ クソン大統領のウォーターゲート事件などが、よく事例で挙げられる。研修や 会議の席で、合意に至ったものの、ほんとうはほぼ全員が終わっていないこと がある。そのときは、事業を進めていく際に、スタッフが動かない。 ●合意したのに動かない理由を聞くと、「あの時は、ハイというしかありませ んでした」と答える。これはスタッフが悪いのではない。経営者の意思決定フ ローに問題がある。日本人は、特に公けの席で、面と向かって否定も肯定もし ない。なんとなく、その場の空気に従う。最近は、KYという略号もあるくらい だ。空気が読めないという意味だ。 ●四字熟語に「面従腹背」ということばがある。顔では同意して、腹の中では 反対しているという意味だ。そこまでひどくないにしても、賛成しない=協力 しない、積極的に関わらないということになる。これが、意外と多いのだ。ま あ、いいや、黙っておけば、どうせ・・・・。これが、日本式組織決定の現状 に近い。誰も、責任を取らないし、責任持って関わらない。 ●たとえば、プロジェクトで提案がなされたとき、反対意見がひとつもない場 合は、その案件は大方失敗する。これもアベリーンへの道を歩んでいることに なる。批判・非難が横行している組織に出やすい傾向だ。スタッフが言うこと を聞かないからといって、指示命令を強くすると、自主性がなくなる。かと いって、自主性に任せると、何も結果がでない。 ●そして、このような言葉が出てくる。「言ったはずだ」「教えたはずだ」。 これをハズ管理といい、上司として最も「ハズかしい」管理と言われている。 人を動かすとは、そういうものではないことはわかっていても、マネジメント は難しいと考えている。ただし、ひとつだけマネジメントの真理がある。上司 自らが「変革する」努力をしなければ、部下は決して変わらないということ だ。 ●以前のメールマガジンで、社長が変わらなければ組織は変わらないという内 容のメルマガを送ったが、これは近年にない反響があった。それくらい、病ん でいる組織が多いということだ。筆者の最近関わる事業再生案件は、実は、こ れがほとんどだ。経営者の考え方、マインドひとつで、組織は右へも左へも動 く。それは、怖いくらいだ。これほどまで、変わるかという事例を筆者は、何 度も見てきた。 ●小さい、大きいは別にして、企業や組織でよくある「アベリーンパラドック ス」という事象を、知っている、意識しているだけでも意味がある。そうだ、 いま、どうも、そっちの方向にことは進んでいると思った、感じただけで、か なり修正はできる。いい人の集まりの組織は、実は結果がでないという現象 は、ほとんどこのパターンに入るのだ。