□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第209回配信分2008年04月28日発行 先送りのツケは必ず出てくる 〜その場その場で現実的に解決すること〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●地方の隠れ借金が大変な額になっている。4月から新しい法律が施行され て、特別会計などという隠れ蓑ができなくなり、企業会計でいう連結決算が必 要となった。これで、いままで黒字、黒字と広報していた自治体が、一転、大 赤字になっていることが分かる。財政再建が必要な自治体ということになり、 債務超過であることが、白日のもとにさらされる。 ●財政再建団体になると、どうなるか。自治体ごとに赤字解消の方策を実施し ないといけない。不要なものを捨てて、要らないものを売却し、そして住民に も、今まで以上に負担を強いる。具体的には、医療費補助の打ち切り。優待乗 車券の廃止。固定資産税の増額などなど。これは大変だということが、ようや く分かる。でも、頭で理解できても、納得できない。 ●高額の医療費の負担に耐えかねて、他府県に転出する人も出ている。負担は 大きい、サービスは悪いなら、結論は当然だ。いまさら、こうですと説明を受 けても、じゃあどうするんだ、ということが明確でない。とにかく、支出をで きるだけ、落とすことが至上命題になる。コストカットだけでは解決できない 問題も、とりあえず何をするんだという構想がない。 ●赤字の事業が特別会計で処理していて、白日の下にさらされていない。問題 があることはわかっているのに、自分の代で何とかしようと思わないから、課 題先送りになる。まあ、とりあえずいいや、と自分で納得してしまう。本当の 痛みが分からないと、なかなか解決の方向すら見出せない。そして、いよいよ となって、大阪の橋下知事のようなことなる。 ●今度は、全体最適より、自分の担当の自己防衛に走る。全体がどうなろうと も、とにかく自分の部署の、組織の保全に走る。そして、一番大事な住民のた めにという大義名分は、とっくに忘れられている。笑うかもしれないが、意外 と自分の会社や組織でも、こういうことが平気で起こる。そして、誰もおかし いと思わない。 ●上下水道や医療サービス、交通の整備などは、右肩上がりの時代に将来の数 字が予測され、実施の決定がなされている。いまだにその数字を元に、いろい ろな採算が試算されている。とっくに実態はかけはなれているのに、誰もそれ を止められない。民間なら信じられないが、公的機関は、堂々とそれが、まか り通る。おかしいと、皆が思っているのに。 ●民間企業でも、よくあるのは、20年前くらいの借金で開始した事業のツケ が、今頃になって帰ってきた。あるいは、相続対策でやった不動産の所有が、 予想を外れて欠損金が出来、いまさらながら返済の金額の大きさに慌ててい る。また、キャッシュアウトしているが、本業の儲けを示す数字の表では分か らないことも多い。だから、そのままほっておく。 ●要は、課題を順番に先送りにしてきただけだ。誰も自分が何とかしようと思 わない。何とかしようものなら、評判は悪くなり、選挙で落選する。地雷を踏 むのはいやだから、避けて通る。通れるうちはよかったが、迂回の道もなく なってきた。売却できるものもなくなり、いよいよというときまで、本気にな らない。自分のこととなると、一歩がでない。 ●再生協議会では、こういう手遅れ企業が相談に来所される。企業経営なら、 赤字が続くと債務超過になり、金融機関は融資を打ち切り、そのうちに自然淘 汰の場面になる。ところが、自治体や公的な機関は、勝手に債券を発行した り、本体から赤字補填をしてもらったり、公営金融公庫などから融資を受けた りで、よってたかって生き延びる。 ●確かに、少しおかしくなったからといって、その場でアウトになると問題が 起こるだろう。だからといって、赤字を垂れ流して延命を図るのが、将来に とって得策とは思えない。でも、それを誰も手をつけない。周囲から袋叩きの 大阪の知事だが、偉いなあと思うところも多い。総論から始めていたのでは、 未来永劫に始まらない。でも、少し突然だった。 ●ショック療法にしては、少々荒っぽかった。まあ、これくらいしないと目が 覚めないというのも、正しいか。それくらい、自治体の財政は痛んでいる。大 阪市では、有名なところでは、WTC、ATCの負債が何百億円あるという。一般庶 民にはとても理解できない数字だ。サラリーマンの一生の稼ぎが、2億円とか3 億円という時代に、400億円の借金などと言われても、ぴんと来ない。 ●来ないくらい、庶民感覚とはずれている。社員の一人一人が痛みを感じてい ないで、どうして再建ができるのか。できるわけがない。本当のことを知り、 これではいけないと感じ、それから行動が変わり、その結果が業績の向上につ ながる。そして、利益がきちんと出て、借入の返済ができる。なかなか、骨の 折れることだ。 ●しかし、また、ここで、本当の問題点に目をつぶり、表面的な解決でしのぐ と、またぞろ、近々、うみが噴出する。そして、病状はもっと深刻になる。そ して、いつかはご臨終を迎える。自治体がご臨終を迎えると、夕張のように悲 惨な市民生活が待っている。そうならないためにも、一日でも早くアクション を起こさないといけない。 ●とかく、公的機関や自治体は、悲壮感がない。切迫感がない。給料は、黙っ ていても振り込まれる。感覚が麻痺している。永年、そうやっていると、実際 に痛みを感じなくなるらしい。病巣は確実に時間が経つと大きくなる。自然治 癒の原理が働かない組織は、すぐにアクションを起こさないといけない。拙速 は巧緻に勝る。