□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第210回配信分2008年05月05日発行 想像以上の大きな変化の予感 〜日頃からの準備段取りを怠らないこと〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ●最近の新聞記事で目に付いたものをいくつか紹介しよう。何か、大きな社会 の変化の予兆を感じさせる。その1、講談社と小学館がコミック雑誌で共同プ ロジェクトを立ち上げた。4月10日に新雑誌を創刊する。少年マガジンと少年 サンデーの両方の老舗雑誌で人気の過去の作品を1冊に収録した増刊号を、月 に2回、6ヶ月間限定で発行する。 ●今年の夏には書店での両雑誌共同の店頭販促もするという。ここまでやるの は、両方の出版社とも、今後の少子高齢化に向けてコミックの伸びが期待でき ないという危機感がある。なにせ、出版社にとってコミック雑誌の売上は、そ れこそ生命線だから。その部数が地盤沈下している現状に対する、非常な危機 感の現れだ。とうとう、ここまで来たかと。 ●その2、セブン&アイは傘下のファミレスのデニーズを130店舗閉鎖するこ とを決定した。これは店舗全体の2割に当たるという。これも少子高齢化、消 費低迷の影響を受けて、大きな不採算部門になっていた。全国のファミリーレ ストランも、前年割れの状態が続いている。車の販売台数が伸びないのと平行 して、ファミリーレストランの売上が前年割れという。 ●一時期、全国的にファミリーレストランが異常に増え、家族やカップルでの 食事などで賑わった。設備投資が必要なので、大きな投資に対し、リターンが 少ないと、極端な不採算事業になる。セブン&アイでは、外食事業が唯一の不 採算事業だそうだ。他の外食産業も不調だから、この業界は、今後大ききな淘 汰の時代に入る。 ●その3、イオンは今後3年間で主力の総合スーパーのうちの4分の1に当たる 100店舗を閉鎖、または業態転換する。国内事業は縮小均衡とみなし、海外事 業に過去3年間の4倍の投資を集中する。アジア各国での事業展開に注力する。 長期の国内市場の低迷に見切りをつけ、海外の市場にうって出るという大きな 戦略の転換だ。 ●その4。規制緩和でタクシーの台数はここ8年間に20,000台、約8%増加し た。しかし、全国の法人タクシー7000社の営業収入は横ばいだ。このため、少 ないパイの取り合いになり、東京では値上げしたタクシー会社の営業収入が減 少している。そこで、Hタクシーでは、画期的な定額制という料金制度を導入 した。いくら渋滞しても料金は変わらない。 ●定額制の利用は、サービス開始以来30%増加している。特に東京では、渋滞 が予測できないから、乗ってからしまったということのないように、このサー ビスの評判は、すこぶるいい。成熟市場だが、切り口によっては、まだまだ市 場を開拓できる余地はある。知恵と努力の勝負である。やるか、やらないか。 やらないと、勝負にならない。 ●一見、何の脈絡もない4件の新聞記事だが、共通して言えることは、成熟し た事業でも、市場が詰まっていても、事業を継続する限り他人のせいにはでき ないということ。自分自身で切り開かない限り、誰も助けてくれないし、意思 決定できない。バスがきたときに、乗るか、乗らないかを決めるのは、自分自 身の決断しかない。 ●そのためには、日頃からバスが来たときはどうしようと、準備を怠らないこ と。いや、もっと言えば、自分でバスを運転するくらいの気概がないと、この 混沌とした社会環境にあっては、とても事業を成長させていくことは、難し い。しかし、同業でも成功している企業も、多くある。何が自社と違うのか。 日頃から、しっかりそのときに備えて準備を怠らないことだ。 ●あの人は運がいい。あの会社はラッキーだといわれるには、それなりの準備 と日頃からの段取りができているからだ。チャンスは公平に巡ってくる。バス は、やってくる。それを、漫然と見過ごすか、きちんと準備して、さっと乗る かは、経営者の日頃の準備次第だ。従業員が多い企業ほど、その責任は重大 だ。 ●上記の4つの事例を眺めただけでも、何か、今後大きな変化が起こる予兆で はないかと感じる。それを味方に引き込まないといけない。そうでないと、企 業は継続し、成長しない。大きな変化の前には、病気ではないが、必ず症状と 兆候がある。それを感じられるか、感じられないか。そして、少しでも早く、 なんらかの準備のアクションを取るか。そこが、勝負の分かれ目だ。