□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第212回配信分2008年05月19日発行 予防に勝る治療なし 〜自分の会社や組織のメタボ度をチェックする〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●ご存じと思うが、4月1日から40歳から74歳の成人を対象に、「特定検診」と 「特定保健指導」の事業がスタートした。これは、昨今話題の「メタボリック シンドローム」に着目し、その予防を目的とした、新しい試みをすべての保険 者に義務づけたことに、大きな意義がある。 ●保険者とは、一般には日常耳慣れないことばだが、企業の健康保険組合では 企業だし、政府管掌健康保険では市町村になる。つまり、被保険者=従業員や 加入者が、病気予備軍の仲間入りをしないように、企業などが積極的に予防に 注力せよとの、大号令がかかったのだ。 ●大号令がかかっても、なかなかことが進行しないのが日本の悪いところだ が、今回は違う。それは、明確に罰則規定を決めたことだ。勧めるが、お咎め なしという従来の慣行を破って、本当に実施しなかったなら、結構重たい罰則 を与えることにした。相当本気だ。 <どういう内容> ●戻って、「メタボリックシンドローム」とは、内臓脂肪が大きくてお腹の周 囲が大きくなった人で、血糖、血圧、脂質の数値に2つ以上の異常値を併せ 持った状態を指す。お腹の周囲の長さは男女で違うが、要はウエストの周りの 大きいひとは危険信号ということだ。 ●そして危険信号の人には保健師などの健康指導がなされる。指導はいいが、 実行しないとなんの意味もない。提案書も企画書も稟議書も、社長が机の引き 出しに入れておいたのでは、全く用をなさないのと同じだ。予防のための指導 だから、予備軍の仲間入りの人に、善意の恐怖を教えて、そして運動や食事、 日常生活の指導をする。 ●まさに病気になる前の状態(これを未病という)を認識し、その対策を講じ る処置をする。主に、食事と運動になると思うが、別にこれは基本中の基本。 人間は、口からものを食べ、そして身体を動かすことで消費する。そういう風 になっている動物だが、昨今は特に身体を動かすことが少ない。終日、デスク で座って画面とにらめっこしている。 <何をするのか> ●まずは、現状を知り、将来のリスクに対する明確な認識を持ってもらうこ と。そして、このまま放置していたら取り返しのつかないことになるという危 機感を持つこと。それから、意識が変わり、態度や行動が変わり、そのうちに 徐々に結果がついてくる。いきなり、明日から健康になり、数値が改善され、 お腹の周りが数センチ短くなるわけがない。 ●せっかく、国が多くのコストとエネルギーをかけて予防に取り組もうとして いるのだから、真面目に受け止めて検査などを受けると良い。さらに症状が進 んで、かなりやばい状態になってから慌てててはいけない。現状で、まず、出 来るところから改善を図る。少しの意識の持ちようで、結果は大きく変わる。 真面目にやれば、かならず結果は出る。 ●症状を意識し、兆候が見つかったのなら、積極的に予防に努める。おかしく なってから手当てしたら3倍のエネルギーがかかる。そして、もっとおかしく なって、事業の撤退でもするなら、前進の、また3倍の労力が必要となる。時 間が経てば経つほど、必要とされるコストと時間とエネルギーは膨大になる。 あとになって悔やむくらいなら、いま対策を始める。 <おわりに> ●昔から、「予防に勝る治療なし」とはよく言う台詞だ。医療の世界では、プ ライマリケア=予防医学と翻訳されている。病気にならない、事前に防止する 医療、医学だ。今回は、ここに金をかけようとの方針だ。そのことは、非常に いいことだ。振り返って、企業の経営にも、メタボ度のチェックを入れないと いけない。本来決算書を見れば、分かるはずなのだが。 ●決算書が本当の実体を表していない企業も多い。特に中小企業では、多い。 そこを、経営者はよく見ないといけない。なので、今回のメタボ度では複数の 指標を総合的に判断して、判定している。予防は、当面やらなくても、あまり 痛みは感じない。感じないから、やらない。ところが、血糖値が高い状態が継 続すると、いずれはどこかに異常が出てくる。 ●異常が出てからだと、治療に時間も費用もかかる。周囲にも迷惑がかかる。 特に、中小企業は経営者のスキルとパワーでもっていることが多いから、ここ の機能が停止すると大変だ。場合によっては、命取りになる。そうならないた めにも、従業員や得意先のためにも、そして自分自身のためにも、自社のメタ ボ度を正確につかむことは、大事だ。