□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第215回配信分2008年06月09日発行 「春待ち型の事業計画」はダメ 〜原材料高は既成事実として織り込む〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●明らかに可能性の高い画期的な新商品や新製品でも明確でない限り、将来の 事業計画を右肩上がりの数字を並べるのは難しい。昔は、社会全体が成長して いたから、その風や波に乗っかっていれば、勝手にフォローの風が吹いて、業 績は大きな判断間違いがなければ、右肩上がりで成長した。しかし、いまは、 そんな前提は有り得ない。 ●こういう計画を「春待ち型」という。そのうちに春が来る、そのうちに暖か くなる、良くなる・・・・。いつかは春が来る。いまは、いつまで待っても春 は来るとは限らない。いや、業種や業界によっては、未来永劫に春は来ないか もしれない。誰にも分からないが、どうもそう感じられるというのは、おそら く正解だ、経営者のカンは当たっていることが多い。 ●通常の事業計画でも、我々の担当する再生企業の再生計画でも、業績が悪い がゆえに、どうしても右肩上がりの計画を書こうとする。本当にそうか?いま でも、出来ていないのに、本当にできるか?日本経済全体の成長率が2%だ3 %だと大騒ぎしているのに、平気で10%も伸びる計画を書いているケースも多 い。現状の認識が甘いと言わざるを得ない。 <さらに逆風> ●ガソリンの価格が170円を超えた。今週の日経新聞の土曜日特集は、ガソリ ンが200円を超えたら自動車を手放すか?という特集だ。このガソリン高は筆 者が経験した昭和48年=1974年の第1次オイルショック以上のショックだ。1年 前はガソリン価格は130円くらいだった。40%もの値上がりというのは、異常と しか言えない。投機マネーが値段を吊り上げている。 ●しかし、この勢いはそう簡単には止まらない。同時に、重油なども値上がり し、ボイラーを炊いている企業は四苦八苦し、漁船までがストライキを起こ し、魚の流通にまで影響が出そうだ。加えて、原材料の高騰だ。原料の食材や 鉄製品、金属などの材料が軒並み異常な値上がりをしている。工事が完成した 現場の銅線までなくなった。 ●製品の末端価格は、なかなか上げにくい。値上げしても販売量がダウンし て、掛け算したら同じ面積になってしまう。結局、価格競争力のない製品は埋 没せざるを得ない。簡単に値上げがすんなりいくものではない。世の中インフ レが始まっているという感じは、全くない。まだ、いまだに物価上昇率は低水 準を示している。 <尖った中小企業は健在> ●しかし、世の中には元気でビジネスを継続している企業も、たくさんある。 建設土木のように、なかなか付加価値が付けにくい業種もあるが、小さい企業 でも高付加価値型で、原材料原油高をものともせず頑張っている企業は、たく さんある。そういう企業は、決して「春待ち型」ではない。独自の技術を磨 き、独自の商品開発に取り組み、独自の販売チャネルを持っている。 ●しかも、相当以前から環境の変化を予知し、準備し、研究し、尖ってきた。 少々の原油高、原材料高には、びくともしない企業体力をつけてきた。不況に 強いというより、筋肉質の体力へ転換してきた。体重=企業の総資産は大きく はないが、総資産に現れない無形資産を多く蓄積してきた。ノウハウ、人材、 ブランド、顧客、そして企業風土。 ●京都に数百年永続する老舗企業は、もっとすごい環境の激変に耐えて、勝ち 抜き、そして存続してきた。だてに長く暖簾をかけてきたわけではない。筆者 の大好きな言葉のひとつに、和菓子のとらや黒川家の「伝統は革新の連続」と いう有名なフレーズがあるが、まさに、それだ。規模に関係なく、どこで勝負 し、どこに尖るか。そこを見極める。 <企業体質を変えるチャンス> ●企業規模で勝負はできない。大企業と戦うには、戦力が見劣りする。最終的 には、物量で負ける。太平洋戦争で日本がアメリカに物量で負けたのと同じ だ。同じ土俵に上がらずに、戦いの少ない、もっと言えば戦いのない土俵で勝 負する。それが中小企業の特徴でもあり、特質だ。いつかは、原油が下がり、 原材料も下がるとは、ゆめゆめ思わない。 ●製品の価値に転嫁できるか、製品の価値そのものが原材料や原油の影響をほ とんど受けないことを考える。ストレートに反映する製品化をしていたので は、いつまで経ってもいたちごっこになる。追っかければ、また上がる。さら に、また上がる。結局は、負のスパイラルに落ち込む。それでは、中小企業の 経営は成り立たない。 ●逆風を順風に変えるには、逆に歩くしかない。みんなが、こっちに歩いてい れば、反対に歩くしかない。反対に歩いて、利益を一層挙げるには、逆転の発 想で行くしかない。そう思うと、世の中を見る眼が変わってくるはずだ。分 かっていても、今までと同じことをしていたら、埋没する。考え方を変えて、 この環境は企業体質を変える、いいチャンスだと思わないといけない。