□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第221回配信分2008年07月21日発行 なにごともタイミングが大事 〜気の抜けたおもてなしはイメージダウン〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●仕事柄、人と食事したりお酒を飲んだりする機会が多い。いままでに、一緒 にお酒を飲まれた方はお分かりと思うが、筆者は結構アルコールはいけるほう だ。ときとして、飲みすぎて、会話を全く覚えていなかったり、帰りのタク シーで何を話したか、分からなくなることも多いが。こういう飲食関係のお店 に行くと、その店の従業員教育の中味がよくわかる。 ●先日、親しい某先生とご一緒した飲食関係のお店。料理は一流だし、板前さ んの腕も、なかなかだ。しかし、オーダーした注文の品が出てくるタイミング が、いかなこと悪い。素人の我々が見ても、適当な順番で作ったものを、何も 考えずに適当に出してくるとしか思えなかった。鍋が先に出てきて、本来先に 出るお酒のつまみが、後になる。 ●奥の座敷だった関係もあったか、仲居さんというか従業員が、なかなかテー ブルの具合を見に来ない。料理を持ってきて、その内容を見れば、三人で行っ ているのだから、何か他にお皿が必要だとか、わかりそうなものだ。それが、 マニュアルに書いていないのか、なかなか分からない。いや、マニュアルすら ないのだろう。 <臨機応変に動く> ●マニュアルがあったところで、その通りやればいいというものでは、ない。 かの有名なマクドナルドのマニュアル逸話は、耳に新しいが、とにかく、お客 の立場に立って考えるように、なかなか指導できていない。大学生くらいの年 齢の方が、アルバイトに入ると店長さんは大変だと聞くが、まさに実生活の体 験が乏しいので、気配りができない。 ●かのマクドナルドの有名な逸話とは、日曜日の昼に野球帽をかぶり、ジャー ジを着た中年の色黒のおじさんが来店し、ハンバーガーを20個注文した。カウ ンターの中の従業員は、マニュアルに沿って「店内でお召し上がりですか?」 と聞いたという。そのおじさんは、少年野球のコーチだったが、全員の昼を買 いに来た。 ●20個のハンバーガーを注文した人に「店内でお召し上がりですか?」はない と思うが、本当にそう言ってしまった。かのおじさんは、本気でかんかんに 怒ったという。悪気のないミステイクだが、少し考えれば、分かりそうなもの だ。機転が利かないというか、その場の空気が読めないというか。それを、KY というのだが(空気が読めないという意味)。 <サービスはタイミングが大事> ●何事も、タイミングが大事だ。マニュアルには、そういう欄外のことは、ほ とんど書いていない。また、それは自分で考えて、行動するしかない。料理を 出すタイミングも、アルコールを追加で運ぶタイミングも、特に飲食にうるさ い人には、重要だ。その点、京都の老舗のお店は、そういう気配りが行き届い ている。さすがという店も多い。お金が惜しくない。 ●気の抜けたビールが飲めないように、タイミングを逸したサービスは、やら ないほうがましかもしれない。かえってお客の心象を悪くする。いったん悪く なったお客の印象は、なかなか良くならない。悪い評判は、あっという間に世 間を疾風怒涛のように、駆け巡る。信用を築くには永くかかるが、崩壊は一瞬 にして起こる。それが、怖い。 ●従業員の教育だけでは、ことは片付かない。お店全体のコンセプトが、きち んと浸透していないといけない。サービスとは何か、おもてなしの心とはどう いうものか。顧客満足の最大化とは、どういうことをすればいいのか? それ が、統一されているお店は、何か与えるものが違う。お客は、敏感だから、そ ういう違いは、非常によく分かる。 <とにかく相手の立場で考える> ●同じことをしてさしあげるのでも、少しでもタイミングのズレのないように 心がける。間に合わなかったお金は、いくら高額でも意味がない。試合が決 まってからのヒットや盗塁は、ほとんど意味をなさない。会議が終わってか ら、重要な資料が出来ても、無意味だ。こちらが、いくら一生懸命でも、結果 的に意味のない行動は、消耗するだけだ。 ●日頃から、何でも勉強だと感じて、ものごとのタイミングを計る訓練が必要 だ。最近の若い人は、多数での集団生活に慣れていない。自分ひとりで暮らし ていると、周囲への気配りが必要ないから、意識しない。社会に掘り込まれ、 周囲に気遣いし、常に相手との適当な距離感を保って、かつ、ものごとのタイ ミングに配慮する。 ●気の抜けたおもてなしは、かえって客の不評を買うだけだ。本当に、真心こ めたおもてなしとは、気遣いの中から生まれる。決して、作り手の勝手な順番 や、周囲の空気を感じない行動からは、生まれない。逆に、心得たタイミング でのおもてなしは、客の心にしっかりと刻まれる。すごい気配りのお店だと感 じたら、お客が勝手に営業してくれる。そういう店が、繁昌するのだ。