□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第225回配信分2008年08月18日発行 トップの迷いは組織全体の方向を狂わす 〜言ってることとやることの齟齬を来たさない〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●16日(土)夜の北京五輪野球の日韓戦をご覧になった方も多かったと思う。 残念ながら、結果はご存知の通り、因縁の対決は韓国に5−3で軍配が上がっ た。勝てる試合を落としたショックも大きいが、この試合に関しては、完全に トップの戦略の迷いがあったと感じた。事前に検討していた方針と、実際の采 配がちぐはぐだった。 ●具体的には、選手それぞれのミスや凡退もあったが、そこにたどり着いた前 提や背景には学ぶことが多かった。そして、トップと選手が一体になって勝ち に行くモティベーションが、いまいち感じられなかった。それに引き換え、韓 国はバットの一振りのスピードと意気込みが違った。日本は、意気込みがプ レッシャーになっていた。 ●場面場面で振り返ると、いろいろと敗れた要因はあげられるが、なんといっ ても大きかったのは、トップの采配、決断の遅れだった。当初の試合のイメー ジは間違っていなかったと思うが、それをそのまま実行できなかった。事前の デスクの検討と現場の試合との、相違に決断が鈍った。トップの決断の躊躇 は、組織全体に大きな影響を与える。 <具体的には> ●投手の交代の遅れが一番致命的だった。まだいけると感じたから、続投に なったのだろうが、当初の投手総力戦という方針を貫けなかった。まだいけ る、そんなに悪くないという印象や感じで判断した。その後に、韓国に一発が 飛び出した。非常に悔やまれる投手交替のワンテンポ遅れだった。こういうた めらいは、チーム全体に影響を及ぼす。 ●控えの投手の準備は、ほとんど完璧に出来ていた。誰を出しても良かったの だろうが、日本での壮行試合での悪い結果を引きずっていたのか、交替の時期 を誤った。それでも、同点で最終回に来たのだから、展開としては、まだリカ バーできた。しかし、最終回に、また、決断が鈍って、交替が遅れた。これ は、致命的だった。 ●それに引き換え、相手の韓国は、当初から総力戦で向かってきた。バットの スィングの速さはすごかった。初球からどんどん振って攻めてきた。投手は初 球からフルスィングされると、なかなか大胆に攻められない。どうしても、 コーナーを狙って、ボールを置きに行く。悪循環に陥り、そのうちにつかま る。まさに、典型的なパターンだった。 <ではどうすればよかったか> ●スポーツに「れば、たら」はないが、やはり悔いの残る戦いだった。投手総 力戦、打者思い切ってのフルスィングという方針が、現場の試合では貫けな かった。事情や状況は、刻々と変化するので、止むを得ない部分はあるが、そ れでも一貫した方針が最後まで、空回りした。同時に開催している高校野球と は対極だった。 ●試合の展開は予想に近いものだったと思うが、それなら余計に当初の方針に こだわったほうがよかった。信じるところを、そのまま忠実に実践するほう が、分かりやすかった。予選リーグ戦ではあるが、事後の決勝トーナメントを 考えると、勝ち抜き戦と同じだ。短期決戦だから、余計に戦略は一貫したほう がいい。 ●結果がすべてではあるが、やはりその結果が出る過程、プロセスにその原因 が潜んでいる。当初の方針の場面場面での修正は当然あるが、大きな戦略イ メージの突然の転換は避けるべきだ。やはり、トップは信じたところを、ぶれ なく局面に応じて対応はするものの、忠実に基本方針を再現することが、大切 だ。 <後悔より反省> ●終わったことは仕方ないが、後悔することは必要ない。後悔して、悔やんで も何も戻ってこない。大事なことは、しっかり反省して、同じミス、間違いを なるべくしないような、仕組みやしかけを作ることだ。初めてのことは、分か らないことが多い。やってみないとわからないことも多い。それは、仕方ない 場合も、ある。避けようのないことも、ある。 ●いちいち悔やんでも、時間も結果も戻らない。当てた車のへこみは、戻らな い。こぼした水は、お盆には戻らない。しかし、反省はきっちりする必要があ る。意外とこれを逆にする経営者の方も多い。誰が悪かった、あいつが原因だ と、魔女裁判に一生懸命で、その本当の原因を反省せず、人のせいにするトッ プも多い。 ●経営に完璧はない。準備段取り8割だが、完全に準備したつもりでも、抜け ることはある。転んだことを後悔しても、仕方ない。それより、転んで立ち上 がれないことのほうが、恥ずかしい。そして、転んだ原因をしっかり反省し、 当初の戦略のどこが悪かったのか。戦略は正しかったが、決断が悪かったの か。そこをしっかり反省することだ。