□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第226回配信分2008年08月25日発行 想像以上に市況環境は悪い 〜「春待ち型」の経営は没落する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●最近、残念なことに周辺で知り合いの方々の事業が、相次いで破綻した。業 種は様々だが、どうも想像以上に市況環境は悪化し、金融事情も詰まってい る。いろいろなところで、信用収縮が起こっている。全国区では、大手の不動 産関係の倒産も発生し、政府や日銀が言うほど、とてもとても楽観的には思え ない。現実は想像以上に厳しいと認識すべきだ。 ●無論、一部の業界業種では好況が持続しているところもあるとは思うが、そ れはごく一部の業界だ。たいていの業界、業種は不況型のスパイラルに落ち込 んでいる。設備投資と個人消費の停滞は、当分、続くと見ておかないといけな い。財政再建はさておいて、またぞろ個人の減税の案も出ているが、個人の減 税をやったところで、効果のほどは、かなり疑問だ。 ●将来が悲観的だと、現世の消費にお金が回らない。将来に対する不安は解消 していないから、ほとんどが貯蓄に回るだろう。小手先の減税くらいで、簡単 に回復する市況だとは思えない。少子高齢化、年金不安、環境問題、経済構 造、なにひとつとっても、難しい課題には違いないが、根本的な構造改革でき ないから、全部絆創膏を張る小手先の改善案になる。 <将来に対する不安が原因> ●企業の将来も見えないなら、日本国の将来も見えない。見えない将来を、少 しでもビジョンを掲げて見えるようにするのが経営者の仕事だが、日本国には 経営者がいない。いや、いても、ころころ変わるので、方針が終始一貫しな い。いつだったか7年間に10人のトップが入れ替わったが、世界から笑いもの にされていた。それも、非常にお粗末な理由での退陣、交代だった。 ●最近では、ぼくちゃん安倍内閣が辞表を書いて降板したのも、記憶に新し い。地方自治体が期待する「地域力再生機構」も、自民党と民主党のねじれ国 会の影響で、計画そのものが頓挫する可能性も否定できない。法律も変わった から、再建団体に転落する地方自治体が、どんどん出てくる。ますます、消費 は収縮し、設備投資はなされない。 ●いままで産業をリードしてきた自動車産業も、ここに来て、大きく海外市場 と海外生産にシフトしている。果たして、国内関連産業が、どれくらいそれに ついていけるのか、非常に先行き不透明になってきた。環境産業が有望といっ ても、恩恵や恩典を享受できる企業の裾野は、狭い。自動車産業ほど広くな い。中国市場も五輪以降は非常に不透明だ。 <政治に期待するのが無理なら自分の手で> ●とにかく、政府や政治に期待し、いつかは景気が良くなるだろうとの「春待 ち型」の経営は、現時点ではもってのほかだ。誰も助けてはくれないし、誰も 支えてはくれないと思ったほうが、いい。政府の支援策といっても、末端の毛 細血管に血液が流れるには、時間がかかる。ここは、俄然、本当に腹を据え て、経営の根本を見直す、いい機会だ。 ●成岡の所属する再生支援協議会で計画する「本当の企業再生」ができなかっ たら、3年先、5年先に、あなたの企業が生きている保証はない。それくら い、将来は不透明だと覚悟するのが正しい。不透明な将来なら、せめて自分の 足元だけでも明るくしないといけない。抜本的に自社の経営資源を見直すいい 機会だと認識することだ。 ●何が足りないから、こうなっているのか。そこを真剣に反省し、その反省か ら間違わない手を打てるかだ。環境が悪くなってきたときほど、優秀な人材を 採用できるチャンスだ。好況のときは、完全に売り手市場になるが、不況にな るとそうもいかない。何も、新卒だけが人材ではない。高齢者も、中途採用 も、優秀な人材が市場に漂うことが多くなる。 <体重の増加より筋肉質へ> ●とにかく、事業を実際に遂行するのはヒトだから、人材採用は投資だと心得 る。給料や報酬を費用と考えると、とにかく費用は減らそうとしがちだ。投資 は将来に対するリターンを期待するものだから、人材に関してもそう考えない といけない。費用と考えては、いけない。企業の周辺でお手伝いしたり、サ ポートする人を多く存じているが、そういう人が多くなっても、実態経済は少 しも良くならない。 ●野球のコーチがたくさんいても、試合にでるのは現役の選手なのだ。なの で、実践に強い優秀な人材をいかにして、こういう不況に突入していくときに 獲得するか。そこに、トップは一番注力しないといけない。それを忘れて、ど うも経営者が違うターゲットに一生懸命、お金や時間やエネルギーを費やして いるような傾向が強い。 ●環境が厳しくなってきたときが、ある意味で成長のチャンスだ。全体がいい ときは、経済が浮ついて成長するから、膨張する。この厳しい時点で成長でき れば、それは本当に筋肉質の経営体質に転換できる兆しだ。体重が増えても、 健康ではない。体脂肪率が下がり、筋肉質の体質に転換できるのは、この厳し い環境がなせる業なのだ。