□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第227回配信分2008年09月01日発行 当事者意識が持てるとモティベーションが上がる 〜運営の形態で変わるメンバーのやる気〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●近しい知人が急に重篤な病気にかかったので、久しぶりに公立病院に見舞い に行った。民間病院には仕事で、時々足を運ぶが公立病院にはほとんど、ここ 数年縁がなかった。ところが、行ってみて驚いた。まず、スタッフの接客のマ ナーが格段に良くなった。外来の受付では、8時30分の始業の際には、スタッ フ20名くらいが受付の前にきちんと並んで、始業の挨拶を待っている患者に丁 寧に頭を下げて行っていた。 ●病棟では、看護師、介護スタッフが非常に丁寧な態度で、患者とのコミュニ ケーションを図っていた。食事も選択ができるようになっており、患者の好み が最大限配慮できるようにされていた。独立行政法人化が進み、独立採算制が 浸透し、生き残るために自分たちは、何に努力をしないといけないのかが、よ うやく理解浸透してきたのかもしれない。 ●それなら、初めからやったらいいと思うが、そこが人間の悲しいところで、 自分たちに関係ないと思うと、なかなか当事者意識が持てない。ところが、親 方日の丸から切り離されて、非常に厳しい環境に身をおくようになって、初め て目覚めるものなのだ。甘い環境の間では、なかなか肌感覚として理解できな い。実感として感じて、初めて意識が徐々に変わる。 <パラサイトから自立へ> ●私事で恐縮だが、小職の長女が大学受験のときに、たまたまのアクシデント で予定外に遠方の大学に入学することとなり、下宿を始めた。始めた途端に、 それまでパラサイト生活だった本人が、大根1本、ガソリン1リッターの価格に 非常に敏感になった。やっとお金の意味、価値、重大さに気づいたのだ。ケチ になったのではく、お金の価値が分かった。 ●ことほどさように、給与ももらう側から払う側になって、初めてその意味の 違いに歴然となる。もらう側は、毎月定期的に決まった金額が払われて当然と 思うだろうが、払う側からすれば、きちんと給与資金の手当が毎月毎月できて いないといけない。これは、中小企業でも、なかなか大変なことだ。月末は、 あっという間にすぐに巡ってくる。 ●当然といえば当然だが、非常に厳しい資金繰りのときもある。パラサイト暮 らしをしていては、これはなかなか分からない。自分で自立し、厳しい環境に 身をおいて初めて分かることだ。そういう意味では、社会に出る前に、相当な 年数において半分自立せざるを得ない環境に身置いたことは、ある意味、非常 に将来にプラスになった。今でもよかったと思っている。 <保守的なマインドをどう変えるか> ●さきほどの公立病院のスタッフも、独立法人化して初めて自分の置かれてい る立場、環境に気づいた。もっと早く気づくべきとは、評論家の評論で、人間 はそう簡単に頭は切り替わらない。そんなことが簡単に、できれば業績はもっ とよくなっている。しかし、遅きに失したとはいえ、独立法人化したおかげ で、徐々ではあるが、改革、改善の兆しは見えてきた。 ●過去には旧国鉄が分割民営化されてから、格段に良くなったのと同じ理屈 だ。世間の風に、まともにさらされて、初めて風の冷たさや強さを感じる。大 事なことは、甘い環境、恵まれた環境のときに、いかにしてその厳しい危機感 を持ち、現状を積極的に改革しようとする方向に持っていけるかだ。人間は、 順調なときほど保守的になる。その状態で守りに入る。 ●そこをっぶっ壊して、危機感を醸成し、攻めに転じるには、非常なエネル ギーが必要だ。公立病院も非常に厳しい環境の下で、競争にさらされている。 従来の親方日の丸は、もう通用しない。しかし、スタッフの意識が完全に変 わったかというと、それは必ずしもそうではない。完全に変わるなどとは、思 わないほうがいい。緊張感が緩むと、またぞろ、元にすぐに戻る。 <緊張感の持続は経営の責務> ●また、変化の当初は緊張感もあるが、同じことを毎日続けていくとマンネリ に陥る。これは、人間の習性としては止むを得ないことだ。それを前提に毎日 のマネジメントのサイクルを組み立てることが必要だ。ときに緊張感を持た せ、ときに弛緩も必要だ。緩急の切り替えがあって、初めて効果的になる。直 球だけのまっすぐ一本勝負は、打たれる。 ●当地は人口からすると公立病院が過剰と言われている地域だ。大きな公立の 医療機関が多数あり、当地でも患者の争奪戦をしている。少なくても、いくつ かの医療機関は統廃合の憂き目に会うだろう。10年後に同じ状態で存在すると は思えない。それに比較し民間の医療機関は、もっと以前から経営方針に基づ いて、戦略を考え、それに基づいた戦術を日々実行している。 ●官が鈍くて民が俊敏なのは、その寄って立つところの違いだ。要は意識の問 題だ。たまたま勤務したところが公立系の医療機関なのか、民間の医療機関 だったかの違いだけだ。ならば、公立系の医療機関も、初めから危機意識を もって対処すれば、意識は変わったはずだ。それができなかったのは、いつ に、トップの危機感の欠如に基づく経営マインドの問題だ。