□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第228回配信分2008年09月08日発行 本来のあるべき姿へ集中と選択 〜本業の一番大事なところを強化する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●ときとして、決算書を見せていただくと、この会社の本業は何だろうかと、 考えてしまうことがある。実際、本業ででの売上は大きいが、このご時世、全 く本業では利益が出ていない。最終的には、所有の不動産などの家賃注入で、 何とか勘定が合っている。一見、数字だけ見ると、不動産事業の会社だろうか と、見間違うこともある。 ●たしかに、本業の安定性が悪く、市況や季節により大きな変動がある業界も 多い。また、受注生産の事業だと、受注が集中する時期と、閑散期があり、お 金のコントロールが難しい事業も多い。事情は分かるが、資金の安定性を狙っ て、不動産投資を行い、家賃収入などで資金の出入りを安定化さす。それも、 経営のひとつかもしれないが。 ●それも、いま、返済に苦しんでいる企業は、そのほとんどがバブル期に不動 産投資を行った。そして、ご多分に漏れず、不動産価値の下落から担保割れ し、金融機関からは追加の運転資金の融資担保にならない。そうなると、途端 にお荷物になってくる。最悪、日常でキャッシュアウト、つまり収支が赤字に なることも多い。 <当初の目的から逸脱> ●当初の目的が、相続対策や金余りの投資など、目的はいろいろだったと思う が、現状では大きな荷物を抱えることになった。そして、その資産の価値を維 持するために、定常的に投資が繰り返されたり、価値の維持のために継続して お金が必要となる。そのために、よく見れば、自分の会社の本業が不透明にな る。あいまになり、トップの意思決定にも時間がかかる。 ●本業が明確なら、誰が見ても分かりやすいが、企業価値が本業以外のところ で、拡大、膨張すると、そちらに経営資源の投下が始まる。何をやっているの か、分からなくなる。そうなると、従業員のモラルダウンが始まる。本業に関 連の少ないところでの案件に関わる時間が増加し、本業にエネルギーが集中で きなくなる。枝葉末節なことに注意が行って、本業の一番大事なところへの、 投資が後手に回る。 ●これが、数年先にボディーブローのごとく効いてくる。経営資源は、何も資 金だけではない。人的な投資、時間の投資なども、大きな投資のうちだ。特 に、トップの時間を、この本業以外の部分にかけていると、いつかは本業が疎 かになる。何をやっている会社だか分からなくなる。決算書は、その事実を正 直に見せている。数字は正直だ。 <何が本業かを錯覚する> ●資金繰りを安定化する目的が、いつか、お荷物になり本業の資金を食ってい ることも、多い。確かに、一時的には資金繰りの安定化に効果はある。定期的 に家賃収入が入ってくると、そちらを、つい、あてにする。本業の業績変動が 多いと、なおさらだ。20日や25日の月末前に、定期的にお金が入ってくると、 本当に有難いと思うことは、分からないでもない。 ●しかし、それが慢性化し、一時の資金繰り安定化策が、つい、それが本業と 見間違うくらいになると、それは危険信号だ。感覚がマヒし、それが当然のご とく感じる。本業の強みの強化や、弱みの解消を忘れ、本業以外の枝葉末節に こだわる。思い切って処分して、本業回帰、コアの部分への集中をためらう。 手っ取り早く投資が回収できると、錯覚する。 ●どうしても、そちらに依頼心が芽生え、何となく本業の影が薄くなる。3年 くらいでは分からないが、5年も経つと明らかにその傾向が顕著になり、いろ いろなところにほころびが見え始める。それから、慌てて手を打っても、実は 遅いことが多い。慢性疾患になり、成人病の傾向が出ている。営業収入に比較 し、過大な資産を持った会社になっている。体重オーバーで、メタボの典型の ような体型になっている。 <あるべき姿へ集中と選択> ●体重を落として、筋肉質に転換するのは、並大抵のことではない。それまで に付いた脂肪やコレステロールを落とすには、非常に厳しい食事管理や運動管 理が必要となる。会社で言えば、かけた時間や資金を効率化するのに、非常に 大きなエネルギーが必要となる。かけた時間も無駄なら、投資も無駄になる。 非常に大きな遠回りをして、疲れきって目的地に着くみたいなものだ。 ●しかし、これからの厳しい環境を生き抜くには、本業の強化が一番優先順位 なのだ。それあらずして、会社の未来はないと思うくらいでないと、いけな い。資金繰りが一時期楽になるから、安直に不動産投資にかまけていたら、本 当に本業のみに集中している競合他社に、あっという間に追い抜かれる。それ くらい、これからの経営環境は厳しいと自覚する。 ●確かに、不動産投資は資産にはなるが、同時に莫大な負債を抱える。価値が 目減りし、収益物件でなくなる可能性も高い。何よりも、同じお金だから、楽 をしてお金が入るように感じる。錯覚が始まる。特に、トップがそう考える と、危険だ。自社の本来のあるべき姿は何か、現在とどう違っているのか、そ こに到達するのに、何が必要かを明確にし、一歩でも踏み出すことだ。