□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第230回配信分2008年09月22日発行 役員同士の意思疎通は図られているか 〜意外と分からない取締役個人の判断基準〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●中小企業でも、中堅企業でも、いやもっと規模の大きな企業でも、果たして 複数いらっしゃる役員間相互の意思疎通がきちんと図られているかというと、 意外とそうでもないことが多い。特に、同族企業では、同族親族であるがゆえ の、複雑な人間関係やしがらみがあり、決して外部から見ているほどではない ことが、多い。 ●名前だけの非常勤役員は別にして、本当に常勤で企業の重要な職責を担って いる役員と経営トップとの間に、大きな考えの相違や溝があると、これはどう にもならないことが多い。いや、場面によっては致命的なことにもなりかねな い。そこは、ベクトルを一致さすために、お互いに真剣な努力をして、その考 えのギャップを埋める努力をしないといけない。 ●親子、兄弟でも同じだ。親族、同族は逆にやりにくい面もある。そこそこの 年齢になると、配偶者がいて、かつ、子息の存在も問題になる。縦、横に複雑 な人間関係と、思惑が入り乱れ、本来しないといけない経営に集中できないこ ともある。また、互いにその存在自体が問題になる。そうなると、正常な会社 経営は非常に難しい。 <筆者の経験> ●成長過程の企業では、活発に役員のハンティング、リクルートもある。役員 でなくても、上級管理職、幹部という立場の人が、入れ替わり、立ち代わり入 社や退職を繰り返すこともある。しかし、本当に企業が成長軌道に乗るには、 この重要なミッションを担う役員相互の意思疎通を、十分過ぎるくらい行う必 要がある。 ●以前に在籍していたところでは、1年に1回、役員相互の意思疎通を図るた めに、自分の過去の経歴や生い立ち、重要な意思決定の場面、そこでどういう 理由でどう意思決定したのか、大きな失敗、大きな成功、それから掴んだ自分 なりの価値観などを、十分時間をかけて話してもらった。なぜ、あの人は、こ ういう風に考えるかの原点がそこにある。 ●悲しいかな、ほとんどの人は自分の経験からしか学べない。従って、今まで にどういう体験をし、どういう経験則を持っているかが、その人を理解するう えで、極めて重要な要素なのだ。そこを分からないで、その人の本質を理解す ることはできない。特に、 (1)成功体験 (2)失敗体験 (3)大きな意思決定 は、以降の人生や考え方、判断の基準に大きな影響を与えている。 <判断の基準を知る> ●上場大企業だと、複数の部署を経験し、いろいろな周囲からの評価があり、 また、担当する事業も多岐にわたるから、相当な量の情報が自然に蓄積され る。ところが、中小企業で役員も少なく、かつ、中途採用やリクルートなどで 転籍された方の、過去の経過はほとんど分からない。また、子息が大企業で数 年修行して、親族の会社に戻るときも、同様だ。 ●○○会社に在籍していたことはわかっても、そこでどういう経験をし、体験 を積み、成功、失敗を重ねる過程で、その人の意思決定のメカニズムができあ がる。また、一種の哲学、流儀、こだわり、価値判断の基準が形成される。そ こは、十分説明してもらわないと、表面的に見ていては分からない。そのため に、時間をかけて、その人を理解しないといけない。 ●時間をかけるということは、一種の投資だから、投資してでもその根幹を理 解することに努める。親子だから理解している、兄弟で一緒に育ったから大丈 夫などと、ゆめゆめ思ってはいけない。意外や意外ということが、本当によく ある。まして、企業文化の異なる組織から、来ていただいた人は、一種火星人 と思っても差し支えない。 <その人となりを理解する> ●だから、十分に時間をかけて、お互いの意思決定の根幹にあるメカニズムを 理解することは、極めて重要だ。お酒を飲んでの会話でもいいし、会議室でも いい。ただ、本音を語ることと、既に在籍している側の役員も、逆に新しい方 に、こちらからのメッセージを伝える必要がある。そうでないと、片手落ちに なる。双方向が重要だ。 ●一回やったから、全部が理解できるものではない。次年度も、同じことをす る。昨年聞いたから必要ないというのは、ことの本質がわかっていない。昨年 は、まだ在籍して時間が経っていないから、なかなか言っていることが分から なかった。今回は、もうそこそこの時間一緒に仕事をしたから、なんとなく 言っていることが、理解できる。 ●昨年は触れなかった個人的な生活のことや、家族のことに言及する人もい る。意外と、そこが意思決定の根っこだったりする。また、家族の中の不安定 な状況や、子供の問題などが、私生活から出発して、個人のものの考え方に大 きな影響を及ぼしていることが、多い。これは、本人から言ってくれないと分 からない。分かっているようで分かっていないこを、認識することが重要だ。