□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第231回配信分2008年09月29日発行 政治家の世襲承継は本当にダメか 〜まだ中小企業の承継は世襲が多い〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●新聞紙上やいろいろなところで書かれているので、あまり多くは触れない が、今回の麻生内閣は、二世、三世のおぼっちゃまでいっぱいだった。血統が そうさせるのか、周囲がそうさせるのか。必ずしも、全部を否定する気はない が、どうも違和感があるのは、みんな共通の思いではないだろうか。苦労知ら ずのお坊ちゃまでは、果たしていかがなものか。 ●やはり、自分でいちから作り上げるのと、出来上がったものを承継するので は、雲泥の差がある。特に、三代目になると、創業の苦労を知って入る人は、 ほとんどいない。初めから、それがあって当然だという感覚のまま、育ってき た。お金の苦労、人の苦労、信用を得る苦労、それは大変なことがあった。で も、それは伝わらない。 ●二代目までは、何とか想いは伝わるだろうが、三代目となると、先々代だか ら、おじいさんと孫の関係になる。これは、ほとんど同じ期間に会社に存在す ることは、まずない。だから、伝わらない。重要な意思決定の場面に、同時に 立ち会ったことがない。そうなると、なかなか肝心なことが、伝わらない。ま して、仔細に継承することは、非常に難しい。 <中小企業はまだ世襲が多い> ●中小企業には、世襲の経営者の方が多いと思う。それは、至極当然の成り行 きだ。まして、外部に大きな負債を担いでいるなら、外部の方が、それを担い で継続するのは、ほとんど可能性は少ない。経営者には、経営の責任も、保証 人としての責任も、大株主としての責任も、ある。非常に重たい荷物を担い で、企業経営の舵取りをすることになる。 ●保証は、ほとんど連帯保証になる。すべての借財に連帯するから、これは大 変だ。また、金融機関は連帯保証人を複数求めてくる。必然的に、他人にお願 いできないと、身内で連帯保証を組まざるを得ない。連帯保証は、個人だか ら、会社と縁が切れても、どうなってもついてまつわる。非常に精神的に負担 になり、孫子の代までついてまつわる。 ●かくして、親族への承継、世襲にしたくないけれども、がんじがらめになっ ていると、外部から優秀な方に来ていただくことは、非常に難しくなる。中小 企業は、経営と所有がほとんど同一だから、必然的にこうなる。また、会社の 仕組みが出来上がっていないと、大きな保証を担いでいる立場の人の意思決定 と、そういう立場でない人の意思決定とは、必然的に異なり混乱する。 <政治の世界は世襲では通用しない> ●さて、企業経営の承継は、ことほどさように難しいが、政治家の場合は、ど うか。先代が代議士で、まして大臣や首相経験者となると、周囲がほっておか ない。さしづめ、企業なら一部上場の大企業だから。かくて、周囲の利害関係 者が、なんとか影響力の継承をもくろみ、次代のピンチヒッターを探す。そう なると、必然的に、近い親族に白羽の矢が立つことになる。 ●はたして、その人物に器量や政治的感性、感覚があるのか、ないのかは、言 わば二の次になり、利害の承継ができるのかが判断の基準になることが多い。 特に、政治家は地元の利権と絡んでいることが多いから、なおさらだ。周囲が ほっておかなくなり、何とかお神輿を担ごうとする。キングメーカーになって おくと、あとの都合がいい。 ●そういう政治家が多くなると、政治の世界では素人だから、どうしても官僚 主体になるのは、ものの必然だ。むこうは、その分野の行政や立法のプロだか ら、サラリーマンしていた人がいきなり政治の世界に飛び込んでも、無力の何 者でもない。その分野で、たたき上げたプロの政治家でなく、アマが突然プロ の世界に踏み込んだことになる。 <なりたい人よりさせたい人を> ●企業経営は、そうはいかない。承継に失敗すると、周囲の関係者に大きな迷 惑を及ぼす。三代目で承継に失敗するケースが多いが、三代は、約100年にな る。100年継続する企業が少ないのは、そのためだ。あるいは、次代にうまく バトンタッチできないと、一代30年でアウトになる。とにもかくにも、次代を 担う人物の器量次第だ。 ●世襲が悪いとは思わない。梨園の御曹司は、実はほとんどが世襲だ。しか し、幼少の頃から先代に学び、小学校以前に初舞台。厳しい稽古を経て、よう やく、徐々にひとり立ちしていく。著名な名跡を承継するのは、もう中年以降 になってからが多い。それくらい、伝統を承継するには、ハードルが高い。企 業経営も、本来は同じでないといけない。 ●そういう意味では、政治家であれ、中小企業経営であれ、お神輿に乗っただ けの本人をさておき、何とか利権を維持したい利害関係者が絵を描くと、それ は良くない。本末転倒も、甚だしい。政治かも、経営者も、「なりたい人」よ り「させたい人」になってもらうことが、本来正しい。しかし、現実はそうは いかない。そこを、正しくやって来れた企業が、やはり生き残る。