□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第233回配信分2008年10月13日発行 これは大変危機的な状況と認識すること 〜奇策はないこつこつ地道に改善を積み上げる〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●この2週間くらいで、世界の経済環境は一変した。いまさら繰り返さない が、GMまでが破綻の危機に直面しているという。株が大幅に下落し、円が急騰 して、日本経済に与える打撃は計り知れない。しかし、これを事実として、冷 静に認識しないといけない。決して他人事ではない。対岸の火事と思っていた が、いやいや、そんな甘いものではない。 ●業種業態にもよるので、一概には言えないが、それでも最近の現象を見てい ると、その現象を実感する。 (1)弊社オフィスのすぐ傍に完成した1階テナントそのうえマンションのビ ルが、多く部屋が売れ残っている。テナントもまだ入らない。2年前から建築 していたが、完成の時にこういう経済状態になっていると、誰が思ったか。 (2)某製造業では、企業の設備投資が先送りになり、予定した受注の半分が 失注した。決してこれはその企業の責任とは言いにくい。 (3)四国K県では、住宅の購入ローンになかなか金融機関からの申請が降り ず、契約が先延ばしになった。 (4)金融機関からの運転資金の借り換えを断られた企業が目立つようになっ た。弊社にも相談に来られる。 ●金融機関も、貸し剥がし、貸し渋りなど言っていられない状況だろう。自分 のことで、アップアップで、他の企業のことを構っていられないのだろう。株 や土地などの評価がどんどん下がると、いくら利子で稼いでいるとはいえ、大 変だ。不良債権処理に追われ、従来顧客からの審査に割ける時間が、縮小して いる。本来は、それはいけないが。 <対岸の火事ではない> ●従来、折り返しの融資はほとんど問題なくOKが出ていたから、軽く見ていた ら、半分も融資してもらえなかった、という事例もある。急遽手持ち資産の株 券を売却しようとしたが、この状況では予定の60%くらいしか、資金調達がで きなかった。まさに、踏んだり蹴ったりになった。完全な、負のスパイラルに 陥った。 ●ご存知のように、3月末の決算書が黒字の一部上場不動産関係の会社が破綻 している。8月くらいにキャッシュが足りなくなった。借りて返して、借りて 返してを繰り返すことで、企業の体重は増加した。自転車操業になった。自転 車はペダルをこがないと、倒れてしまう。一度走り出したら、ペダルをこぎ続 けないといけない。 ●信用収縮現象だろうが、そんな評論家みたいなことを言っていられないよう な深刻な事態だ。自社は関係ないと豪語できる会社は、ご同慶の至りだが、ど んな業種にしろ早晩何かの影響は出てくる。出てくると自覚することが大事 で、経営が行き詰る企業のほとんどが、現実を正確に直視しない。それは、一 過性の現象とか、自分のところは関係ないと。 <世界経済は全治5年か> ●今回の恐慌は、1920年後半の世界恐慌に匹敵する事態だ。実体経済を大きく 上回る金融バブルが一気にはじけた。どこに、どんな金融商品が、どんなリス クを背負ってあるのかすら、分からない。疑心暗鬼になるのも、分からないで もない。将来の可能性を評価する株が、もろくも下落しているのが、その心理 と実態を表している。 ●自社がまともに経営し、ひたすらこつこつやってきて、ほとんど問題ないの に、借り換えを断られる企業も、実にやるせない。しかし、金融機関も、将来 の事業性や利益の評価も、自信がもてない。本当に、売上が順調で、利益もき ちんと出るのだろうか。誰も分からないし、誰も保証の限りではない。この、 世界恐慌は根が深い。5年は修復にかかる。 ●その間自社の経営は、果たして持つだろうかと、心配される方も少なくな い。しかし、経営は、環境適応業なのだ。いくら文句を言っても、いくら人の せいにしても、結果は変わらない。自分は納得できても、経営の結果は変わら ない。そんなことで、従業員の雇用が守れ、地域経済への貢献ができるはずも ない。発想を切替えないといけない。 <特効薬はない体質の改善を> ●特効薬は、残念ながらないだろう。そんなに、この状況でめきめき経営改善 ができるとは、とても思えない。円高が進行し、原材料の値上がりもまだ続 き、輸出企業が打撃を受ける。非常に厳しい環境が、しばらくは続く。しか し、それは、自社だけのことではない。世間の一般の企業は、すべて条件は同 じだ。なにも、あなたの企業だけが、わりを食っているのではない。 ●ならば、どうするか。春待ち型の経営は難しい。誰かが救ってくれる、国が なんとかしてくれることは、多少はあるが、あまりあてにならない。ここは、 腹をくくって、ここ一番本格的に体質改善に取り組む、いい機会だ。そういう 風に、発想を切り替える。誰かが悪い、悪いと、犯人探しをしても、何も変わ らない。人のせいにしては、何も変わらない。 ●京都の100年以上継続している企業は、もっと厳しい環境変化を乗り越えて きた。関東大震災、戦争から終戦、オイルショック、バブルの崩壊。それは、 もっと大変だったかも知れない。そこを乗り越えたのは、ひたすら当たり前の ことを、当たり前に、正しいことを正しくやってきたことに、他ならない。経 営に近道はない。真面目に、こつこつが、正道なのだ。一攫千金のお金は、所 詮、身に付かない。