□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第236回配信分2008年11月03日発行 小額にこだわり大きな金額をいい加減にする 〜数千円を議論し数千万円を議論しない〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●企業や会社でものを買ったり、設備投資をするときに、どうしても費用対効 果、投資対回収の議論になることが多い。それは、いたしかたないが、たいて いの場合は、大きな金額になると、あまり議論がないまま、トップの意見がそ のまま通過したり、当初の案の通りに承認されたりすることが、多い。金額が 大きくなると、分からなくなる。 ●これは、参加者の日常の生活や体験、経験から来る、感覚で議論するから だ。そして、その金額を、自分の身近なものに置き換えて判断する。例えば、 数百円の買い物は、毎日の食事代のレベルだから、非常に親密に判断できる。 500円なら、どれくらいのものが食べられるかが、理解できるから、投資の金 額と比較がしやすい。判断もつきやすい。 ●主婦の感覚もそうだ。大根一本が安いから、時間をかけて遠くのスーパーに 買い物に行く方も多い。安いのは事実であり、それがムダとは言わないが、時 間やエネルギーを金額に換算すると、おそらくキャッシュアウトになってい る。つまり、持ち出しだ。会社では、往々にして、こういう現象が、実に良く ある現象なのだ。枚挙にいとまないくらい、たくさん出てくる。 <数千万円をきちんと議論する風土を醸成する> ●これは、ほとんどトップの責任だが、金額のかさばる投資案件などは、徹底 的に議論するのが正しいが、実はそうはいかない。金額が、ぴんと来ないとい うこともあるが、仮定が相当いいかげんであることが多い。誤差が激しく、仮 定がしっかりしていないから、すぐに大きな金額が誤差になり、ずれる。担当 者の力量が、その金額に追いつかないことが、多い。 ●トップが相当介入して、きちんと前提を明らかにして、材料を揃えて、そし てきちんとシュミレーションを行う。大企業では、企画やスタッフ部門に優秀 なメンバーがいるかもしれないが、中小企業では、それはなかなか望めない。 ならば、トップが自ら動いて、考えて、指針を示すことが必要だ。それをしな いと、瑣末にこだわり、大木を見失う。任して、肝心なところは任さない。 ●10億円未満の売上の企業では、50,000千円くらいの投資を間違うと、将来致 命的なことにもなりかねない。にもかかわらず、トップが言い出しただけで、 ほとんどまともな議論をしないまま、承認される。成岡も、以前に役員をして いた同族会社で、これで幾多の失敗をした。今になれば、なぜあんな大きな投 資案件を、もっと真剣に議論しなかったのか。不思議でならない。 <そういう空気が蔓延している> ●細かい数字の案件は、本当に時間がかかる。大根1本いくらかがよく分かる から、みんな譲らない。よく考えれば、どうでもいいような瑣末な案件だが、 なぜか真剣に討議し時間がかかる。力があり、ポジションが高い幹部が瑣末な 案件を真剣に議論始めると、修正できるのはトップしかない。しかし、そこが 修正できないまま、泥沼の議論が果てしなく続く。 ●大きな金額の投資案件は、社運を左右することも多い。しかし、それをわが コトと思って真剣に会社の将来に想いをはせて、責任を持ってきちんとロジカ ルに展開できるほど、レベルが到達していないことも、ままある。それを修正 するのは、トップの仕事だ。あるいは、自分でとことん悩んで、社内がダメな ら社外に図ってもいい。意外と真剣に考えてくれる。 ●役員会たる存在が、そういう議論の場だろうが、箸がころんだ、誰がこけた という、本質的ではない課題に時間をかけ、将来構想などはおざなりな議論で 終始する。確かに重たい課題なので、肩が凝る。気分はしんどい、しかし、そ こを真剣にやらないと、会社の将来が危うい。一番最悪なのは、面従腹背だ。 賛成を唱えるが、腹の中では反対している。 <日頃から幹部で真剣に議論するくせをつける> ●急にやっても、人間はなかなかできるものではない。急にマラソンが走れる わけでもないし、ゴルフで90が切れるわけでもない。日頃の地道な努力や習慣 の積み重ねのなせる業なのだ。真剣に議論するには、真剣に準備した材料が要 る。誰もそれを準備しないで、真剣に議論せよと言っても、それは何か間違っ ている。指示しないほうも、責任がある ●むしろ、数百円レベルの案件は中間管理職で判断して決定すればいい。そし て、数千万円の案件を幹部で真剣に議論する。どうも、業績がおかしくなる会 社は、それが逆になっている。幹部の責任もあろうが、最終的にはトップの日 頃の教育不足だ。幹部だからわかっていると思っているかもしれないが、一度 疑問視したほうが正解だ。 ●意思決定して、それでおしまいということも、よくある。意思決定のあと の、モニタリング、フォロー、チェック、予算と実行との乖離の検証など、実 は始まってからの進行管理が手抜きが多い。決まったら、勝手にものごとが進 むと勘違いしている幹部もある。社長もすべてができるわけではない。大きな 意思決定には、幹部からのサポートが極めて重要だ。