□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第238回配信分2008年11月17日発行 金融機関から融資を受けるのは簡単ではない 〜貸してくれない愚痴の前に反省すべきこと〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●勘違いされている方も多いかと思うが、今回の政府の緊急融資に関しては、 申請すれば何でも融資が受けられることではない。まして、融資を受けるとい うことは、当然ではあるが、返済の義務が伴う。もらったと同然というよう に、勘違いされているのではないかと、びっくりするようなことを平気でおっ しゃる経営者もいらっしゃる。 ●確かに、晴れて傘を出し、雨降って傘を引っ込めるというのが、金融機関の 一般的な評価、印象だ。それは、事実かも知れない。しかし、よく考えて欲し い。自分が融資する立場なら、どう考えるだろうかと。返済の見込みに危険信 号が明らかに灯っている企業に、大きなリスクを取って決断できるだろうか? 貸したら返す。この当然のことが実行される担保がないといけない。 ●将来の計画に対して、果たしてこううまくいくだろうか?と考えるのは、無 理もないとも言える。昨今の環境変化を見ていると、非常に不透明だ。不透明 を通り越して、まったく先が見えない、という業界もある。そんな中で、運転 資金に逼迫したという理由だけで、緊急融資が受けられるかは、非常に疑問だ と考えておいたほうが、いい。 <まずは経常収支を改善する> ●過去の決算書や試算表から見て、あきらかに経常収支がマイナスになったま まで、ずっと何の手も打たれないでそのまま漫然と時間が経過している企業も 多い。確かに、従業員が勤務し、得意先もあり、仕入先もあり、お客様もある 中で、いろいろと後ろ向きの手を打つことにシュリンクする方も多いかと思 う。世間体も悪いと感じるかもしれない。 ●しかし、昨今、企業が存続する、継続するのは、そう簡単なことではない。 京都には100年以上続いてきた企業を表彰する制度があるが、100年というのは 明治維新以後、関東大震災、世界恐慌、戦争、オイルショックなどの荒波を潜 り抜けて永続してきた企業だ。最近、筆者の知り合いのこの100年以上続いて きた企業も、残念ながら破綻した。 ●まずは、自社の経常収支(収入と支出の差額)をプラスにすることだ。利益 を出すことは、もちろん大事だが、利益は売上から費用を引いた結果だ。計算 上の利益であり、目前の資金収支とは、異なる。経常収支がマイナスになる と、当然、資金繰りが詰まってくる。数ヶ月続くと、たちまち、手持ち資金は 枯渇し、返済原資がなくなる。 <金融機関はどこを見るか> ●たとえ、現状の収支がプラスでも、本当に返済が可能だろうか?ということ を、次にチェックされる。それは、過去の実績を見るしかない。将来の計画 は、合理的で、かつ、妥当性があれば、いい。売上は現状維持で、原価や経費 を可能な限り改善し、自分たちのできる裁量の範囲での努力が現れているか。 そこが大事だ。 ●この数ヶ月の試算表が黒字になったからといって、改善されたとおっしゃる 気持ちは分かるが、1学期の通知簿だけ見て、学年末の試験の点数を保証でき るわけがない。それを、改善、改善と言って、それを見て資金の手当てを言わ れても、それは難しいかもしれない。今後、年末から需要の落ち込む2月にか けて、本当に好調が続くのか。 ●残念ながら、野球のペナンとレースと同じで、通年の成績で判断するしかな い。今年のどこやらの球団みたいに、最後に大失速ということも有り得る。将 来の業績を描いた計画を担保に資金手当てをするには、過去の実績が裏づけと してないと、難しい。そこを、何とか、ということだが、もし、あなたが資金 を貸す立場なら、果たして、できるか? <日頃の行いが大事> ●確かに、昨今の金融パニックからの円高、主要産業の業績不振は、異常な感 じがするが、それは現実として受け止めなくてはいけない。そして、一過性で はなく、恒久的な対策を打たないといけない。短期の糊口をしのぐ対策をして も、所詮、一時的に借りたお金がなくなれば、また、元の木阿弥だ。しかし、 改善までには時間がかかる。 ●なので、当たり前のことだが、日頃からの行いが大事だ。メシを食うことが 決まってから、米屋にコメを買いに行く人は、いない。日頃から、備えておか ないといけない。急にマラソンは走れない。42kmを走るには、最低これくらい 毎日、毎週走りこまないといけないということは、実は分かっている。わかっ ているけどできないのが、悲しいかな、人間なのだ。 ●金融機関にも、保証協会にも、認定をする公的機関にも、融資の申請は山の ように来ているという。それくらい、資金繰りに詰まっている企業が多いとい うことだ。一時的に、融資がないと、年末の資金需要の多い時期を越せないと いう企業もある。しかし、最終的には、今後の返済能力にかかっている。それ は、毎日の、毎週の地道な積み重ねからしか、生まれない。