□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第240回配信分2008年12月01日発行 愚直にこつこつと努力を積み上げる偉大さ 〜京都山岡製作所に見る知恵の経営ノウハウ〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日、京都の商工会議所の企業見学会のナビゲーターをさせていただいた。 京都府城陽市にある「山岡製作所」という金属加工の著名な会社を、総勢35名 くらいの方々と訪問し、その経営のノウハウをいろいろと勉強させていただい た。非常に参考になったし、また、いたく感心したところの多い、収穫の多 かった見学会だった。 ●そもそも、この山岡製作所が見学会の対象に選ばれた理由は、京都商工会議 所が提唱している「知恵ビジネス」というコンセプトの一環で、「〜知恵を力 に〜中小企業活力見学会」の第1回目に選ばれたということなのだ。「匠の技 を次世代に伝える技術経営」がキーコンセプトで、「山岡技能経営(MOS)と 人材育成について」というテーマだった。 ●MOSとはManagement Of Skill の略称で、事業の継続的な発展を目指すた めに (1)社員のスキルレベルを明確にする。 (2)社員のスキルアップを個人ごとに管理し、目標レベルを早期に達成させ る。 (3)スキルと職能資格を明確に一致させる。 (4)スキルレベルを給与で評価する。 (5)当社の技能者しかできない分野の仕事を積極的に拡大する。 という明確な方針が打ち出されている。 <知恵の経営報告書2008> ●京都府は今年度から「知恵の経営」事業に乗り出し、その一環として実践モ デル企業の第一弾で4社を認定した。そのひとつが、この山岡製作所である。 金型、機械製造装置メーカーであるこの会社は、独自の人材育成システムに、 その特徴がある。上記にあるように、社内に独自の技術資格制度を設け、技能 の高いベテラン社員が指導する。 ●微細な加工技術や非常に難しい他社ではできない製作物を加工製作できる技 術ノウハウは、実はこの技能教育にあるのだ。こういう形のない資産=無形資 産というのは、なかなか見えないだけに評価しづらい。金融機関も、数字で表 せない、形がないから評価の対象にしてくれない。付加価値が高いといって も、形にならないと難しい。 ●そういうノウハウの部分を少しでも分かりやすく、かつ、目に見える形で表 現し、外部に認識してもらい、自社の強みをPRする形で生まれたのが、この 「知恵の経営報告書」なのだ。特に、ものづくりの現場のノウハウ=暗黙知 を、見える形で表現し、他者に認識してもらえれば、今後の企業の発展に大い につながるとの目論見がある。 <懇切丁寧に見学させていただいた> ●総勢35名を二つのグループに分け、懇切丁寧に現場を見学させていただい た。もちろん、外部の者に見せられない箇所もあったのは言うまでもない。し かし、現場は非常に整理整頓が行き届き、清潔で掃除もきちんとされており、 ムダが感じられない。いたるところに、掲示、表示があり、誰が見てもすぐ分 かる。外部からのクレーム票まで張ってあった。 ●掲示の内容も、グラフやイラスト、図をふんだんに使い、一目瞭然。結構、 時間がかかるとは思ったが、その活動も、これくらい定着すると、当然という 雰囲気になるのだろうか。社内に多くの委員会が立ち上がり、それぞれが相互 に連携して活動している。参加者の活動の写真を見せていただいたが、みんな 嬉しそうな顔をして写っている。 ●そして、言葉の定義が簡潔で明確。「山岡の考える知的資産とは何か」、 「知的資産を確保するとはどういうことか」、「知的資産を活用する目的は何 か」というような、理念の「キモ」となる部分が、非常にコンパクトに明快に 定義されている。難しいこねくりまわした説明は、ほとんどない。単純にし て、明快。これが、非常に理解を助ける。研ぎ澄まされている。 <軸のぶれない経営理念> ●ここまで行き着くには、大変な努力と時間がかかったことは、想像に難くな い。しかし、社長の説かれる「知的資産経営」がここまで徹底した背景には、 (1)トップのゆるぎないオープン経営への姿勢 (2)全社最適を目指す人財配置、登用と公平な教育制度 (3)失敗を再発防止につなげノウハウ化する社風 (4)愚直に日常制度や習慣を継続し続けるこだわり (5)斬新でユニークな全社横断委員会の設置 (6)強いリーダーシップ力を持った幹部社員の登用 の6か条があった。 ●特に、成岡が非常に感心したこの(4)の「愚直に継続するこだわり」とい う、一見地味なこのフレーズに、トップの不退転の決意が込められているとい う気概を、大いに感じた。日頃申し上げている「軸がぶれない」というのは、 まさにこのことである。トップの、この経営姿勢に強い自信とゆるぎない決意 が込められている。 ●常に申し上げている「経営は意思の表れ」というのは、まさにこのことだ。 なかなか、簡単にできるものではないし、一朝一夕に出来上がったものでもな い。社長お一人で完成したものでもない。いろいろな周囲の優秀なスタッフ、 社員の協力などがあって、初めてできるものだろう、しかし、周囲を動かし、 魂を植えつけるのは、経営トップしかできないことなのだ。 <参考>株式会社山岡製作所 京都府城陽市平川横道93 資本金62,400千円 従業員160名+80名 創業 1938年(昭和13年) 設立 1954年(昭和29年) http://www.yamaoka.co.jp/