□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第242回配信分2008年12月15日発行 当たり前のことを当たり前にやるとは 〜できていない当たり前のことを点検する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日のこのメールマガジンで、こういう逆風のときは「当たり前のことを当 たり前に粛々とやることだ」と書いたら、いろいろなところで引用していただ いた。それくらい、この陳腐なことができていないことが多いのだろう。「花 が咲かないときは、根を張る」というのも、実に言いえて妙の、経営心理だ。 こういう基本がわかっていれば、大きくは間違わない。 ●「当たり前のこと」は、実は企業や会社によって随分異なる。企業風土や、 規範、空気、伝統や習慣などで、大きく違う。それはそれで、いいし、構わな い。あらゆる会社が、全く同じということは、有り得ない。しかし、経営の基 本は、大きくは違わない。それは、意外と地味で、目立たないが、一度崩れる とどうでもよくなってしまう傾向がある。 ●崩すのは、トップの言動によるところが多い。それを気が付かずにやってい るから、なおさら悪い。本人にしてみれば、あまり大きなことではないが、下 に言っておきながら、自分で崩すことが多いのは、なぜだろうか? それは、 本当にそう思っていないからだ。本当にそれが大事で、会社の「当たり前」の ことなら、決して崩れないはずだ。 <当たり前のことその1> ●買収企業を立ち直らすことで有名な、日本電産の永守重信社長の手法は実に 分かりやすい。買収した新しい工場に行って、何を言うかといえば、 (1)勝手に休まないで欲しい。きちんと出勤を守る。 (2)現場をきれいにする。整理整頓に心がける。品質の基本は現場の清掃か ら始まる。 この非常に、一見簡単なことで、そのほとんどの企業が立ち直るという。 ●もし、これが真実なら、今までこういう簡単で基本的なことが出来ていな かったということだ。工場で、出勤の状態が悪いと、作業の段取りが狂い、生 産性は下がり、ミスも起こる。責任者は、人の手配で走り回り、慣れない人が 慣れない作業をやることになる。もちろん、有給休暇で休むことは、事前に届 けが出ているから、問題ない。突然のポカ休みだ。 ●週末での過度のレジャーなどで体調を崩し、月曜病で突然に休む。人間だか ら、当然体調の異変はあるだろうが、プロなんだから、体調の維持管理は、自 己責任の最たるものだ。それが決まって、週明けに集中する。職場のモラルの 問題だ。生産計画の狂いは、原単位の損失を招き、品質の悪化につながり、歩 留まりの低下をもたらす。 <当たり前のことその2> ●整理、整頓、清掃などの俗に言う5Sの励行なども、基本中の基本だが、意 外と生産現場は乱雑で、何がどこに置いてあるのか分からない。元にあったと ころに、必ず返却するという習慣がついていない。上司も守らないから、部下 も当然そういう躾ができていない。トヨタは道具の置く場所、置き方ひとつに とことんこだわり、喧々諤々の議論をする。 ●それくらい真剣にやらないといけない。時間厳守もそうだ。平気で上長が会 議に遅れてくる。遅れてくるなり、言い訳が始まる。遅れの時間は、全員がロ スタイムとなる。時間当たりの単価を人数でかけると、莫大なロスが発生して いる。収益には直接反映しないが、効率は低下し、生産性はダウンする。時間 厳守と標語にはかかげてあるが。 ●試算表が翌月の中ごろになっても出てこない。いろいろと言い訳はあろう が、かなり時間が経過してから出てくる試算表は、ほとんど役に立たない。も う、翌月の後半戦を戦っているのに。それで平気な顔をしている経理担当者も 多い。お金のことは、タイミングが重要だ。前月の結果は、すぐに翌月のアク ションに結びつかないといけない。 <なぜ当たり前のことが出来ていないか> ●いつに、企業のトップの姿勢如何による。毎日、こつこつと当たり前のこと を粛々と継続していく根気と意思がないといけない。継続は一種の能力だ。こ れが当社にとっては大事と思えば、とにかく根気よく継続する。経営は、意思 の表れだから、経営者の思っていることが、そのまま実現し、数字にも、結果 にも現れる。そういう意味では、恐ろしい。 ●崩すのは、たいがいトップの一言、ちょっとした言動からだ。特に、新入社 員や転籍、異動して来た初めての人は、その一言、その行動ですべてを理解し てしまう。ああ、この職場は、会社は、これでいいんだ、となる。一度、こう なると、修正するには、非常にエネルギーを要する。変えるのは大変だ。時間 も、お金もかかる。そのうち、おかしくなる。 ●こう書くと、そんな宗教じみたことができるかと言われるかもしれないが、 経営とはそういうものだ。スポーツでも、芸術でも、学問でも、経営でも、基 本は基本だ。その基本をおろそかにせず、それが無理なくできて、初めてそこ から応用動作が可能になる。業績が芳しくない企業は、一度、この基本は何で あるのかという、重たい命題に真剣に向かい合うことが大事だ。