□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第254回配信分2009年03月09日発行 積極的に守ることが次の攻撃につながる 〜後ろ向きの守りではなく前向きに守る〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●スポーツは基本的には、守備の練習から入るものだ。野球なら、まずキャッ チボールから始まる。バレーボールならパスから始まる。野球の練習でいきな り体操のあと、バッティングから入る練習は見たことがない。身体をほぐす、 慣らすこともあるが、まずはキャッチボールが野球の基本だ。ということは、 まず守備から入るというのが正解なのだ。 ●攻撃は華々しいし、エキサイティングだが、波がある。ムラが多い。一流打 者の打率は3割なのだ。3割ということは、逆に言えば7割は凡打なのだ。連 打の確率は、3割×3割だから、1割もない。10回のうち1回ということだ。 ことほど左様に、攻撃は確率的には難しい。しかし、守備は計算できる。防御 率や守備の確率は、だいたい予測できる。 ●いくら点を取っても、守備が破綻してぼろぼろ失点していては、試合になら ない。攻撃の確率は低いから、確率の高い守備できちんと守りきる。また、走 塁は波がないから、足で稼ぐ。ヒットも足で盗塁を稼げば、立派な2塁打にな る。昔、阪急の福本が1シーズン100以上の盗塁をしたが、ヒットが100本多 かったのと同じだ。これは、すごい。 <営業ばかりが攻撃ではない> ●企業活動に照らしてみると、華々しい売上を計上する営業部門に目が行く が、それでは企業活動は成り立たない。営業が攻撃なら、売掛金をきちんと回 収する、注文の商品をきちんと届ける物流、請求書をちゃんと出す営業管理な どの機能が働いて、初めて企業活動が成立している。ディフェンスがお粗末だ と、商品は届いたがお金が回収できていない。 ●とかくトップが攻撃型の企業は、ディフェンスがお粗末だ。商品開発も、営 業も、どんどん前向きなのはいいが、後ろを振り返れば穴ぼこだらけというっ 企業も多い。誰も、あとの穴ぼこを埋めようとしない。蛇口をひねっても、誰 もそのあとを止めない。どんどんバケツに水を注ぐのだが、お尻の穴からどん どんこぼれていく。キャッシュが貯まらない。 ●売上は回収できて初めて売上だ。単に請求書を発行して、商品が発送された ら売上は計上できる。しかし、それは紙だけの売上だ。期日までに入金があっ たかどうかは、本来は営業の責任だ。しかし、もう意識は済んだ話しで、どう しても確認が疎かになる。翌月になって、売掛金のリストが出てきて、初めて 未入金がわかる。そこで慌てる。 <積極的に守備する> ●昨今の景気の悪さを嘆いても仕方ないが、とにかくキャッシュを確実に確保 することが大事だ。経常利益が赤字でも、キャッシュフローがプラスなら、資 金が回っている間は、大丈夫だ。とにかく、滞留している売掛金の早期回収に 努める。きちんと期日に請求書が発行され、きちんと期日に入金を確認する。 当たり前のことを、粛々とやる。 ●入金の期日が20日で、確実に20日に入金されればいいが、何かの都合で遅れ ることも、有り得る。あてにしていた大きな入金の金額が、少し後ろにずれる と資金繰りが一気に狂う。それで、月末にばたばたしないといけないとなる と、企業活動に非常にダメージが大きい。相手は悪気はないかもしれないが、 月末の計算が大きく狂う。 ●古い在庫も換金できるものは積極的に換金する。流動資産で計上されている もので、資産から現金に変えられるものは、積極的に換金する。資産には上 がっているが、本当に換金できるか、怪しいものもある。在庫も売れる、売れ ると思っているが、果たして売れるか。固定資産は、なかなか換金できない が、流動資産は再度点検する。 <守備から攻撃のリズムをつかむ> ●ディフェンスが固い会社は、なかなか崩れない。攻撃型の会社は、攻めてい るときはいいが、いったん守備モードになると、弱い。特に、攻撃型タイプの 社長さんだと、調子に乗って攻めているときはいいが、昨今のような状態にな ると、非常に危うい。そういう会社は、守備にしっかりした人材を確保するこ とだ。営業に目配りし、管理面を強化する。 ●野球でも、積極的に守ると攻撃のリズムが生まれる。ピンチをダブルプレー やファインプレーで凌ぐと、次の回には点が入る事が多い。積極的に前進守備 でプレッシャーをかける。バックホームで1点もやらないぞという、前向きの 意思を見せる。こういう状況のときは、トップが号令をかけて、前のめりに積 極的に守る。とにかく守備を固める。 ●節約モードになり勝ちだが、倹約、倹約、ケチケチばかりでは、モティベー ションが上がらない。無駄なことや、不必要なことは要らないが、本来現金化 できているものを、きちんと本当の資産にしないといけない。貸付金も、売掛 金も、仮払金も、在庫も、全部回収できて、初めて資産価値があったと言え る。こういう時期こそ、積極的に守備を固める。