□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第255回配信分2009年03月16日発行 省エネ技術と自社ビジネスとの接点を意識する 〜今後の省エネは過去の省エネ技術と異なる〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●筆者が社会人になった昭和49年(1974年)は、第一次オイルショックの真っ 只中。前年の昭和48年の秋から、中東で戦争が勃発し、原油が日本に供給でき なくなった。当時の原油の国内備蓄は、確か150日くらいで、数ヶ月で底をつ くことは、明々白々だった。それで、世の中はパニックになり、みんな慌て た。原材料が4倍の値段になり、製造業は休業に追い込まれた。 ●筆者が入社した合成繊維のメーカーも、ご多分に漏れず、設備の半分を停止 した。広島県、富山県、愛知県、神奈川県など全国各地に大きな工場があり、 100%稼動していた機械装置を、だいたい半分停止した。そして、雇用調整で 半分くらいの従業員を強制的に休ました。助成金で国が給与の補填を行い、何 とかして凌ぐのが必死だった。 ●とにかく、原材料が4倍になったのだから、今まで通り生産していたので は、コスト的に見合わないことは、誰の目にも明らかだった。設備投資も、一 時は凍結していたが、省エネ、省資源、省力化にかかわる投資は、比較的大き な金額も許された。償却の範囲内の投資なら、小さなものから大きなものま で、とにかく早くやれと号令がかかった。 <当時のはコストを下げるため> ●意外と現場からいろいろな日常の意見が出てくるものだ。それまで、そうい う観点で見ていなかった作業手順の見直し、工程の一部変更、基準の改編、原 材料の検討など、考えれば、やることはいっぱいあった。現場は、そういう意 味では改善の宝庫だ。野球ではグランドに銭が落ちているという有名なことば があるが、製造業では工場にお金が落ちている。 ●保温技術の改良。加熱と冷却のプログラムの改良。冷却水の再循環。副生成 物の回収工程の改善。そのまま回収していた副製品の再利用、などなど・・ ・。当時の現状で、ありとあらゆることを考え、早く実行できるものから、と にかく早くアクションを取った。考えれば、平時にすべきことだが、なかなか 好調なときには、重い腰が上がらない。目的は、ひとつ。生産コストを下げる こと。とにかく、原材料と原動費が4倍になったから、少しでもコストダウン できるものは、徹底的にやった。 ●失礼ながら、大手企業のポテンシャルは、こういう緊急時には、非常に強 い。大きい企業なので、社員数は多いし、末端まで浸透するには時間がかかる が、いったん意識が持ち上げるとモティベーションは高い。当時、給料は上が らず、賞与もほとんどない状態でも、企業の存続をかけて、それこそ末端ま で、必死になって取り組んだ。それと、こういうテーマは数字で結果が見やす い。やったアクションが、早く分かる。他の工場や、現場との競争意識もあ る。中小企業では、なかなかそうはいかないが。 <これからの省エネは仕組みが変わる> ●過去の省エネ技術は、工程の改善が主だった。後日、自分が担当した原料転 換などは別だが、現場での改良、改善は、とにかくコストを現場の知恵と工夫 で下げることだ。しかし、それは限界がある。最低のエネルギーコストはかか る。どんなに努力しても、理論原単位に基づくエネルギーは必要なのだ。これ は、自然界の法則であり、エントロピーの法則に抗うことはできない。無から 有は作れない。だから、とにかく、節約モードで迫った。当時は、省エネより 消費が美徳だったから。 ●今後は、産業構造の仕組みが変わる。自動車もガソリンから電気に移行す る。発電も、火力から原子力に移行する。また、風力や太陽光に移る。電力の 移送も、超伝導に代替される。「低炭素化社会」という言葉も、最近ようやく 社会的認知を得た。「スマートグリッド」という電力が余った地域と、不足す る地域をIT技術を使って需給を調整する電力網の整備が始まる。臨海地域で は、排水の再利用や、海水の淡水化事業が本格化する。「水」が大きなビジネ スチャンスになる可能性が高い。 ●自動車ばかりに製造業のインフラがあった時代から、確実に、今後、省エネ 産業が日本のひとつのメジャーな産業基盤に発展するだろう。小職が担当した 過去の省エネ=節約という技術開発とは、次元の違う省エネ産業が立ち上が る。保温材料の改良開発では、とても届かない世界の技術が、確実に発展する だろう。多少時間がかかるかもしれないが、こういう技術は臨界点に近づく と、あっという間に普及する。家電製品の普及と同じだ。今まで、水面下で研 究されてきた技術が、一躍脚光を浴びる。 <どうやったら自分のビジネスと関係あるのか> ●自社の製品、サービス、顧客ニーズ、技術の動向、とにかくこれからはまだ まだ厳しい時代が続くことを覚悟し、今後のキーワードとの接点を見つけるこ とだ。中小企業は大きな風呂敷を広げることは、しないほうがいい。多少ニッ チでも、将来性のある領域に、狭く、深く掘ることだ。小さな池で、大きな魚 を釣ることが、一番大事だ。大きな池では、難しい。 ●どこが接点になるかは、表面的に見ていたのでは分からない。外側からお客 さんでは分からない。自ら、試行錯誤を繰り返し、失敗もし、恥もかき、落胆 して、そこから次のアイデアを探す。今の時代、ちょっとやってうまくいくお いしい話しが、その辺に転がっているわけがない。しかし、諦めては終わり だ。成功の秘訣は、成功するまでやり切ることだ。 ●中の部品の一部でも関係あれば、特化すればいい。ネジひとつ、バネひと つ、ボルトひとつ。それでも立派なビジネスになる。京都の老舗に一保堂とい うお茶の老舗があるが、その昔宮中から「お茶一つを保って商売をするよう に」との言葉を授かり、屋号にした。「一つを保つ」ということは、事業ドメ インを決め込むということだ。決め込んだところと、キーワードとの接点を見 つけることだ。