□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第260回配信分2009年04月20日発行 特徴があり付加価値の高い店は繁盛する 〜弊社近くの居酒屋にみる繁盛の秘訣〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●昨日も遠路、夜に来客があった。京都と長崎を往復されている方だったが、 京都滞在の日程を合わせて、弊社にお越しいただいた。しばし歓談ののち、近 くで一杯やることになった。そういう際には、筆者は決まってお連れする店が ある。歩いて5分ほどのところにある小さな居酒屋だ。教えてもらわないと、 気が付かずに通り過ぎるかもしれないくらい、小さくて目立たない。店構えも そんなに綺麗でないし、何よりも、見たところごちゃごちゃした感じがして、 スマートではない。近くには、洒落たイタリアンなどの新規開店が目立つ。 ●しかし、この店の脅威は、1日にお客さんが3回転くらいする。1階がカウ ンターとテーブル。2階が座敷。1階、2階全部で40名くらいはいけると思う が、いつ前を通っても、ほとんど満席だ。だいたい、6時過ぎからまず初めの 客が入りだす。会社が終わって、帰る前に一杯という組だ。この連中が8時前 には帰る。次に一番メインの客層が入ってくる。これが、10時くらいまで。そ して最後の組が、10時過ぎから、最終の11時半くらいまで飲んでいる。本当 に、3回転している。客単価は2,500円くらいだろうか。 ●特に、目立つのは女性のグループ客が多いこと。昨日は土曜日だったが、女 性の二人組みや、4人のグループなどが飲んでいた。ときどき、女性が一人で 入ってきて、お連れを待っていることもある。女性一人で入れる居酒屋も、珍 しい。それくらい、お店には雰囲気があり、気楽に一人で飲んでいられる。お 連れを待っている間も、非常に気楽で楽しそうだ。もともと、大阪にあった 「南海ホークス」というプロ野球の球団の公式サポーターのお店なのだ。だか ら、お客には野球ファンが多い。 <しかし特徴はいっぱい> ●1階には、入り口と奥に両方大きな液晶のモニターがあり、シーズンには ずっと野球の中継を流している。片方で巨人の試合を流し、片方で阪神のケー ブルテレビ中継を流している。その画面を見ながら、一喜一憂しジョッキを傾 ける。中ジョッキ+おつまみの1,000円ぽっきりお得メニューが定番で、まず それで結構飲める。あと、お代わりをして、少し何か食べると、お腹一杯にな る。これで、2,000円から2,500円くらいだ。サラリーマンのお小遣いレベルで 言えば、これで結構満足できる。 ●店はレトロな雰囲気を大事にしている。メニューも品揃えも、カウンターの 雰囲気も、周辺のグッズも、コンセプトに統一感があり、なにやら郷愁を感じ させるイメージをうまく演出している。灰皿も古い大きな金属のもので、直径 20センチはあろうか。マッチ箱も、古い大きなマッチ箱で、いまどき探しても なかなか見つからないだろう。缶詰も各種積み上げられ、いかにも古きよき時 代への懐古イメージをかもし出す。マスターは40歳前後とお見受けするが、な かなか演出がうまい。 ●「南海ホークス」の公式サポーターのお店だから、野球グッズも多い。サイ ンボールや選手のサインペナント、フィギャのおもちゃ、色紙など、ごちゃご ちゃしているが、それがまた、なかなかいいのだ。もちろん、古い時代のユニ フォームまで壁に飾ってある。ユニフォームの歴史的な変遷を見ているよう で、興味はつきない。野球ファンでなくても、見ているだけで面白い。筆者 も、小学生時代から野球をやっていたが、これくらいうまく演出している店も 珍しい。スタッフも、きびきびして、なかなか元気がいい。 <顧客がクチコミで営業してくれる> ●筆者は、ここの常連だが、初めて弊社のオフィスにお越しいただいた方は、 時間の許す限り、ほとんどここへお連れする。また、よく同窓会や野球部のOB 会の幹事会合などが弊社であると、たいてい、ここへ流れる。そして、この原 稿と同じように、お連れした方にお店の紹介をする。これが、重要な営業なの だ。マーケティングの極意は、「自社で営業しない」ことだ。顧客が勝手に営 業してくれる。これが最高のマーケティングなのだ。筆者は、よく、「医者と 食べ物屋は営業してはいけない」と言っている。 ●我々のビジネスも、そうだ。コンサルタントなどという商売は、形のない サービスを売っている。だから、決して営業してはいけない。顧客が、その内 容に感謝、感激、感動して、それを周囲に伝達してくれる。単なる満足なら、 それで終わりだが、感激や感動というものは、必ず周囲に伝達したいはずだ。 それが、強力な媒体になる。医者も食べ物屋も、同じだ。形のない、付加価値 を提供しているのだから、見せるものはない。見せるものはないが、感動を伝 えれば、顧客は必ずポジティブに伝達してくれる。 ●お連れした人にその後お目にかかると、お近くの方はたいがい、また、2回 目、3回目と来店している。そして、また同じサイクルが繰り返される。この 店は、ほとんど広告を見たこともないし、チラシを配った形跡もない。周囲に は、町家を改造した洒落たお店が林立しているが、決してお客の入りは減少し ていない。何よりも、コストとパーフォーマンスを考えると、非常に付加価値 が感じられ、お得感があり、値段もリーゾナブルだ。客層の年齢層もうまくば らけており、何より女性のお客さんが多い。女性が多い店は、繁盛する。 <とことん付加価値を上げることに集中する> ●昨日開催の経営塾でも申し上げていたが、ビジネスの原点は、粗利すなわち 付加価値だ(厳密には粗利と付加価値は違うが)。売上も、もちろん重要だ が、原価を差し引いた粗利の最大化がポイントだ。原価は社外に流出する費用 だから、それを差し引いた粗利が会社の利益の源泉だ。もちろん、粗利を増加 さすには、売上を伸ばし、原価を下げる努力をする。最低限かかる費用と、目 標とする利益から逆算すると、どれくらいの売上で、どれくらいの原価、どれ くらいの粗利が必要なのかを算出する。 ●特にサービス業は形のないものを提供しているのだから、見せるものはな い。もちろん企画書などという成果物はあるが、出来上がりのものを最初から 見せることは難しい。自分から、自社はすごい、すごいと宣伝しても、顧客は 果たして信用するか。WEBマーケティングでも重要なのは、購入者からの書き 込みなどだ。利用者、使用者からの評価が、次の顧客の拡大につながる。顧客 のクチコミが、次の顧客への宣伝につながる。自社がどう言っても、顧客の一 言には適わない。 ●しかし、信用や評価を失墜するのは、一瞬だ。築き上げるには時間がかかる が、失うときは早い。なので、その評価されている点を、粛々と毎日磨き続 け、新しい付加価値を不断に開発し、古くなったメニューを切り捨てる、外 す。時代や社会環境が変わる、変化するのだから、それは当然だ。しかし、た いていの企業は、なかなか、今までやってきたことをやめられない、変えられ ない。それでは、顧客のクチコミ感動伝達マーケティングにはつながらない。 「儲け」という字は、「信じる者」と書くのだから。