□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第269回配信分2009年06月22日発行 あなたの企業や職場での朝礼はどうしてますか 〜慣れてしまうと気が付かない落とし穴〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●多くの企業や事業所で朝礼をされていることと思う。先週も、某企業の方が オフィスに来られて、いろいろな話しをしているうちに朝礼の話しになった。 その会社は8時30分が始業で、その時刻から朝礼をされているという。過去に は、社長が10分くらいお話しされることが多かった。どうしても話しが長くな り、15分くらいかかることもあったという。そうすると、朝礼が終わって、全 員が現場の持ち場に散って、それから機械が稼働し始めると、実際の始業は9 時くらいになるという。 ●これがたまのできごとならまだいいが、毎日となると問題だ。毎日、毎日、 朝の貴重な時間帯に10分、15分全員が手を止めて作業を中断する。あるいは、 得意先や取引先、または顧客などから電話が入ることもあるだろう。場合に よっては急ぎの用事もあるだろう。そんなときに、朝礼中で手が離せないとい うことが、まかり通るだろうか。そんなこちらの都合のいい理由が通用するだ ろうか。電話をかけているほうは、そんなことは分からない。また電話の声に 朝礼の内容が聞こえる、入るかもしれない。 ●電話機に女性が飛んで行って、取り次ぎ、だれか幹部を呼ばないといけない かもしれない。そんなことは、当然のごとく発生する。いや、時間に関係なく 起るだろう。いったい、そんな無駄なことが毎日、毎日続いているとしたら、 これは問題だ。そういう認識を示したら、いやずっと続けていると、これが普 通なんだと染み込んでいるという。恐ろしいことだ。どこの金融機関が、9時 にシャッターが開いてからカウンターの中で朝礼しているか。どこの百貨店が 10時の開店のあと、お客さんが入って来ても、売場の中で朝礼をしているか。 <拒否反応にひるまない> ●製造業は、始業時間が来たら機械が稼働するものだ。その時間に稼働できる ように段取りするのが普通ではないか。どんな仕事でも多少は準備段取りに時 間がかかるものだ。それは仕事といえば仕事だが、多少のアローワンスは何で も見ないといけない。プロのスポーツ選手が、いきなり試合開始の直前に来 て、いきなり結果が残せるか。ウオームアップなしでいきなりマラソンが走れ るか。どんな仕事にも準備時間は必要だ。その分を余裕を見て、動かないとい けない。段取りをしておかないといけない。 ●事務系の仕事の生産性の低さも、そんな些細なことが原因のひとつになって いるかもしれない。誰かが、おかしいと思わないといけないが、毎日、毎日が 同じことの繰り返しになっていると、そうは感じない。麻痺する。では、思い 切って変えようと言うと、まずはブーイングの嵐が起こるだろう。人間という 動物は、環境や条件が変化することを好まない。昨日と今日は同じがいい。今 日と明日も同じがいい。その方が楽なのだ。変化が起こると、まずは拒否反応 が起こる。 ●拒否反応の程度の大小は人によって違うが、概ね年齢が高くなるほど、拒否 の程度は大きくなる。しかし、変えると言い出したからには、断固やらないと いけない。自社の都合でものを判断してはいけない。すべての思考の原点は顧 客に置かなければいけない。往々にして、業歴が古く老舗になってくると、そ れを錯覚する。自分たちが優れているんだと勘違いする。確かに、売上は市場 からの評価の大きさだが、自社だけが優れているだけではない。顧客からの信 用があって成り立つものだ。それを長年商売をしていると勘違いする。 <顧客第一を優先する> ●だから、始業時間を過ぎてから朝礼が始まる。お客さんから、仕入れ先か ら、得意先から電話がかかっているのに。口では顧客を大事に、顧客視点で、 顧客目線でと言いながら、実はやっていることは違うという例は、枚挙に暇な い。そこらじゅうに転がっている。探さなくても、いくらでもある。しかし、 少し半歩下がって、本当にこれは顧客視点になっているだろうかと、自問自答 しないといけない。もちろん、朝礼が悪いというわけではない。その日の段取 り、重要な連絡、さあ仕事が始まるというテンションの高まり、そういうけじ め、区切りの時間だ。それは決して悪いとは思わない。 ●悪いのは運営のまずさと、マンネリを許容する空気、風土だ。おかしいと 思ったら、まずいと思ったら、直ちに修正するのが正しい。理屈をこねている 場合ではない。意外と全員がそう思っていても、誰かが言い出さないとことは 始まらない。勇気ある発言、勇気ある一歩が出ない。勇気ある行動をとると、 とかく日本の社会では、叩かれる、虐められる、無視される、評価が下がる。 欧米では、黙っていることはマイナスの評価になる。しかし日本ではプラスの 評価をすることが多い。沈黙は金という至言まであるくらいの社会だ。 ●江戸時代まで、士農工商という明確な身分制度があり、明治以降も、公侯博 子男という貴族階級の身分制度を筆頭に、かなりの時間それが機能していた。 なので、トップダウンに染まった社会になっている。だから、朝礼もトップの 自己満足で続いている企業も多い。本来、ここでは徹底した連絡事項に集中す るか、自由な発想で各自が自己主張すべきだ。それをするのが面倒くさいの で、従来通りのマンネリ化した朝礼が延々と続いている。悪く習慣化してしま うと、なかなか変えられないし、変えにくい。 <自分の会社のことが一番見えにくい> ●意外と組織の中に埋没すると、周囲が見えなくなる。我々のように、少し外 側にいて、常に新鮮な情報として接していると、習慣化されてマンネリ的に やっている企業は、すぐに分かる。まず、トップに問題意識がない、あるいは 薄い会社が多い。この毎日やっている朝礼のどこがおかしいのか、どういう風 に変えればいいのか。まずは、問題意識を持つことだ。おそらく、初めはそう 思っていたはずだ。どこかおかしくないかと。それが、怖いことに、時間が経 過すると、疑問を感じなくなる。 ●次に疑問を感じたら、周囲に聞いて回ることだ。自分はこう思うけど、貴方 はどうか?どう思う?これを数人やるだけで、だいぶ違う。問題点が明確にな り、共有化される。朝礼を始業の15分前に始めて、本当の始業を8時30分にす るには、どうすればいいかな?話す人を輪番で決めるか、本当に重要な連絡事 項だけに絞るか。金融機関やデパート、有名な製造業の朝礼はどうしているの か、一生懸命研究してみる。40名の事業所で15分全員がムダをすれば、15分 ×40名=600分=10時間のムダが生まれる。 ●毎日10時間のムダは、従業員一人分の稼働時間だ。給与に換算すると、年間 4,000千円くらいになる。この投資を有効に生産性の高い仕事に振り向けられ れば、どのくらい付加価値の高いアウトプットが生まれるか。コストのカット を考える前に、いかに生産性の低いことを平気でやっているかに、気が付くこ とだ。急激に変えると人間は変化への拒絶反応を起こすから、できるだけソフ トランディングすべきだ。そして、全員の意識が変わり始めたら、果敢に変化 を起こす。自分からやらないと、誰もやらない。