□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第273回配信分2009年07月20発行 経営トップの示す勇気が企業を変える 〜自ら変わろうという勇気を持つこと〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先週は、企業業績が悪い会社のトップの方と、現在は必ずしも好業績ではな いが、トップが自ら新しい事業に積極的に取り組もうとされている企業のトッ プの方と、好対照の方にお目にかかった。仕事柄多くの企業トップの方にお目 にかかるが、本当にトップの気持ちと行動次第で、企業は変わるという好例を 目の当たりにした。これくらいトップの気持ちの持ち方と、行動の示し方で、 結果が大きく変わるのだ。それは、言ってみれば非常に恐ろしいことなのだ。 特に中小企業は。 ●伝統のある企業であれ、老舗であれ、長い年月の間にはいくたびかのピンチ があったはずだ。長年永続している会社は、企業は、それを乗り越えてきた。 伝統とは革新の連続とは、よく言ったもので、これは「とらや黒川家」の家憲 になっているが、まさにその通りだ。特に中小企業では、トップの意向次第 で、企業の方向性は大きく変わる。船の船長の号令、命令と同じで、右に舵を 切れば大きく船の針路は変わる。いったん舵を切ると、なかなか元に戻すのは やっかいだ。 ●創業して時間があまり経っていない企業は、創業の想いが生きているから、 当初は活気があり、元気だ。活力もあり、どんどん前に進もうとする。モティ ベーションが高いから、結果を気にせず、ひたすら前を向いている。内部での 抗争も、内輪もめしている暇がないから、そのままどんどん前に進む。反省は 必要だが、とにかく一途に創業した企業を何とか続けて行こうとする。創業の 理念に基づき、どんどん新しいことにも挑戦する。社内に活気がみなぎってい る。 <ところが結果がいいと慢心する> ●創業後、数年のうちに業績が向上すると、自分たちが偉いと錯覚する。市場 の、顧客の評価がそれなりにあったからこその結果なのだが、自分たちがすご かった、偉かったと慢心する。勘違いする。そして、規模の拡大、膨張に走 る。女性の事務職も、3名でなんとかぎりぎりやっていたのを、5名必要と錯 覚する。建物のも、もっと大きな広い場所が必要だと勘違いする。そして、人 員は増大し、事務所は大きなビルに引越し、あげくには自社ビルを買い取った り、建てたりする。 ●管理部門の人員が増えたり、本社ビルが大きくなっても、それが顧客価値の 増加に本当につながるのか?誰も、そういうことは考えずに、ひたすら自分た ちが中心の価値判断になる。もっと売上を上げるにはどうするか、利益を増大 させるにはどうすればいいか。利益と売上が先行し、創業の想いや経営理念の 実現などは、完全にお題目になる。いや、経営理念の策定すらやらない企業が 多い。行け行けどんどんのときはいいが、一端つまずくと土台が脆弱なだけ に、弱い。 ●この辺りでトップが揺らぎだす。資金が窮屈になり、さらに売上を無理やり 伸ばそうとする。売上を伸ばすには、先に資金が必要だという大原則をご存じ ない。それまでに得た資金は、無駄なものに投資したり、固定資産を増やした り、遊興的な費用に消えたりしている。少しでも社員の教育や、将来の先行投 資に向けられていたら、ずいぶんと結果は違ったのに。確かに、企業経営の原 則は、しっかり儲けて、しっかり使うことだが、その使い道を勘違いしてい る。 <修正するときには勇気が要る> ●一度狂った歯車を修正するには、時間もかかるしエネルギーもかかる。まし て、トップの決断、勇気が要る。それは、裏返せば自らの否定につながる可能 性もある。自己批判、自己反省、懺悔をしないといけない。当社のオフィスに 来て頂いて、ようやく反省することが出発点だと分かり、そこから始まるケー スも多い。これは、今後時間がかかる。もっとも、ご自分でわかっていらっ しゃる企業のトップは相談にも来られないかもしれないが。しかし、トップが 一歩を踏み出さないと、何も変わらない。 ●新しい取り組みをしたり、合理化の努力をしていないから、ずっと方法が進 化していない。旧態依然とした方法でやっている。さて、では何とかしようと 思っても、それからでは時間がかかる。即効性のある体制には、すぐにはでき ない。それに比べて、社長自らが勉強し直し、大学院の博士課程に入られた企 業のトップにもお目にかかった。その勉強された技術、大学との連携した結果 が、現在の企業の業績にも今後大きく寄与することは間違いない。いまは、ま だ時間がかかるが結果は早晩見えてくる。 ●逆の方向に走るのと、正しい方向にゆっくりでもいいから走るのとでは、数 年経てば大きく結果は異なる。何がその違いを生んだのか。それは、好調時期 でのトップの危機感だ。結果がいいことを錯覚し、自らの力でできたのだと慢 心する企業やトップと、このまま好調が続くはずがない、いつかは業績が低迷 すると読んで、はやくから次の技術開発に取り組まれた企業との差が、ここで 大きくついてくる。もう、先行している企業の背中は、はるかかなたに引き離 されている。 <変わるために早く一歩を踏み出す> ●業績が低迷し、資金繰りが難しく、継続が困難な企業のトップほど、みかけ 明るく脳天気なことが多い。脳天気は言いすぎなら、楽観的な方が多い。業績 が安定している企業のトップほど、危機感がある。何か始めないといけないと いう切迫感がある。資金繰りも何とかなるだろうと、思い違いをしているトッ プの方も多い。今月は、まだ金融機関に返済をしていない、社会保険料の滞納 もしていると、堂々と開き直っておっしゃる企業のトップもある。何か勘違い されているとしか、思えない。 ●確かに会社を変えていくには、時間もエネルギーもかかる。今日号令して、 明日から見違えるように変わるわけがない。身体に染み付いたものをそぎ落と して、新しい皮袋にお酒を入れ替えるには、相当な時間がかかる。コストもか かる。しかし、逡巡しためらっていては、時間がかかるだけだ。こういう方向 だと決心すれば、一直線に進むことだ。じっとしていると、そのうちにご臨終 を迎えることになる。祇園祭だ、宵山だと言っている場合ではない。一日も早 く、一刻も早く一歩を踏み出す。 ●そのお手伝いをすることが多いが、トップに理解をしていただき、まず自分 の決心を固めてもらい、それを内外に表明して、変えていく方法をみんなで知 恵を出し合って、実行に移す。そして、結果が出る。かなりの時間を要するこ とは、十分に理解できるだろう。しかし、今すぐに取り掛からないと、時間は 待ってくれない。金融機関も待ってくれない。いや、市場が待ってくれない。 その間に、業績好調の企業のトップは、着々と次の手を打っている。じっとし ている間にも、どんどん差は開く。ぼやぼやしている場合ではない。