□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第283回配信分2009年09月28発行 経営はスローガンでは成り立たない 〜問われる実行力、工程表を作成する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●鳩山政権の実行力が問われている。マニフェストでは、いっぱいいいことが 書いてあった。さて、では実際どれくらいのことが、本当にできるのだろう か。みんな半信半疑のところがある。しかし、出だしはなかなかやるなあ、と いうのが正直な印象だ。従来の慣習、方法をいきなり変えるのは、確かに難し い。しかし、今まで難しい、難しいと言いながら、そのまま放置していた。誰 も痛みを感じなかった。実際には、国の借金はむちゃくちゃに膨れ上がった。 さて、その膨大な借金を今から返さないといけない。 ●さて、マニフェストでは「工程表」ということばが重要な意味を持ってい た。「工程表」とは誰が、いつまでに、何をやるかというタイムスケジュール を記述したものだ。民間企業なら、しごく当たり前のことが、政治の世界では 非常に珍しいのだろうか。事業計画であれ、経営革新計画であれ、再生計画で あれ、計画とは必ず、誰が、いつまでに、何をということが書いていないとい けない。普通は、5W2Hの理屈で、どうやってとかいくらかかるとかも検討す るのだが、まずは、いつまでにが重要だ。 ●いつまでにが書いていないと、優先順位が分からない。最終仕上がり期限に よっては、非常に緊急性が高いかもしれないし、ゆっくりやればいいかもしれ ない。とにかく、重要なのは、期限がいつに切られているかということだ。明 日なら大慌てだし、12月末なら3ヶ月ある。3月末なら6ヶ月ある。それな ら、方法も手段も、メンバーも変わってくる。至極当然の話だが、この期限が 明確になっていないことによって、関連する部署、メンバーの意識の程度が全 然違ってくる。意外とそれが意識されていない。 <問われる実行力> ●営業の部門などでは、スローガン的なテーマが多い。具体的でないことが多 い。希望的な観測で、こうありたいということが並んでいるのはいいが、本当 にそれを実際に実行するという前提の内容になっていない。こうありたい、こ うであればいいということは分かるが、では本当にその内容を実行し、結果を 出すためには、いつまでに、何をという具体的な課題が見えていない場合が多 い。気持ちは分かるが、その課題が明確になっていないと、計画にならない。 気持ちだけでは結果はでないし、経営にならない。 ●会議があるから、トップから質問されるから、さてどうしたもんだろうかと 考えているようでは、実は遅い。日頃から、さてこの課題に関しては、どうし ようかと一生懸命考えていて、初めて何か解決の糸口が見えてくるものだ。悩 んでいないと、道は見えない。悩んでいると、何か見えるものからヒントを感 じ取れるものだ。神様は正直なもので、チャンスは公平に与えている。それに 気がつくか、つかないかだ。見過ごしたり、見逃している人と、わすかなヒン トでも、自分のものにしようと思っている人ほと差は大きい。 ●課題が見えてきて、優先順位もおおよそ見当がついたら、次は、さてどう やってそれをやり切るかだ。ここで問われるのは実行力だ。口ではすごいこと を言う人は多いが(政治家には特に多いが)、本当にそれをやり切る人は少な い。また、本当にやり切る人は、あまり公言しない。むしろ、こつこつ、ひた ひたとやっている。気が着いたら、大きな結果の差になっている。マラソンで 言えば、少しずつ離されて、10km過ぎたら、1分以上の差がついている。経営 の結果とは、そういうものだ。 <結果を出すには周りの協力> ●周囲の協力がないとぼやく人も多いかもしれないが、それは自分自身に問題 がある。周囲が動くには、動かす情熱が必要だ。他人に自分と同じ想いになっ てもらいには、本当に真剣に必死になって語らないといけない。本当に真剣に この女性と一緒になろうと思えば、必死になって考え、実行するだろう。それ が仕事になると、なぜか他人のせいにする。どこかおかしい。周囲の協力や動 きが悪いとぼやく前に、まず、自分自身からのアピール、説明、お願い、必死 さが足りないのではないか。 ●誤解があるのは、すぐに分かってもらえると錯覚していることだ。なかなか 他人が、その人と同じ土俵に上がり、同じ想いになるには、相当な壁があると 覚悟してかからないといけない。実行力のある人は、もちろん自分自身のエネ ルギーもあるが、他人を動かすことのできる能力がある。言葉でもいいし、態 度でもいい。無言の行動でもいい。相手をその気にさすには、相当なエネル ギーが要ることを覚悟しないといけない。途中で投げ出すような計画なら、初 めから言わないほうがましだ。 ●一度口に出したことは、最後までやり遂げる勇気を持つことだ。意思がない といけない。なぜかラッキーで、たまたまうまくいったということもあるだろ うが、ラッキーも実力のうちだ。バットを振らないと前に飛ばないのと同じ で、何か発言、発表、行動がないと、ことは何も動かない。結果が出ないの は、やはり厳しく言えば、本当にその課題を達成する気持ちが、まだしっかり していないのだろう。本当に悩んでいないのだろう。まあ、結果が出なくて も、誰にも何も言われないと、たかをくくっていると、最後まで結果は出な い。 <過程も大事だが結果で示す> ●経営者のリーダーシップとは、 (1)方向付けを行い (2)適性に経営資源を振り向け (3)自ら先頭に立って全員の気持ちをひとつにまとめる ということを毎日、毎日現実のこととして実行することだ。会議の席だけのこ とではない。会議であろうと、なかろうと、朝礼であろうと、終礼であろう と、とにかく、24時間365日そういうことをずっと考え、ひたひたと実行しな いといけない。正直なところ、結構疲れるし、くたびれるかもしれない。 ●しかし、背中に背負っている荷物は重たい。従業員だけではない。その家 族、取引先、利害関係者などの周辺を加えると、小さな規模の会社でも多くの 影響を与える人が存在する。何より、一番は会社に所属している従業員とその 家族だ。そのことを考えると、恐ろしくなるとおっしゃった経営者の方がい らっしゃったが、まさにその通りだ。一歩踏み出したからには、企業は継続す ることが一番大事だ。継続し、存続していかないといけない。そのためには、 トップに一番大事なのは実行力だ。やって結果を出さないといけない。 ●プロの選手は、試合以外のところで本当に節制、努力している人も多い。プ ロのスポーツの試合を見に行くなら、ぜひ試合前の練習をウオッチすることが 大事だ。試合前にどういうトレーニングをしているか。準備はどうしている か。ストレッチだけで1時間くらいやる選手は多い。それを原則として、徹底 して反復する。移動があっても、環境が変わっても、ひたすらそれを信じて繰 り返す。その過程は、表面では見えないが、見えないところの努力が大事なの だ。最後は結果を出さないと、評価されないのだから。