□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第287回配信分2009年10月26日発行 一度こけてもまた立ち上がる勇気が大事 〜応援のかいなく大分トリニータJ2降格〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●やっぱりというか、とうとうというか。遂に来るべきときがやってきた。昨 日の夜、京都の西京極スタジアムであった、大分トリニータと京都サンガとの J1サッカーの試合は、1対1の引き分けに終わり、とうとう大分トリニータ のJ2降格が決定した。あと、まだ数試合残してはいるが、J1サッカーリーグ は厳しくて、下位の3チームは自動的に下部のJ2リーグに降格となる。入れ 替え戦などはなく、否応なく無慈悲な制度なのだ。またそれがリーグを活性化 し、面白くしている理由でもあるが。 ●あと数試合残してはいるが、この試合に全部勝ってそれぞれに勝ち点3を積 み上げても、下位3チームからは抜け出せない。ということで、自動的に数試 合残してJ2への降格が決定してしまった。昨日は、京都の地元京都サンガと の対戦で、地元のサンガファンは大勢詰めかけていた。しかし、そこはプロの 試合だ。この試合に負けたら降格が決定することは分かってはいたが、それは 容赦なく戦った。そして、お互いにチャンスはあったが、結果的にドロー引き 分けとなった。 ●成岡は、たまたま大分トリニータ球団の社長をしている溝畑宏氏とは中学高 校の同窓で、年齢は9つ彼が下だが中学で野球部に在籍していたご縁があり、 数年前に同窓会の機関誌の編集長をしていたときに、大分へ電話取材をしたこ とがきっかけでお付き合いが始まった。以来、自治省官僚から転身した異色の 経営者として、親しみを感じて何かとお付き合いをしていた。そして、昨年は ナビスコカップで優勝し、大分の田舎のチームが日本一に輝いたというドリー ムをやってのけたとして、非常に話題になったのだ。 <ところが今年は一転して地獄へ> ●そして、今年の6月に大阪で弊社の特別講演会を行った際に、たまたま日程 の都合がついて特別講演を引き受けてもらった。遠方の大分からわざわざ来て もらって、熱い講演を1時間半してもらった。このメールマガジンの読者に も、当日ご来場いただいた方が、多くいらっしゃる。そのときは、連敗はして いたが、まだチャンスもあったし、望みもあった。逆転満塁ホームランの可能 性も残されていた。あと、頑張れば何とか残留することも、夢ではなかった。 しかし、昨日の敗戦でその可能性も消えた。 ●6月の講演をはさんで、神戸でビッセル神戸との試合、講演のあと8月に万 博球場でガンバ大阪との試合も応援に行ったが、どちらも負けた。だから、昨 晩も、成岡が応援に行くといままで勝っていないから、なんとなくいやな感じ はしたが、しかし地元京都の開催なので、ここは一番頑張ってもらわないとい けないということで、やりくりして応援にかけつけた。来賓関係者席には、少 しむこうのサンガ関係者席には、京セラ名誉会長の稲盛さんの姿もあった。ま た、成岡の数名の友人の方々も応援に来てくれた。 ●しかし、結果は引き分け。前半の早い時間帯に先に得点し、同点には追いつ かれたが、相手が反則退場者を出して1名多い人数での戦いだった。前半45分 は1対1。後半になってもチャンスはあるが、決定力がなく、逆にカウンター を食らってしばし危ない場面も多くあった。そして、後半の45分が終了し、敗 戦。なんとも虚脱感が襲う、空しい時間となってしまった。最後まで、溝畑氏 と二人並んで応援に声をからしてはみたものの、結果は結果。現実は現実だ。 甘んじて受け入れるしかない。 <天皇杯と来期に期待> ●終了後、溝畑氏はグランドに降りていったので、声のかけようもなく別れ た。そして、応援に来てくれていた知人の3名と、少し離れた場所で残念会の アルコールとなった。我々はアルコールで忘れても、当事者たちの心痛は大変 だ。J2に降格になると、もちろん来年の復帰の可能性はあるが、J2の上位3 位以内に入らないといけない。大分トリニータは実は過去にも、一度J2降格 を経験している。いや、地元京都サンガも数回、J1とJ2を行ったり来たりし ている。それくらいだから、何も完全に悲嘆する必要はない。 ●しかし、経営問題となると別問題だろう。スポンサーは離れていくし、ファ ンも離れていく。地元からの支援も少なくなる可能性がある。熱狂的なファン は、それでも離れないが、当然TVの中継はなくなるし、広告効果も激減する。 入場料収入も少なくなるし、やりくりは大変だ。ただでさえ、地方のスポーツ 球団の経営は楽ではない。本当に、地元のボランティアに支えられて運営され ている。地域密着といえば聞こえはいいが、現実には大変な努力が要る。東京 や大都市では想像できない。 ●しかし、球団に限らず経営にはリスクがつきものだし、好調と不調は隣り合 わせだ。売上の10%くらいの上下は当然のごとく日常茶飯事で起こることだ。 ときには、大きなピンチもやってくる。環境の激変もある。円レートの乱高下 もある。いちいち文句を言っても始まらない。起こったことは現実のことだか ら、まずそれを真摯に受け止め、次に立ち上がるしかない。こけたままで、立 ち上がれないのが一番悲しいし、情けないのだ。こけたことは恥ずかしくもな んともない。いくらでもあるのだ。 <しっかり反省しリベンジを> ●起こった結果を悔やんでも仕方ない。しっかり反省し、来期のリベンジを誓 うことだ。後悔をしても仕方ないが、反省は必要だ。昨年ナビスコカップに優 勝してから、いったい何がどうおかしかったのか。慢心があったのか。選手強 化の方向が間違っていたのか。成岡はサッカーの戦術的には素人だが、球団経 営は別だ。経営的にどこがどうだったのか。そこに、これから再起をかけるヒ ントがあるはずだ。ピンチのときに、逆境のときに力になってくれる人が、本 当の支援者だ。調子のいいときには大勢が集まるが。 ●苦しいときにこそ、力になれること。これが本当のサポーターだ。にわかサ ポーターはそうはいかない。会社でも、船が傾き沈みかかってくると、真っ先 に逃げ出す人がいる。いや、逃げ出すときに先に多くの荷物を持って出ようと する人がいる。一度、そういう修羅場を経験すると分かるが、人間は逆境のと きにこそ、その本性が見えるものだ。成岡も、以前経営者で会社の破綻を経験 した。地獄を一度見ると、ものの考え方が変わるものだ。反省をしっかりし て、次の再起にかけることだ。 ●まだリーグは終わっていないし、天皇杯も途中だ。ここで降格が決まったか らといって、諦める必要はない。残りの試合を全部勝ち抜くことだ。天皇杯は トーナメントだから、これも何が起こるかわからない。当然、モティベーショ ンは下がるだろうが、ここで茫然自失になることはない。残りの全勝と天皇杯 を取って、見返してやるくらいの気力を出さないといけない。それが、ここま で支えてくれたサポーターとスポンサーへの恩返しだろう。転んでも、また、 立ち上がって歩き出せばいいのだ。必ず結果はついてくる。