□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第300回配信分2010年01月25日発行300回記念号 事業承継成功の秘訣シリーズその2 〜大事な意思決定の場面を共有し解説する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●現在の経営者から、次世代の経営者にバトンタッチするときに、一番やって ほしいことは、この「大事な意思決定の場面に同席する」ことと、「どうして トップがそのように意思決定したのかを共有すること」の2点なのだ。このこ とが、日常数多く共有できると、会社や経営トップの哲学、経営理念、重要な 意思決定の思考回路などが、きちんと次世代に受け継がれる。そうなると、強 固な経営基盤が築かれ、磐石の態勢に向けて、好発進がきれることが多い。い や、必ずやってほしいことのひとつだ。 ●大事な意思決定とはどういう場面であるのか。 (1)新規の大型設備投資の可否の決定 (2)幹部の採用面接 (3)新製品、新商品の開発ゴーサイン (4)他社との提携、アライアンスの決定 (5)新製品商品の発売決定 (6)金融機関との大型融資交渉 (7)株式上場へ向けた体制づくりの決定 などがあるだろう。いや、もっと他にも大事な意思決定の場面はあるかもしれ ない。ここで、何があるとかないとかが問題なのではなく、そういう場面に、 社長が後継者をきちんと同席させることが大事なのだ。 ●同席しただけでは、あまり意味がない。事前に、今回の案件の背景、経過、 理由、自分の意見などをきちんと説明する。また、当日の現場にも立ち会わせ る。そして、結論が出ていろいろなことが決着がついた時点で、さらにその結 論に至った理由や根拠などを説明することが大事だ。その説明がないと、どう してトップがそういう結論を出したのか分からない。結論の是非は別にして、 そこに至る経過、思考のプロセスなどが重要なのだ。経緯や過程を共有するこ とから、社長の意思決定の仕組みが見えてくる。 <事後に聞いても分からない> ●現場に立ち会うことは、非常に意味があり重要なことだ。その臨場感を感じ ることもさることながら、その場その場での局面の転換、変化、誰がどの場面 でどう発言したか、それに対して社長はどういうアクションを起こしたか。返 事の中味、対応の順番、見せた資料、後日への宿題など、会話の中味をたどる と非常に濃いものがある。臨場感のない後日に聞いても、その雰囲気も分から なければ、実感もつかめない。所詮、報告書を読んでいるだけのようなもの だ。それでは意味がない。 ●面談のあと、会食という場合もある。またそこで重要な会話ややりとりがあ る。誰がどこに座って、どういうメンバーで、どういう会話になったか。その 会話の中に、今後の大方針に関わる重要な内容があったか。そして、終わり方 はどうだったか。お酒の飲み方はどうしたのか。接待を受けるときに、心がけ ておかないといけないことは何か。どういうことに注意しながら、気配り、目 配りをしないといけないか。話してはいけないことと、突っ込まないといけな いこととの区別をどこでどうするのか。 ●翌日のフォローをどうするのか。その後詰めることは何か。スタッフに指示 することは、いつ、どういう風に伝えるのか。依頼する相手によって、どこが 重要で、どこにポイントがあるのか。結果の報告を、どう求めるのか。面談の 先方に、いつ頃どういう返事をするのか。簡単に返事をしていいのか、しばら く時間を置いた方がいいのか。その作戦の分かれ目は、どこか・・・。重要な 案件であればあるほど、事後の後始末も慎重にやらないといけない。 <どうしてそういう判断をしたのかが大事> ●実は、社長という立場にはなってみないと分からないことが、山ほどある。 給料をもらう立場と、払う立場の違いだ。本当のトップになると、実は考えな いといけない条件が、以前の立場の2乗くらいの分量違うと感じる。とにか く、いい、悪いは別にして、ほとんどあらゆる情報がトップに集中する。そし て、配慮、考慮しないといけない条件が、山のごとくある。その条件を検討し たうえで、最終の意思決定を行う。同じ情報を共有していないと、どうしてそ ういう結論に至ったのか、本当に分からない。 ●ところが、この山のごとくある情報から、その意思決定に関わる情報をうま く抜き出して、それを伝えてから意思決定の背景の説明をしないといけないの だ。しかし、たいていこの面倒な解説を省略する、あるいは手短過ぎて分から ないことが多い。よって、社長の最終決断が、なかなか後継者に理解できな い。同族会社では、親戚、一族との問題もあるだろう。取引先とでは、従来か らの水面下でのいろいろなことも関係する。ことは、そう単純ではない。お金 が絡むと、もっと事情は複雑になる。 ●すべての背景を伝えることは、事実上不可能だが、大きく影響を与えた要因 はきちんと伝えないといけない。しかし、見ていると社内、社外を問わず親子 の間で、本当に社内で真剣にこういう会話がなされていることを、ほとんど見 ない。お互い忙しいのか、照れくさいのか、周囲を気にしすぎなのか、とにか くまともに向き合って、社長と後継者がきちんと会話しているのは、あまりお 見かけしない。まして、私生活は別々というケースが多いから、会社を離れる と、もっとそういうチャンスは少なくなる。 <事業承継はコミュニケーション> ●一番多いケースの親子間での事業承継は、単純そうに見えて、実は結構障害 が多い。もちろん、資産や負債の相続にも絡むが、一番大事な会社の重要な意 思決定の引継ぎが、あまり出来ていない。もちろん、親子や親族、同族との関 係と、社内での位置関係が混同され、ごちゃごちゃになっていることが多い。 特に、現在の経営者、社長の頭の中で切り分けが出来ていない。こういう会話 は、下のポジションの者からは、言いにくい。上位の者が配慮して、すること なのだ。 ●会社の経営にとって重要な意思決定の経過や背景、その理由、動機などの説 明が十分に伝わっていないと、その後たいていどこか亀裂が入ることになる。 人間の場合は、社長がリクルートしてきた古参の人材と、次代の後継者との間 で摩擦やきしみを生じる。下手をすると、社内で派閥が生まれることにもなり かねない。設備投資した機械に関しては、後継者が全然活用しないというこに もつながる。先代の遺産や遺物ということに評価が定まる。いったんそうなる と、復活は容易ではない。 ●いままで、いろいろなケースを見てきたが、いずれのケースも要因は会話、 すなわちコミュニケーション不足が最大の原因だ。これは、お互いに責任があ るが、割合で言うと、6分4分で現社長の責任の方が重たい。重要な場面に立 ち会ってもらい、終わってから仔細に説明と解説をする。事前のレクチャーを 十分にする。同席する環境を整える。その日、その時間の直前になって、立ち 会えといっても、ネガティブになるだけだ。出来る限り、相手の立場に立って 配慮をすることが、相互信頼につながる。