□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第302回配信分2010年02月08日発行 事業承継成功の秘訣シリーズその4 〜創業社長の第二の道を準備する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●実力創業社長から、二代目へのバトンタッチは難しい。まず、現在の社長が 創業者であること。創業者というのは、非常に苦労をされて現在の会社に育て たという、プライド、自負、自信などが山盛り、その心の中にある。そういう 社長が、次にバトンタッチする後継者=息子さんが多いだろうが、果たして後 継者と見ているだろうか。まだまだ、頼りない息子と見ていないか。そういう 気持ちが心のどこかにあると、経営者から後継者への経営の承継と言う形にな らない。いつまで経っても、頼りない息子と見ている。 ●次に、やはりバトンタッチしてからの自分のポジションが見出せない。いま まで、一生懸命走ってきた。いい、悪いは別にして、人生は会社そのものだっ た。家庭や趣味もあっただろうが、それは多少余裕が出てきてからのことだ。 30代、40代、50代は、とにかく一生懸命、わき目もふらずに走ってきた。そん な人生だから、さあこれからどうするかと言われても、はたと困る。仕事や会 社を取り上げたら、何が残るのか。そんな人生はつまらないと言われる方は、 中小企業の経営が分かっていない。 ●とにかく、創業して会社を軌道に乗せるには、大変な努力が必要なのだ。お 金、人材、仕事、取引先、社員、銀行、その他あらゆることが、会社の経営に 関係する。そして、その色々な困難を、何とか克服して、30年くらいやってこ れた。銀行に頭を下げ、いやなことを言われても、ひたすら我慢して頑張っ た。そして、毎年、毎年、いろいろなことが起こったが、何とか切り抜けてき た。人生は会社と同じなのだ。その手塩にかけて大きくした会社の経営から、 引退するわけだ。後ろ髪を引かれないはずがない。未練たっぷりだろう。 <引退社長の次のモティベーションを作る> ●永年勤務した会社を定年退職するサラリーマンも同じだ。最近は、60歳定年 以降も嘱託などで契約的に勤務する方も多くなってはいる。しかし、多額の退 職金をもらって、悠々自適で過ごす方は、一握りだ。最近は、年金も60歳では もらえないから、どうしても少しは働く人も多い。やはり、40年間ずっと勤め た組織から離れるのは、心情的に非常にさみしいものだ。日本人は、特に企業 や組織に永年忠誠を誓って勤務する習慣がまだあるから、その所属した組織を 離れるのは、非常に辛いものだろう。 ●まして、自分でいちから興して創業した社長にしてみれば、いくら息子がい るからと言って、はいそうですか、と簡単に後進に道を譲るというのは、なか なか難しい。病気やそれ以外の理由で、体力、気力が持たなくなった社長はい ざ知らず、まだ65歳前後だと非常に元気な社長も、多い。そうなると、やっか いだ。自分で自らリタイアを言い出していただければいいが、70歳になっても まだ超元気で頑張る社長さんも多い。そうなると、簡単にバトンタッチができ ない。周囲から、首に鈴をつけるいやな役目は、誰も引き受けない。 ●バトンタッチした後、どういうポジションで、どういう役割を担って、モ ティベーションを維持するかは、結構難題だ。大企業だと、会長職になっても それなりに役割があり、業界団体の役員やトップを務められる方も多い。そう いう立場が用意されていればいいが、中小企業レベルでは、そうはいかない。 まして、その年齢、立場から、また新しいことを始めるというのも、結構しん どい。大学に入りなおすとか、違う勉強をするとか、ボランティア活動をする とか、社会貢献の事業をするとか。 <ご本人も次のミッションを考えておく> ●周囲が気を遣って、次の道を用意するのも、そうかもしれないが基本的には 自分の問題なのだ。自分が、自分で考えて、決めるべきことだ。それが、周囲 が何かやってくれるだろう、準備してくれるだろう、それは甘い。もし、会社 の経営状態がそんなに順調でないなら、何らかの立場で次の社長をサポートす ることも、当然だ。人脈や過去の業績を最大限利用、活用して、社業のさらな る発展に寄与する。これが、一番当然のことだ。社長との役割分担をきちんと 決めておけば、何とか調整できるはずだ。 ●あるいは、業界にお世話になったということで、業界の役職を引き受ける。 半分ボランティアでもいいから、とにかく業界の発展に微力ながら尽くす。あ るいは、全然異なる業界、世界に飛び込んで、そこで今まで気が付かなかった 自分を発見する。しかし、このケースは結構パワーも要るし、エネルギーも要 る。人間は、新しいことをするには、相当なエネルギーを費やすから、新しい 世界に飛び込むには、相当勇気と決断が要る。よって、なかなか頭では理解で きていても、そうは簡単に身体と心はついて来ない。 ●65歳以上70歳近くになってから、さあ何か習い事というのも、結構大変だ。 アート系の習い事なら何とかなるかもしれないが、ビジネス系の習い事なら、 もっと大変だ。やはり、目的が明確で、気力、体力がないと、なかなか継続は 難しい。ということは、自分にフィットする、あるいはフィットするだろう次 の課題を、テーマを事前に見つけておくことが重要だ。それは、おそらく現業 のビジネスとはあまり離れた島のことではないだろう。比較的近いところで、 かつ、社業に間接的に貢献できることが好ましい。 <本来ビジネスに定年はない> ●事業承継と創業社長との関係で、定年という考え方は当てはまらない。成岡 の尊敬する大先輩の医者の日野原重明先生は、いまだ90歳を超えてなお現役 だ。毎年、毎年、何か新しいことを始めている。いまだに聖路加病院の理事長 や役職を多くされている。明治生まれの現役の方は、他に存じ上げない。こう いう人は例外だろうが、気力、体力は年齢に関係ない。モティベーションが下 がった瞬間に、気力、体力が落ちるものだ。そいう意味で、創業社長のポジ ションを変えることは、老化につながる。 ●一方で老害ということばもある。自民党でも70歳定年という大英断をした。 あくまでも現役にしがみつくのは良くない。自己の利益や名声などに固執し、 その延命を図ろうとする。それは、まさしく害にこそなれ、益にはならない。 会社を、組織を個人商店の延長と思うからそういう発想になるのだ。会社は、 出発は個人商店かもしれないが、従業員を雇い、地域経済に関わる存在になれ ば、立派な公器だ。従業員がいれば、取引先があれば、顧客がいれば、会社は 永遠の存在でなければならない。 ●永遠の存在であるためには、自分の今後はどうすれば一番会社に貢献できる のか。その一点から考えると、自ずと答えの選択肢は限られてくるはずだ。む しろ、早めに後進に道を譲り、次のバージョンにエネルギーを投下する。い ま、人生80年以上だから、60歳くらいから次の選択肢を考えて、トライするく らいの気力、体力があって当然だ。お金がかかる、かからないは別として、 せっかくの今までの経験、ノウハウを社会に還元していただく方法は、あるは ずだ。本人も、周囲もそれを早く考えないといけない。