□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第308回配信分2010年03月22日発行 中小企業再生の共通項シリーズ(その3) 〜再生の事業計画は実現可能性が重要〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●金融機関から融資の条件変更のために、新しく事業計画を提出しなさいと言 われている企業も多いかもしれない。筆者の周辺でも、過去に一度もそんなこ とを言われたことがない企業は、珍しいのではなかろうか。いまや、条件変更 は当たり前。以前と同じような返済条件で、ばっちりやれている企業は、本当 に少ない。みんな、何らかのキズを背負って、四苦八苦しながら凌いでいる。 凌げているうちはいいが、段々売上が落ちてくる。業績も悪くなる。資金繰り に赤信号が灯る。さあ、大変だとなる。 ●何とか売上を増やそうとするが、このデフレのご時世でそう簡単に売上が増 えるとは思えない。そもそも、今までずっとジリ貧で来た企業が、急に金融機 関に言われたから、売上が増えていく計画を持っていくこと自体が、おかし い。根拠があればいいが、何とか頑張りますというしかない内容であれば、本 当にそれが実現する可能性はあるのか。その確率は高いのか。事業はやってみ なくては分からないことは百も承知だが、それでも客観的な材料はあるのか。 なければ、本当に実現するのか。 ●根拠のない希望的観測で書かれている事業計画、再生計画ほど怖いものはな い。いったん、希望的な前提が狂うと、低落傾向に歯止めがかからない。やは り、売上が増加するというのは、大きな季節変動要因は別にして、何らかの背 景、根拠、理由があるはずだ。新製品がようやく発売開始になったとか、来月 メディアや媒体に掲載されるとか、かなりの数のダイレクトメールを打つ予定 があるとか、延び延びになっていた大手からの発注があるとか。それなりの根 拠がないとおかしい。 <急に新しいことの結果が出ることはまれ> ●BSの改善はさておき、PLだけの改善であるなら、売上が増加するか、変動費 が下がるか、固定費が下がるか、この3つの選択肢しかない。あるいは、これ の組み合わせだ。特に、経営者の方は売上が増加する選択肢を考えられること が多いが、売上を増加さすには先行して、お金が先に要ることが多い。自然に 勝手に売上が増加する計画は、よほど脳天気な計画だということになる。今ま で、さんざん苦労して四苦八苦して数字を作ってきた企業が、金融機関に要請 されたから、では売上が増加するか。 ●過去の3年間を並べてみればいい。ずっと長期低落傾向に歯止めがかかって いないはずだ。それでもじっとしていたわけではない。効果があったかなかっ たかは別として、何らかの対策は取ったはずだ。何らかのアクションはしてみ た。何らかの手は打ってみた。効果の大小は別にして、一応売上の減少を止め る手立てはやってみた。それでもうまくいかない。デフレ傾向に歯止めがかか らない。量の減少と単価の下落が両方同時に進行する。百貨店の売上の減少が 止まらない理由だ。 ●急にアクションをとっても、そう簡単に売上は増加しない。本当に一過性に バーゲンセールは有り得るだろうが、それも数ヶ月は続かない。何か起死回生 の妙薬はないかと探しても、そんなおいしい話しがいくつも転がっているはず がない。おいしい話しには、多くの企業がわっと群がる。レッドオーシャンの 血みどろの戦いになる。限りなきコスト競争になり、体力勝負になる。そうな ると、中小企業は非常に弱い。辛い選択だが、その市場からは撤退した方がい いかもしれない。かように急に売上は増えない。 <過去から方向性を決めて準備をしてきたか> ●数年前から準備してきたタネがようやく芽を出す。暖めていた構想が、何と か形になってくる。じっと我慢して継続してきた事業が、ようやく多少ものに なってくる。もちろん、事業だからラッキーもあるが、ラッキーも実力のうち だ。勇気を持って進んだから、ラッキーが起こる。進んでいないで退歩してい たら、ラッキーも起こらない。3年前、5年前から苦しい中、少しずつ投資を してきた案件がようやく現実のものとなる。新卒採用の人材がやっと戦力にな る。毎年継続してきた教育が効果が出る。 ●本当にひらめきと実力と行動力と資本のある企業は別だが、普通の中小企業 ではそんな爆発力は、あまり期待できない。むしろ、地道にこつこつ研究した り、開発したり、人脈を増やしたり、口コミで拡げたり、継続してきた間違い ない対策が、行動がやっと段々実を結ぶ。そしてそれが社会の世間の評価を得 て、やっと売上に結びつく。それくらい辛抱も必要だ。成功するまで、実現す るまで執念で頑張ってきた努力が、ようやく実を結ぶ。バブルの時代ではない から、突然にフィーバーはない。 ●また地価が下がっている。一向にデフレの傾向は改善しない。しかし、すべ て価格下落かといえば、そうでもない。価値のあるものは、やはり価値がある のだ。安売り競争に巻き込まれず、独自路線で収益を挙げている企業も、結構 ある。自社の戦略をしっかり再検討し、軸のぶれないビジョンを定める。本当 にそれでいいのか、作戦は間違っていないのか。ひたすら会社の将来に想いを 馳せる。そして、決心しないといけない、。これで、うちはやっていくんだ と。間違いないと。そして、その準備を怠らない。 <しっかり考えた計画は実現可能性が高い> ●適当につじつま合わせの数字を並べた計画は、そもそも計画といわないし、 実現可能性が低い。作成した本人も本当に実現すると思っていない。金融機関 に出せといわれたから、作成しましたという内容に過ぎない。本当に自分が実 行して、結果を出すんだという意思が感じられない。そういう計画は、単にエ クセルの表に数字が並んでいるだけになる。見た方も、すぐに分かる。これは 本当に自分で実行するという意思が見えないことを。しっかり考えていない。 単なる数字の作表になる。 ●本当の計画は、必ずしも売上の増加を伴わない。むしろ、売上が減少すると いう場合もある。それが、現実ならそれが正しい。5年間の間には、設備投資 に資金が要るはずだ。特に製造業ではその可能性が高い。中には、資産を売却 して負債を軽くして、支払い金利を少なくして、キャッシュフローを確保する ということも織り込まないと実現しないかもしれない。単に売上の増加で対応 できる場合は、実は少ない。変動費の削減も、仕入を変更したり、材料を変え たりして、何とか少しでも頑張る。 ●もちろん固定費の削減も必要だが、必要な費用まで削減は出来ない。むし ろ、仕組みを変えて無駄な費用の外部流出を止める。作業方法を変えて、時間 当たりの生産性を上げる。それで外部に流出していた費用を減らす。それな ら、実現できるだろう。そういう内容でないと、単なる願望とスローガンの羅 列になる。経営者も、それができないことは承知の事業計画になる。出せとい われたから出しましたでは、洒落にもならない。一番大事なのは、実現の意思 と高い実現可能性なのだ。