□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第310回配信分2010年04月05日発行 中小企業再生の共通項シリーズ(その5) 〜売上アップにはそれなりの準備が必要〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●業績が下降気味になり、売上が低迷し、費用の削減はままならず、原価の高 騰もあって収益が悪化し、赤字が続いて返済のキャッシュフローが出ないとい う企業は、まだまだ中小企業では山ほどある。それも、一過性の原因ならいざ 知らず、数年前から兆候が出ているのに、脳天気の経営者が気が付かず、手遅 れという場合も少なくない。ここまで追い詰められる以前に、どうしてもっと 早く手を打たなかったのかと、悔やまれてならない。時間がない、足りない中 での再生は、非常に難しい。 ●売上が低下し、毎年毎年売上、利益とも減少してきた企業では、会社手持ち の資産を処分してしのいで来た企業が多い。まず、本業の事業に関係ない資産 の売却。不動産ではマンション、賃貸ビルなどを売却する。毎月定期的に家賃 が入り、現金収入では魅力的に見えても、そのための借入金の返済が重たく、 実際にはキャッシュアウトで持ち出しになっている。まして、古い物件ではこ れから修繕、修理、メンテナンスに非常に資金が要ることが、容易に予測でき る。思い切って処分することが先決だ。 ●本業に関係ないなら、早く処分した方がいい。もっと高く売れる、売れると 思っているうちにだんだん価値が下がり、最後には一番初めの引き合いの金額 を大きく下回る金額で、泣く泣く売却することとなる。決断を先延ばしにする と、あまりいい結果は出ないことが多い。不動産の売却は、思い切りが肝心 だ。次に、事業用の資産のうち、あまり直接影響の及ばない資産を処分してい く。遠方の自社物件の支店、駐車場、資材置き場などだ。バブルの時期に購入 した資産も多い。 <売上を伸ばすには準備が必要> ●不要資産の処分と同時に、売上の増加、変動費の削減、固定費の削減を図 る。これは常套手段だ。売上を伸ばすには先行して資金が必要なことが多いか ら、まずは自分の手元足下でできる固定費の削減から取り掛かるのが、普通 だ。とにかく、可能な限りできそうな固定費の削減を考えてみる。あまり、極 端に縮こまるのは後ろ向きになるから、元気が出る要素は残しておかないとい けない。人員削減も仕方ないが、本当に将来必要な人材が退職するのは避けな いといけない。事前に周到な準備が必要だ。 ●変動費は原材料や外注費などが多いが、これも相手があるから簡単には交渉 がまとまらない。特に原材料は輸入材料の場合は、円レートの影響や諸外国の 状況によって変化する。そう簡単にできることではない場合も多い。となる と、売上を伸ばす計画にしたくなるが、業績が次第に悪化している企業で、そ う簡単に売上が伸びることが期待できるか。そんなに簡単にできるなら、今ま で出来ているはずではないか。いまのいまになって、追い詰められて、苦し紛 れの計画では実現は難しい。 ●売上を伸ばすには、相当以前から周到な準備が必要だ。資金も必要だ。簡単 に売れそうなものをどこかから仕入れて、並べてたとえ一時期売れても、あっ という間に他の企業が追随する。自社での付加価値が少ないから、すぐにそれ を凌駕するものが出てくる。賞味期限が短く、短期的に投資してもなかなか回 収できない。独自性が少ないと、先行者利益も少なく、短い。なので、比較的 長い時間収益を確保しようと思えば、相当以前から準備、段取りをして、独自 性を追求しておかないといけない。 <そんなに簡単に結果は出ない> ●昨今のIT技術の進歩で、以前に比べれば技術革新のスピードは格段に上がっ た。営業管理面でも、物流面でも、顧客データの分野でも、以前では考えられ ないような分析が、あっという間にデータが出てくる。ホームページでも24時 間365日全世界に向けて営業活動をしてくれている。しかし、そのシステムを 運営するのは人間だし、いろいろなことを考えてシステムに命令をオーダーす るのも人間なのだ。社員の、従業員の、経営者の価値観が変わらないと、そう 簡単に結果は出ない。 ●筆者が再生をお手伝いしている企業でも、ようやく最近、何とかこの不況の 業界でも生き延びれる結果が出てきた。実に、最初から通算すると10年近くの 年月がかかっている。当初、ものになるかならないかという段階から、いろい ろな試行錯誤を繰り返し、いろいろな人との出会いがあって、最近ようやく事 業が好転しだした。それも、ごく最近だ。ここに来るまで、いろいろなドラマ があったのだが、それを乗り越えて、この事業にひたすらかける経営者の執念 が実りつつある。何とか成功に導きたい。 ●これは極端な例かもしれないが、将来大きく市場が伸びることがあまり期待 できない分野で事業展開をしている企業は、特に急激に売上を伸ばすことは難 しい。できない相談ではないが、相当な努力と時間がかかることを覚悟しない といけない。さきほどの例でも、10年はかかり過ぎかもしれないが、技術的な 課題や、ユーザーのニーズの確認とテストなどを繰り返すなかで、それくらい の時間が必要な場合も、ある。そこをすっ飛ばして、勝手に当方で判断して も、最終的にはうまくいかない。 <慌てないためには日頃から心がけを> ●人間は毎日同じようにやっているほうが楽だ。昨日と今日が同じなら、あま りしんどいと思わない。明日も同じが楽でいい。摩擦や抵抗がないと、車は ずっと転がり続ける「慣性の法則」というのがある。変化をしようと思えば、 相当なエネルギーが必要だ。社員や従業員は、当初相当抵抗があるかも知れな い。役員のみんなが反対するかもしれない。優秀な社員が、愛想を尽かして 去っていくトラブルも可能性はある。金融機関も信じてくれない。そんなマイ ナスの環境でも、会社を変えないと生き残れない。 ●それが出来て初めて売上が改善できる。一過性の売上のアップはできても、 経営には継続性が何より大事なのだ。一時的に出来ても、来月も、再来月も、 さらに来年もそれが継続できるか。天候不順、景気の変動、為替レートの変 動、諸外国の環境変化、政令や法律の改正、政治の激変など、不確定な要因 は、多々ある。そんな激動の環境でも、商売は、ビジネスは継続しないといけ ない。周囲の同業者も、みんなそんなことは、当然考えている。果たして、そ こで生き残れるか。 ●押し詰まってから、煮詰まってから、考えても失礼ながらいい知恵は出てこ ない。出てくる人もあるだろうが、そんな人は少数だ。たいがい、押し詰まら ないと考えない。それが普通だ。しかし、普通では生き残れない。それは企業 の寿命を縮めているだけだ。無意味な延命はかえって傷口を大きくする。夏休 みの宿題は、ぎりぎりに出しても構わないが、企業の再生はそうはいかない。 本当に、真剣に日頃からの心がけが必要だ。急に、42kmのマラソンは走れな い。毎日のランニングが欠かせない。