□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第313回配信分2010年04月26日発行 営業の秘訣とは営業しないこと 〜ファンが増え勝手に増殖する仕組みを作る〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日、新規に飲食店を開業しようと考えている方が新規開店と創業のご相談 に来られた。そこで、2時間ほど話し込んだが、その時点では創業や開業に一 生懸命で、目先のことにばたばたされている。とにかく、資金調達や設備の調 達、什器備品の手配と段取り、室内の改装など、やらないといけないことが いっぱいで、頭がぐるぐる回転し過ぎている。それと、個人事業ではあるが一 応創業になるので、金融機関からの融資の手続きもしないといけない。お盆と 正月が一緒に来たような忙しさだ。 ●忙しいと非常に集中できる人と、注意力が散漫になる人との両方がある。多 忙な人ほど、仕事の効率がいい。集中して、期限のある仕事が多いから短時間 で手早く進める。自分が出来ないと判断したら、さっと周囲の出来る人に仕事 を振る。段取りがいいし、見ていていかにもスムースにことが運ぶ。情報が集 中するようになっているから、仕事の漏れがない。また、誰に何をどういう風 に頼んだら希望の品質のものが納期内にできてくるか、よく分かっている。こ ういう人に頼むと非常に信頼感が高い。 ●一方で仕事は一生懸命やってくれるのだが、なぜか仕上がりが悪い、納期が 遅れる、段取りが悪い、分散し散漫になるという人がいる。人柄は悪くない し、本人も一生懸命だが、うまくクライアントとマッチングしない。途中での 経過報告もなければ、違う方向にどんどん進んでいる。本人は気が付かない。 また、すべてを自分で抱え込み、自分で何とかしようとする。時間がないから 焦る。全部が気になって、すぐに他の仕事に目移りする。集中できないし、す ぐ他の事を始める。注意多動性症候群というやつだ。 <新規開店のときはとにかく数字を追っかけがちになる> ●自己資金が少なくて、資金の大半を金融機関から借入して創業するような場 合、どうしても元金の返済を中心に考えてしまう。金融機関からすれば、当初 の計画から返済が難しい案件には融資できないから、どうしても無理をしたゲ タを履いた計画になる。収入を最大限に見積もり、支出を最小限に見積もる。 誤差が上下で出た場合のギャップは大きい。不要不急のお金も必要になる。だ いたい、すべての費用が先行投資になる。いくら現金商売でも、先に投資が発 生する。 ●なので、どうしても当初から数字を追いかける。何とか目標の一日の売上、 一日の収支を合わそうとする。計画通りいけばご同慶の至りだが、そんなに商 売は簡単ではない。競争相手も多く存在する。無人島の弁当屋なら独占企業だ が、そうはいかない。おっつけ、目先目先の勘定を合わそうと焦る。そして、 どうしても広告宣伝が足りないとか、PR不足とかを感じて、いろいろなところ に露出をするように努力する。特に、何かの媒体などに掲載されると、集客に 大きな効果があると勘違いする。 ●計画通り数字が達成できないと、すぐに計画の修正や路線の変更に走る傾向 が強い。人間は基本的に精神的には弱いから、どうしても易きに流れる。イー ジーなほうに気が向く。辛抱ができなくなり、我慢ができない。こだわりがな くなり、目先目先の課題に目が向く。そうなると、悪いことに周囲からの意見 やアドバイス、忠告に対し耳にふたをすることになる。どんどん自分ひとりの 世界に入り、周囲が見えなくなる、お客さんの声に耳を傾けるより、自分自身 の内面に閉じこもる。 <お店の価値や評価は顧客が決める> ●成岡の持論では、食べ物屋と医者は絶対に自分で宣伝しないことだ。形のな い価値を提供する商売だから、いくら自分で素晴らしい、上手、素敵、完全、 パーフェクトと言っても、極端に言えば誰も信用しない。信用するとすれば、 それは一定のブランド価値が確立している場合だ。創業間もない企業やお店で は、まだブランド価値は確立していない。そんな状態で、いくら宣伝しても無 意味とは言わないが、あまり効果はないだろう。ここはひたすら自社の強力な サポーター、ファンクラブの育成に全精力を投入する。 ●お店の提供するサービスや商品の価値は、自分が決めるのではない。お客さ んが決めるのだ。いくら頑張って広告宣伝しても、看板に偽りありでは、商売 は長続きしない。しないと分かっているが、どうしても目先、目先のことに目 が行ってします。少し遠いところを見て、ゆっくりしっかりスィングすれば、 距離はあまり出なくても、ゴルフボールは真っ直ぐ飛ぶものなのだ。それを、 飛ばしてやろう、飛ばしてやろうと力んでも、真ん中に当らないし、真っ直ぐ 飛ばない。分かっているけど、人間は目先に惑わされる。 ●とにかく、創業間もないときは自分のお店、自分の商売のファンを増やすこ とに全精力を傾ける。その当初のファンが、熱烈なサポーターになって、また ファンを作ってくれる。この、いい循環を継続して繰り返す仕組みを作ること だ。目先、目先の売上で勘定をあわすことも大事だが、将来お店の土台を支え るファンを作ることこそが、お店永続の秘訣なのだ。これは、どんな商売でも 同じ。企業経営でも同じだ。固定客を作り、リピーターを作る。熱烈なファ ン、宗教で言えば信者を作る。 <サポーターがお客さんを連れて来てくれる> ●形のある商品や製品でも同じことだが、とりわけサービスを提供している企 業やお店は、このことが非常に大事だ。食い物やさんなどは、形のある食べ物 を提供しているように一見見えるが、実は形のない価値を提供しているのと同 じだ。形のないサービスだから、必ずしも食べ物だけではない。お店の雰囲 気、お皿、バックの音楽、従業員の接客、マスターとの会話。そして、一番大 事なレジでの最後の応対。この最後の応対で、今後のことが大半決まるとい う。ここで、納得、感心、感激すると、強力なサポーターになってくれる。 ●また、そのサポーターが繰り返しお店に来る、同じ商品を買ってくれる、足 を運んでくれるように仕掛けないといけない。それは、単なる広告宣伝ではな い。むしろ、広告などしないほうがいい。知る人ぞ知るのほうが、本当はい い。一般には知られないが、私は貴重な情報を知っている。そういう情報は人 に教えたくなる。そういうように仕向けることが大事だ。即物的に、値段が安 いことを売り物にしても、それは大手スーパー同士の一騎打ちで、通常のお店 が取り組む戦略ではない。 ●サポーターが営業部長になってくれることだ。お客さんが営業してくれるこ とが、最高の営業なのだ。ドラッカーの言葉を少しもじって言えば、「営業と は営業しないことだ」ということになる。不具合の製品の回収にいち早く取り 組み、その悪い評判を一掃すると、それはそれで非常にファンを増やすことに なる。トラブルを見事に解決すると、お客さんは非常に喜んで満足してくれる ことが多い。そういう本当に心底そのサービスや製品、商品に感激、感動して くれるサポーターが営業部長なのだ。