□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第316回配信分2010年05月17日発行 業績の悪い会社は社長のITレベルが低い 〜社内の活性化はまず社長の足下から〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●業績が芳しくない企業の社長さんの共通項で、ひとつ感じるのはその年齢 だ。おおよそ65歳前後というのが、ひとつの分岐点になっているように感じ る。生まれ年では昭和20年前後になる。団塊の世代より少し前の世代だ。この 世代、年齢の方は、特にITに関する分野では両極端な傾向を示す。つまり、非 常にITに関して造詣が深く、自身でもいろいろとトライされている方々と、も はや自分ではやらないと割り切って、全く取り組まない方々だ。当然、結果と しては前者のほうが、やはりグッドな結果が出ている。 ●Windows95が世に出てから15年。いま65歳の方は当時50歳。50歳といえば、 ばりばりの現役で一番忙しいときだ。社内のランクもかなり上だろう。いま社 長をされている方は、おそらく当時も代表取締役だったに違いない。そうなる と、周囲が黙っていても、こういう社長が不得意な分野は、誰かがカバーする ものだ。また、そうでないと会社は成り立たない。それまでは、そうやって組 織全体でカバーしてきた。全社一丸となって汗をかけば、当然会社へのリター ンも増えるし、個人にも戻ってくる。 ●忙しいのにかまけて、IT特にパソコンを中心とするITスキルアップに真剣に 取り組まなかった。具体的な業務や操作は、周囲の誰かがやってくれた。人に 頼んでおけば、何とかなった時代環境だった。社長の周囲にはベテランの女子 社員が多く存在した。人も余裕があった。頼めば誰かがやってくれた。そんな いい時代だったから、好んで進んで自分が苦労しようと思わなかった。苦労し なくても、当時は何とかなった。まだ、世間でそんなにIT、IT、WEB、WEBなど と言わなかった。だから、のんびり構えていた。 <成岡もそうだったが・・・・> ●意外かも知れないが、成岡も実は当時は食わず嫌いだった。ワープロが普及 しだした頃、全然見向きもしなかった。結構自筆の字がきれいだったので、特 に清書の必要を感じなかった。また、社内に多くの事務系の社員がいて、特に 毎年新卒の大卒女子を採用していたから、そういう業務を任すに困らなかっ た。だから、悠々自適でほとんどそういうことに手を染めなかった。相変わら ず、罫線の紙に表を作って、電卓でたたいて足し算をしていた。縦横が合わな いのはしょっちゅうで、それを合わすのに時間がかかった。 ●ところが大転機が訪れたのは、子会社の責任者になり東京に単身赴任したと きからだ。売上はそこそこ大きい子会社だったが、管理部門の人員は数名。特 に東京本社の管理部には、数名のスタッフしかいない。関連の大企業との報告 会議が毎月開催され、そこに数字の資料や毎月の業務報告書が必要になる。内 容が内容だけに、誰にも頼めない内容がてんこ盛りだった。なので、止むに止 まれず自分でしないといけなくなった。さあ、最初は大変だった。数字が合わ ないから、時間がかかること、おびただしい。 ●そこで、割り切ってこれは正面から取り組まないといけないと達観した。こ の割り切り、諦めが今日の姿の元になっている。あの時、子会社の責任者で東 京に単身赴任しなかったら、これほどになっていたかどうか、はなはだ疑わし い。逆境に掘り込まれたから、仕方なくやらざるを得なかった。意外と人間そ ういうもので、割り切って開き直ったらできるものだ。まずいも、遅いも、恥 ずかしいも、面倒くさいも、そんな悠長なことを言ってられない環境になっ た。これが神からの言いつけだった。それに真剣に取り組んだ。 <トップがITに弱い企業は業績も上がらない> ●これ以降、真剣に取り組めば取り組むほど、スキルは上がるし技術は向上す る。そうなると欲が出てくる。もっと、もっととどんどん前に進むようにな る。人間という動物は、自分でやると決めたことは、少々何があってもひるま ない。そして、そのスキルと技術を使って、社内にどんどん改善、改革を求め るようになった。自分が中年で出来たんだから、若い連中はもっとやれるはず だ。年配の社員も、頑張れば出来る。とにかく、トップが自分で経験、体験し たことだから、誰も反論できない。 ●まずは、自分からメールやグループウエアで発信する。会議のデータを自分 で作成する。丸秘の部分は削って、見せてもいい部分だけを幹部に公開する。 それを使って会議をする。研修の講師を自らする。外部との会議に自分で作成 した資料を出す。自分で作成したら、説明もうまくできる。他人の作った資料 を説明するのは難しい。自分で作成すれば、自分で説明しやすい。他人に作ら すと時間がかかる。気に入らない部分をとことん直さす。それに時間がかか る。周囲も迷惑する。 ●当日近くなって、前日あたりに、また気が変わる。それを依頼される部下も たまったものではない。そんなくらい自分でやれと心では思っているが、相手 がトップだから言えない。そうなると、不満がお腹にたまる。来期の計画、数 字の予算、人員の配置、重点項目など、他人に頼めない内容のものも多い。こ れが自分でできないと、双方にストレスが溜まる。生産性は著しく損なわれ、 部下のやる気は大きく損なわれる。顔では笑っているが、心の中ではバカにし ている。これでは組織の活性化どころではない。 <どうすればトップのITレベルが改善されるか> ●素直になればいいだけだ。自分が遅れていると思えば、それを素直に認識す る。そして、自分で改善を考える。考えにくいときは、周りのよき理解者に助 言を求める。そして、自分の力量にフィットした家庭教師をしばらくゲットす る。誰か近くにいて、少し困ったとき、行き詰ったとき、迷ったときに、気軽 に質問し指導をしてくれる個人家庭教師がいないといけない。成岡も実家の85 歳のワープロも触ったことのない母に、携帯のメールを教えるのに3ヶ月か かった。しかし、何とかなった。いま、非常に役立っている。 ●集中してやれば、3ヶ月くらいで簡単なメールのやりとりくらい出来るよう になる。いや、出来るようになるんだという意思を持ってやれば、必ず何とか なる。何とかするんだという気持ちで始めないといけない。もし、全社員に向 けて、社長が自分の言葉でメールで語ることができたら、その効果は非常に大 きい。ユニクロの柳井さんは、毎年正月の冒頭に全社員に向けて、その年の決 意、目標、をこんこんと語りかけるメールを送っている。もう年中行事になっ ている。書籍にその内容が全部掲載されている。 ●とにかく、社長が短期間に変わると、会社の空気、雰囲気が一度に変化す る。口で変革、変革と言っても、社員はぴんと来ていない。それが、パソコン から遠い存在だった社長が、もりもりと全社員宛に檄文のメールを送ったら、 確実に会社は変わる。そんなに高い投資ではない。要は、トップの意思とやる 気の問題だ。それを、いつまでも他人のせいにしていては、会社は変わらない し、まして、変革などおぼつかない。今まで通りなら、そのうちに沈没するの がおちだ。とにかく、一刻も早くとりかかることだ。