□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第317回配信分2010年05月24日発行 会社の事業も事業仕分けが必要なときがある 〜事業の見直しを継続的に行う仕組みが必要〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●民主党政権になって、ときの言葉となった「事業仕分け」。その第2弾が先 週から始まった。全然いままで聞いたこともないような団体や法人の名前があ がって、その使っている金額の大きさに唖然としている。確かに、免許証の更 新のときの講習のテキストなどは、本当にムダの一言に尽きる。成岡も以前に 印刷会社にいたから、あのような仕事は非常においしいことは百も承知だが、 それが間接的に税金ということになると、話しは変わってくる。3分の1の人 が持ち帰らないのは、今に始まったことではない。 ●なぜ公的機関や公益法人のお金の使い方にムダが多いかといえば、簡単なこ とで自分たちが稼いだお金でもないし、天から降ってきたお金だからだ。これ が、自分たちで知恵を絞って汗を流して、努力してお客さんからいただいた売 上から捻出して使う費用だとしたら、それは意識がまるで違うはずだ。自分た ちが苦労して稼いだお金でないと、他人事になってしまう。びっくりするくら いの高い家賃を払おうが、理事長が20,000千円以上の報酬をもらおうが、自分 たちには関係ない。 ●ギリシャの財政破綻からユーロの信頼が失墜し、ヨーロッパでは大変なこと になっている。円高がこれ以上進むと、せっかく立ち直ってきた日本経済の足 を引っ張ることは、明々白々だ。このユーロ問題の根本原因はギリシャの財政 が大きく破綻していた実態が明るみに出たことだが、この国の借金のおおもと の原因は過去から引きずってきた悪しき習慣なのだ。失業者出れば国で面倒を 見る。無意味な手厚い年金制度。脱税の温床を分かっていて見逃している。そ んな風土、文化が原因なのだ。 <民間の企業ならそうはいかないはずだが> ●多少死語に近いかもしれないが、昔から「親方日の丸」という言葉があっ た。まさに役人天国を象徴するような、この言葉から想像できるように、使う お金が自分たちの責任だという意識がない組織は、早晩崩壊の運命を辿る。ほ とんど意味のない事業に多くの人員がかかり、多額の費用を浪費し、間接的な 税金を、じゃぶじゃぶ使っている。これで財政破綻と言われても、消費税を上 げると言われても、それは納得できない人が多いのは、感情論ではなく、当然 だ。まずは、ムダをなくすことだ。 ●民間の会社ならきちんとそれが出来ているかといえば、実は必ずしもそうで はない。先日も、某社にお邪魔したときに、この事業仕分けということばが出 てきたが、こういうことは毎年、毎年、毎期、毎期に年度の計画、予算を立て るときに、常に見直し、見直しをやっている。いや、やっているはずなのだ が、必ずしもそれが機能しているとは限らない。社長のトップダウンのツルの 一言で営業計画が決まったり、大型の投資案件が決まったりする。本当は、役 員クラスでとことん議論する課題が、全くなされていない。 ●そんなはずはないと言われるかもしれないが、数万円から数十万円くらいの お金に関しては、喧々諤々議論があろうが、それ以上の桁になると途端に分か らなくなる。議論も出ないし、真剣に考えない。失敗して、赤字になっても自 分のお金ではない。借金は社長がはんこを押して銀行から借りてくるものだと 思っている。その通りなのだが、それは社長一人の責任ではない。事業を担当 した責任者から始まって、末端の社員一人一人に至るまで、何らかの責任はあ るのだ。しかし、まぎれて分からない。 <常に事業仕分けを行う仕組みを作る> ●民主党政権になって一番分かりやすかったのが、この事業仕分けだ。もし、 自民党政権のままなら、これが毎年、毎年ノーチェックで済まされていたかと 思うと、ぞっとする。民間の会社なら、毎年見直しを行うはずだが、それがな かなかきちんとやれない。誰かが憎まれ役になって、ひとつひとつの事業の見 直しを行う。もちろん、現在は赤字だが、将来のために我慢していまは投資を 継続しないといけない事業もあるだろう。何でも赤字はムダとはいえない。健 全な赤字の事業部があっても、それはいい。 ●しかし、いつまでに、いくらくらいの赤字になったら、事業の縮小や廃止を 行うというマイルストーンは決めておかないといけない。これがないと、穴の 開いたバケツにどんどん上から水を補給しているようなものだ。いったん、こ れくらいになったらこの事業は縮小する、あるいはいったん中止する。または 撤退する。廃止する。意思決定が非常に重要なのだが、いやな結論はみんなが 避けて通る。特に、社長のお声がかりで始まった事業なら、誰も止められな い。誰も言い出せない。そういう企業は、多い。 ●成岡の仕事の一部は、そういういいにくいことをストレートに言わないとい けないことだ。客観的に判断し、私情をはさまず、冷静に説明し理解を得るよ うに努める。しかし、ことはそう簡単ではない。もう、これくらい投資をした から、誰それがその仕事に従事しているから、世間体がまずいから、個人的に やめるにしのびないから、・・・・。などなど、理由や言い訳のオンパレード になる。そして、よくある結論は、もうしばらく様子を見よう。これが一番多 い。しかし、決して事態は好転しない。むしろ、どんどん悪くなる。 <結論が出ない事業仕分けは最悪> ●別に、誰に責任を取れとか、誰それが悪いとか、魔女狩りをしているのでは ない。個人的な感情や私情をはさまず、会社のことが一番で冷静に判断する。 ところが議論になると、得てして感情論になる。他人のせいになる。環境が悪 い、政治が悪い、天気が悪い、銀行が悪いということになる。決して自分たち の問題だという認識がない。そうなると、天候の回復を待つとか、政府が予算 を付けてくれるように陳情しようとか、他人をあてにした結論になる。これは 解決にならない。結論を先送りしただけだ。 ●やるなら、ここまでやる。やめるなら、こうなったらやめる。結論は、この 二つしかないのだ。それを、決めるのがいやだから、怖いから、社長がご機嫌 を損ねるから、誰それがかわいそうだから、しばらく保留となる。これが最悪 の結論だ。しかし、こういう会社は多い。結論が先延ばしになるから、どんど んキャッシュアウトの連続が止まらない。まず大事なことは、出血を止めるこ とだ。いくら輸血をしても、どんどん傷口から出血しているのだから、まず止 血をする。そこが優先される。 ●手術をするのか、薬を飲むのか、それはそのときに判断すればいい。肝心な ことは、常に事業を客観的に見直す仕組み、体制ができているか。毎月会議は 確かにやっているだろう。そこで議論もされているはずだ。しかし、社長の独 演会になっていないか。文句のオンパレードで、全然建設的な議論になってい ないのではないか。形だけ会議をしていても、何も変わらないし、決まらな い。それをやっていることと勘違いしている。そんな企業や、会社、組織が実 に多いのだ。それを改善できた企業は、必ず業績が上向くはずだ。