□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第318回配信分2010年05月31日発行 役員や幹部の目標と課題を明確に 〜事業計画と組織図との一体化を図る〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●どこの企業も、程度の差こそあれ年度始めか新年開始に当り、その年の会社 としての目標やビジョン、抱負をトップが社員に語るものだ。または、新年の 決算期に入ったときに、前期の総括を行い、これから始まる新しい1年への決 意を披露する。ここが、一番トップの正念場だ。このときに、社員全員に熱く 語りかけないといけない。気の抜けたような挨拶などは、もってのほかだ。全 員が、よし、やるぞ、今年1年も頑張るぞ、頑張ればこうなるんだという明確 な意思を持つように語らないといけない。 ●その前に、今年1年間の会社としての具体的な目標、計画、予算、取り組む べき課題、優先順位などの重要な事柄を明確にしておかないといけない。よう やく1年間が終わって、ほっとしたのも束の間、次の試合がもうプレーボール で始まっている。なんともやるせないが、これが企業経営なのだ。ここは一 番、気持ちを切替えて、新しい年度に向かって渾身の力を出して、社員や従業 員全員を熱く燃え上がらせる。しかし、これがそう簡単なことではない。年度 末の多忙にかまけて、準備ができていない。 ●社長にしてみたら、幹部を集めていろいろと相談したり、投げかけたり、会 議や打ち合わせをしたいはずだ。ところが、年度末数字の追い込みでもあるの で、幹部は幹部で走り回っている。見渡せば、社内にいるのは自分ひとりと女 子社員だけという光景は、よくある話しだ。ゆっくりひざ詰めで相談する余裕 などない。おっつけ、来期の計画を会議する時間や気持ちにならない。仕方な く、何となく、社長が自分一人で何とか考えて辻褄を合わそうとする。幹部は そんな結論は聞いていないと、納得しない。 <まずは幹部と社長が握ること> ●「握る」とは少々品のないことばだが、何となくニュアンスが伝わると思 う。今期を反省し、来期に向けて事前に幹部とトップは綿密に会話しないとい けない。来期は体制はどうするのか、現場に下ろす売上目標はどうするのか。 人は今のままでこの数字ができるのか。かさばった固定費を下げる手立てはな いのか。新商品の販売開発はどうするのか、いつからできるのか。こんな重要 なテーマを相談するに、1時間やそこらで出来るはずがない。それこそ、北陸 のどこか温泉旅館で泊り込みでやる内容だ。 ●そこを時間がないという一言で片付け、妥協する。トップも期末の追い込み で幹部が奔走しているのを知っているから、あまり強いことは言いにくい。 よって、重要なところをつめないまま、時間だけが経過する。なので、期日が 迫ってから、やおらさてどうするか、などと悠長なことは言っていられない。 びっしり、綿密に予定を組んで、最低2時間以上の時間を取って、とことん相 談する、議論する、意見を戦わす。それが本来なのだ。そして、最後は幹部と トップで相互に納得する。それで初めて数字が現場に下りる。 ●全く手が届かない目標を現場に下ろしても、白けるだけだ。気合で頑張ると いうのは、気持ちは分かるが、外部、特に金融機関は納得しない。そんな時代 は、もうとっくの昔に終わっている。しかし、現実には幹部と社長で合意した 数字や具体的な目標がないと、評価の方法もない。そんなバカなことはないと 思われるかもしれないが、これが大半の中小企業の実態だ。この両者で合意、 握った目標を部門ごとの現場で、また真剣に相談する、協議する、議論する。 そして、本当に燃える目標が決定される。 <目標が決まると組織図が出来る> ●「組織は戦略に従う」というのは、有名なフレーズだが、まさに今期の目標 を達成するためには、優秀な人材の取り合いになる。それが当然だ。社長と幹 部だけで会社全体の数字ができるわけがない。本当に達成しようと思っている 幹部は、そのほとんどが優秀な人材を他部署から異動の希望を出す。中小企業 でも人事異動や組織変更は、いろいろな摩擦や憶測などを生んで、うまくやら ないと疑心暗鬼の塊の組織になってしまう。それを払拭して、いきいきした組 織にするのが、社長の仕事だ。 ●新年度に向けて戦う編成=組織図を再度眺めてみる。果たして、これでよい か。そこに目標と数字をはめ込んで見る。よりイメージが具体的になってくる と、本当に責任持ってこれができるだろうかと、不安になる場合も多い。しか し、今さら数字のダウンや課題の削減を申告する時間はない。おっつけ、仕方 ないとそのままスタートしてしまう。これでは、本当に計画や課題、問題点の 解消ができる確率は、極めて少ない。目標が決まれば、組織のありようも決ま る。そして、そのありように対して、いろいろな異動や再編が行われる。 ●それを年度末のばたばたしているときに、時間が足りない中で、えいやっと やらないといけない。しかし、幹部とは相互に課題を認知し、信頼関係の構築 を図る。結構、中小企業といえども、大変な努力と時間をついやす。これが面 倒だから、パスする企業も実際には多い。また、とりあえずのスローガンは出 ているが、組織図や幹部の課題はそのままにして、あとで何とか辻褄合わせを やろうとする。まさに、後付け以外のなにものでもないが、大半はこういう状 態が現実であろう。しかし、どこかで修正しないといけない。 <毎日毎晩眺めて考える> ●極端に言えば、中小企業で会社全体のことを考えているのは、社長お一人で あることが多い。いや、そんなことはないと断言できるトップの方が、果たし てどれくらいいられるだろうか。結局、最後の場面で腹をくくれるのは、トッ プ一人なのだ。だから、幹部との「握り」は大事なのだ。赤提灯で一杯飲みな がらでも、構わない。会議室で向き合ってでもいい。とにかく、大事な幹部と は徹底的に議論して、きちんと「握る」ことだ。一方的に社長からの押し付け でもいけない。相互に理解、納得を得られるまで、頑張る。 ●そして、その「握った」課題と目標を達成するためには、この組織図でいい のか。ここが一番大事なところだ。場合によっては、部門の閉鎖、統合なども 起こり得る。それに伴う人事異動もある。家族を置いたままでの、本社への単 身赴任の転勤もある。また、仕事のできる優秀な社員に業務が集中する。ある いは、幹部の下に誰も実際の業務を遂行するメンバーがいないこともある。し かし、中小企業は人材が豊富にいるわけがない。しかし、現在手持ちの経営資 源でやらないといけない。誰に文句を言っても始まらない。 ●とにかく、大事なことは「握った」課題や計画、目標が達成できるような組 織に編成を変えないといけない。そして、衆知を集めて議論、相談し、意思決 定したら、果敢に発表し、迅速に行動する。もたもたしては、いけない。決め ないことが、一番の不作為の罪なのだ。トップの仕事は決めることだ。また、 やらないこと、やめることを決めることだ。それがないと、組織は肥大化、膨 張して、図体だけが大きくなり、環境の変化に適合できず滅んだ恐竜のように なってしまう。そうならないように、まず課題を幹部と「握り」、「握った課 題」と組織を一致さすことが重要だ。