□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第322回配信分2010年06月28日発行 無能な部下を嘆く前に自分が行動する 〜業績を部下のせいにするのは禁句〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●ここ数年、業績が右肩下がりに下降気味の企業は多いだろうが、だいたい トップの方にヒアリングすると、原因は他人のせいになる。3年前に常務が辞 めたのが原因だとか、営業部長が能力がないとか、製造の責任者のマネジメン トが不足だとか、とにかく愚痴のオンパレードとなることが多い。聞いている ほうも、何となくいやになるし、当方のやる気も失せてくる。確かに、それも 直接の原因のひとつだろうが、その根本の根っこの原因に目が行っていない。 一番の原因は、自分の足下にある。 ●会社や企業にとって一番大事なことを部下に丸投げして、自分では関わらな い。最後の最後になって、表面的な箇所だけ見て、基本的な部分は眼を逸ら す。従って、枝葉末節な各論や、表現の巧拙に注意がいって、一番肝心な基本 方針は他人任せになる。そして、それを一生懸命まとめた部下の無能を嘆くこ とになる。一生懸命やった部下は、本当にモラルダウンして、もういい加減に しろということになって、早晩組織から離れていくことが多い。これまで頑 張ってきたのは、、いったい何だったのだろうかと。 ●そういうちょっとしたミスマッチが重なり、ヘドロとなって堆積し、コレス テロール化し、血流の阻害を招く。そうなると、簡単に生活習慣病になる。痛 風、高血糖、糖尿病、脳血管疾患、心臓病、機能障害などの重篤な障害を招 く。最終的には、企業の機能不全に陥る。どうも、体内の血流が悪いと気が付 いたときには、もう手遅れだ。成岡たちが頑張って、再生できる企業は、まだ その重篤な状態の直前で踏みとどまっている。もっと進行すると、緊急の手術 もできない。そうなると、ご臨終を待つしかない。 <業績の悪いときに頑張れる人材を> ●業績が好調で、待遇や報酬も多くできるときは、いろいろな人材を外部から 調達できる可能性が高い。一流企業の輝かしい社歴を持った人を、外部から招 聘することも可能だ。しかし、大半の中小企業では、現状そんな楽観的な状況 ではない。自分たちの待遇や報酬も削りながら、何とか踏ん張っているのが現 状だ。いつになったら回復するか分からない景気を待ちながら、何とか存続 し、次の成長の材料を探している。非常に厳しいが、大半の中小企業は、まだ そういう状態だ。 ●自分が一人籏を振って、なんとかなる企業規模は社員が一桁くらいの企業ま でだ。10名以上の社員が在籍する企業では、社長の分身がいて、その人が担当 の部署やグループをマネジメントする。問題は、その社長の分身が、分身とし てきちんと機能しなければいけない。このポスト、ポジションは非常に重要 だ。この人選を間違ってはいけない。判断の基準は社歴でも業暦でもない。組 織への忠誠心と意欲が控えめで、能力の高い人材を選ぶことだ。社内にいなけ れば、本当に必要なら外部から連れてくる。 ●そういう人材を重要視しないで、業績の悪化、回復の遅さ、収益力の低下な どの責任を押し付けてはいけない。よくある業績の悪い会社のパターンで、社 内で犯人探しを一生懸命している。会議で欠席裁判をして、誰々のせいだとい うことになり、責任回避と逃避を行っている。他人事と思うなかれ。結構多く の企業や組織で、平気でそのようなことが起こり、トップがその火消しに走り 回っている。そんな企業に、今後の成長が約束できるだろうか。計画の実現可 能性が担保できるだろうか。 <無能と思う部下を選んだのは自分自身> ●優秀な人材が、トップが原因で組織から離れ、次に指名した人材がなかなか パワーを発揮できないことがある。優秀な人のあとほど、やりにくいがしか し、言い訳は許されない。しばらくは、静観していたが、業績の回復の兆しが 見えないから、遂にトップが詰問したり、問い詰めたりすることになる。その ときの環境では。パワー不足かもしれないし、責任を与えたら同時に権限も与 えないといけない。そういう基本的なことをきちんとやらないで、結果の出な い部下の無能を嘆くトップは多い。 ●しかし、その人材を選び、選択し、そのポストにつけた最終の意思決定は、 社長自身なのだ。任命責任、選択責任はトップにある。それを平気で棚にあげ て本人の責任にしようと押し付ける。周辺では、トップの決定だから逆らえな いことは、明々白々だから、誰も何も言わない。特に人事に関しては、口を挟 めない。業績が悪い結果を押し付けている幹部社員を採用したのは、いったい 誰か。もしかしたら、先代の社長が残していった遺物、遺産かもしれないが、 承継して5年も経過していたら、トップの責任は免れない。 ●時効も5年くらいまで。5年経過したら、いや本当は3年といいたいが、最 高でも5年経過したら以前の膿や垢を落として、自分のカラーに変えるべき だ。もし、能力がいまいちと思える幹部社員が存在するなら、徹底的に話し合 いをして、それでも変わらなければ、断固更迭するのがいいだろう。ぜひ、自 信を持ってやるべきだ。常に戦闘状態になっているのに、チームリーダーや管 理職が腐っていると、組織全体はあっとういう間に全体が腐ってくる。しか し、その幹部を登用し、任命したのは誰か。 <修羅場には自ら出て行く勇気を持つ> ●幹部社員の行動や業績がいまひとつの場合、トップは自ら進んで組織のてこ 入れに動かないといけない。じっとダンマリを決めこんではいけない。特に上 級幹部社員の人事や待遇の決定、条件などは非常に会社の業績に大きな影響を 及ぼす。彼を任命し、任せたのだから、ダンマリを決め込んで結果を待つなど という愚策をしてはならない。少しの決断の遅れは、将来に大きな負の遺産を 残すことになりかねない。そう感じたら、さっさと行動を起こす。本人を呼ん でとことん話し合いをする。 ●それをナンバーツーやセカンドポジションの人に任してはいけない。最悪、 任せた形はとっても、一番肝心なところは自ら出向いて、決着をつけるだけの 度胸と責任感と勇気を持たないといけない。何せ、その社員を登用し、組織の ミッションを決定し、これでいけると思って行った人事なのだから。特に、本 人の意識を変えて、行動を変えて、さらに結果を出すように仕向ける場合な ど、これはトップの仕事以外の何物でもない。企業にとって一番肝心な部分 だ。しかし、これを自らやらないトップが、多い。 ●トップの仕事は、いいことを前に進めるより、いやなことの球を拾い、いや なことの決断をすることだ。前に進むときは、ある意味簡単だ。そして、楽し い。しかし、後ろ向き、あとずさり、撤退、縮小、退職勧告などの負の遺産処 理は、大変だ。しかし、これをトップが自ら進んで、リーダーシップを発揮 し、全体を牽引する。決して、結果が悪い部署の幹部職の結果責任を追及する のが、仕事ではない。日常は、どうなった、どうなった、で追い掛け回すのは いいが、最後の決断は自ら下す勇気を持たないといけない。