□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第327回配信分2010年08月02日発行 ひと手間かける心遣いが大事 〜何となくやっていることと心をこめてやること〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●だいぶまえに「ひと手間かける」というフレーズが流行ったことがあった。 もうかなり前かもしれないので、いつ頃どうだったかかは思い出せないが。今 回は、日常の仕事の中で、この「ひと手間かける」というフレーズを具体的に どういう風に実践すればいいのかということを、筆者の日常の仕事の中で、実 際にやっていることの例をあげて解説しようと思う。基本的には、面倒くさい ことをいやがる人には難しいことだと思う。しかし、なぜそれが面倒くさいと 感じるのか。そこを真剣に考える。 ●ひと手間かけるということは面倒くさいことを、面倒くさがらずにやること だ。お中元をいただいたら、すぐに礼状を書く。それも、直筆でハガキで。最 近はメールという便利なツールもあるが、筆者はときどき直筆で書く。その筆 記用具も、いろいろと凝っている。特に、万年筆は必需品だ。ボールペンはい ただけない。万年筆はこういうケースで何事にも勝る道具だ。なので、道具に こだわりを持つこともいい。道具などどうでもいいと思っている人は、いい仕 事はできない。こだわりとは、大事なことなのだ。 ●ハガキも常に数枚はオフィスに常備しておく。年賀状の書き損じを、5円 払って普通のハガキに変えてストックしておいてもいい。とにかく、何かやろ うと思ったときに、環境が整っているか、それが大事なのだ。ご飯を食べよう と言ってから、米屋にコメを買いに行く人はいないだろう。ハガキ1枚書くの に、だいたい5分で済む。手の遅い人は、ハガキを目の前にしてしばし時間が かかる。内容は特に拘らない。難しく考えない。とにかくお礼の気持ちを素直 に書けばいい。手の遅い人ほど、仕事をこねくり回す。 <社員全員がひと手間かけるクセをつける> ●メールが来たら、とりあえず返事を返す。メールは見たのか、見ていないの か分からないから、送信したほうが不安になる。いっこうに返事がないと、余 計に不安になる。見たという返事だけでも、来れば安心する。正確な返事がも らえなくても、とにかく見たという返事だけでもするべきだ。何も、長い時間 かかることではない。とくに金曜日の午後からのメールの対応には気をつけ る。週末に返事が来ないことも想定しておかないといけない。また、何か郵便 で送るときも同じだ。 ●単に書類だけ入れて郵送するより、ちょっと気の利いたコメントをメモ用紙 につけて送ることにしている。ワープロで打った送り状をつける人もいるだろ うが、筆者はわざと手書きにする。簡単なメモでいい。手書きの多少急いだう まくない字のほうが、本当に気持ちがこもっていいのだ。年賀状も、最後に必 ず一筆添える。印刷のみで出すことはしない。自分の気持ちが、一言でいいか ら現れるコメントを添える。それが本当に相手に対する気持ちを表している。 そういうことを簡単にできる環境を整える。 ●納期が決まっている仕事も、同じ納期に同じものを納品するなら、少しでも 先方のことを考えると、たとえ半日でも早く納品できれば、それがひと手間か けたことになる。例えば、今週末が期限の仕事。金曜日中に納品すれば、約束 は守ったことになるが、金曜日の朝一番でも週末には変わりない。しかし、相 手にすれば金曜日の終わり間際に納品されたのと、金曜日の朝一番に納品され たのと、後者のほうがあとの段取りがいいことは歴然だ。同じ納期遵守だが、 圧倒的な差が付く。 <社員がクセをつけるには役員クラスが実行する> ●うちの社員は・・・・・、と嘆く前にトップや役員自らが足下をみつけ、模 範となるような態度、行動、結果を出さないといけない。中小企業は、トップ 自らが範を垂れないと従業員は動かないと肝に銘ずるべきだ。嘆く前に、まず 自分が何事にもひと手間かけること。意外と社員には要求すれど、ご自分で実 践されていない経営者が多い。会議の開催や進行でも同じ。重要な事項を伝達 するのでも同じ。会議で社長がわっと言えば、それで全員に伝わると思うの は、大間違い。そうは簡単ではない。 ●重要な事項ほど伝達の順番や、理解を深める「手間」が要る。関係者を順番 に呼んで、懇切丁寧に理解を促すために、一生懸命説明する。採用の説明会で も、出来る限り求職者に自社の特徴、長所を理解してもらうために、ひと手間 もふた手間もかける。簡単な紙を配って終わりではなく、トップが出てきて、 一生懸命自社の将来に対して熱弁をふるう。その一生懸命さが求職者の心を動 かす。何も給料が少し高いことが、求職者の心を動かすのではない。トップの ひたむきな情熱が伝わらないといけない。 ●資料を用意するのでも、どういう風に揃えれば相手にとって分かりやすいか を一生懸命考える。そうなると、単にコピーをとるというだけのことが、非常 に重要なことになってくる。揃え方、綴じ方、順番、部数など考える要素がた くさんある。言わなかったからやりませんでしたではなくて、言われなくても 考えることが仕事なのだ。切手を貼ってくれといったら、それは投函してくれ と同義語なのだ。しかし、いつ投函すればいいのかは確認する必要がある。急 ぐのか、急がないのか。気を利かすということだ。 <特にサービス業や対外的な仕事には大事> ●サービス業は提供する商品やサービスに形がないから、それを提供する人に よる部分が圧倒的に大きい。そこで、簡単にひと手間かけられる人と、それが 自然にできない人、邪魔臭いと思う人とに、格段に差が出るビジネスなのだ。 同じ2,500円払って一杯飲む居酒屋でも、その違いだけで倍くらいの価値を見 出すことがある。ビールも本当に適温に冷えたビールをさっと出すところと、 持ってくるのは遅いし、何となく生ぬるいビールを出すところでは、今後の商 売に格段の差が付く。マネジャーが気が付かない場合が多い。 ●老舗高級旅館で、おかみさん以下スタッフが揃って見送る光景もあるが、ど うすればひと手間かけて満足してもらえるかは、非常に難しい。先日NHKTVで おもてなしの番組をやっていたが、ベテランの仲居さんになるとそれがぴった りとはまる。海外のお客さんがお刺身を食べないと見るや、すぐに調理場に違 うオーダーを出す。食べられない方が悪いと言えばそれまでだが、さすがと感 じさせるアクションなのだ。調理場にすれば面倒くさいだろうが、それをさっ とやるところがすごいのだ。 ●こういうことができるのは、会社の文化だ。ひと手間かけることが顧客の満 足から感動を呼ぶことを徹底して実行しようとする企業文化なのだ。この企業 文化、風土を作るには相当な時間とエネルギーが要る。伝統や空気という表現 も同じだ。社長の仕事は、この素晴らしい伝統と空気を醸成することだ。その ためには、まずはトップが面倒がらないことだ。単に売上や利益を重んじると 難しい。それは、結果に過ぎない。自分のことより、まずひと手間かけて、相 手に何をすれば喜んでもらえるのか。それを真剣に追求する。