□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第343回配信分2010年11月22日発行 時代とともに変えなければならないビジネスモデル 〜急激には変えられないから日頃から準備を〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●最近の弊社の仕事は、両極端になってきた。ひとつには、省エネや省力化、 省資源対策などの分野で今までの技術力を活かして、今後非常に成長が見込ま れる企業の次のステップへのお手伝い。具体的に言うと、経営革新や新連携な どの認定取得に向けた支援などだ。また、認定取得後のアフタフォローも重要 な仕事になる。認定を取った、取れただけでは免許証をいただいただけで、必 ずしも路上でうまく運転できない可能性がある。 ●しかし、こういった企業の事業は基本的に前向き。今までの知識、経験、失 敗などを集積して、それをビジネスの「知恵」に変換して、現代の社会に受け 入れられる商品やサービスに仕立て上げた。製品は作れても、商品が作れない 製造業が多いが、これらの企業では、次代に向けて事業性の高い商品を提供で きるノウハウが蓄積されている。なかなか、商品化までは時間がかかるものも あるが、一度市場で評価されると、ノウハウがあるから、そう簡単に他社の追 随を許さない。 ●糸偏を中心とした伝統産業も、衰退の一途をたどっているように見えるが、 一部の企業は元気印だ。そういう企業は、もう10年以上も前から、伝統的な事 業から少しずつ撤退し、その技術力を活かして新しい分野への進出を図ってい る。また、大きくビジネスモデルを変えられない場合は、そのビジネスモデル がまだ通用する新しい市場に進出している。前者は新分野事業への進出である し、後者は新市場への進出だ。どちらの選択肢も正しい。 <業績が芳しくない企業の特徴> ●一方、旧態依然としたビジネスモデルで苦しんでいる企業も多い。10年くら い以前から、徐々に業績が低迷しだした。その兆候は顕著に現れていたのに、 無視した。そんなことは一過性だ、またそのうち春が巡ってくる、公共工事の 予算が復活したら大丈夫とか、適当に耳障りのいい理由をこじつけて、無関係 と切って捨てた。しかし、毎年、毎年同じ傾向が続き、これはいよいよ本当だ と感じてきたときは、とき既に遅し。周囲は結構変わっているのに、その企業 だけがガラパゴスになっている。 ●10年間は長いようで、結構はやく回ってくる。3年などあっという間だ。3 年が3回回ってきたら約10年間だから、ぼやぼやしていると劇的な変化が起 こっているのに気がつかないと、突然周囲から置いていかれる。気がつけば自 分ひとりが無人島に残ったみたいなものだ。いつかは、また暖かい春が来るだ ろうと、半ば祈っているようなものだが、ここはあっさりと切り替えたほうが いい。伝統や格式に拘る気持ちも分からないでもないが、きっぱり過去と決別 する勇気が要る。 ●若い後継社長に代替わりすれば、そのときはチャンスだ。しかし、失礼なが ら高齢の社長がそのままマネジメントを担当されている企業では、ビジネスモ デルの転換には時間がかかる。ITにも弱いし、財務戦略もない。ホームページ すらない企業も、まだ中小企業では多い。中小企業ほど、そういうものは大事 だと思うが、そういう意識の転換には、なかなかついていけない。そして、 徐々に業績が悪化し、企業の体力を蝕むようになる。気がつけば、手遅れとい う状態になる。 <何とか頑張っている企業の特徴> ●京都の特徴的な事業である染工場。かっては多くの染工場が市内にあった が、いまは見る影もない。郊外に移転した企業もあるし、市内で頑張っている 企業もあるが、その取り扱い高、業績は一時期からみれば、無惨なくらいだ。 しかし、その中でもユーザを変え、新しい市場を攻略し、生地を染めるのでは なく、その技術を活かして他の分野に進出し成功を納めている企業もある。こ んなものをこの染工場でやっているのかと、びっくりするような商品が出荷さ れていく。 ●成岡がしばらく在籍していた印刷業。印刷業もご多分に漏れず、衰退業種の ひとつだ。従来の紙に活字を印刷するビジネスは、なくなりはしないが衰退す ることは、間違いない。しかし、その印刷業界でも元気な企業もある。ひとつ には、小ロット、多品種の印刷物をWEBサイトで受注して、極めて早い時間で 仕上げるビジネスだ。これは、設備投資も必要だが、時代のニーズに合ってい る。印刷業界で成長しているのは、こういう分野の事業に進出した企業だ。 ●機械精密加工でも、従来の大量生産大量消費の時代ではなくなった。高価な 部品をリサイクルするビジネスや、環境にやさしい材料に転換するビジネスも 有望だ。それを過去からずっと研究して、最近ようやく日の目を見た企業もあ る。時代のスピードは確かに早いが、ひとつの製品や商品に付加価値を付け、 世間で認められるくらいのレベルに高めるには、相当な力技が必要だ。我慢し て、体力を温存し、将来の戦闘に備えることが必要となる。急には新しいビジ ネスモデルは描けない。 <積極的に変えることが生き残りの条件> ●過去の成功体験が邪魔をして、なかなか新しいビジネスモデルに転換できな い企業が多い。頑なに守らないといけない企業文化、風土もあるが、積極的に 転換しないといけないビジネスモデルもある。仕事のやり方、顧客との向き合 い方、付加価値の付け方。どれをみても、10年前の方法がそのまま通用すると は思えない。しかし、意外と企業は自分から変化することを好まない。特に、 過去に成功体験のある企業ほど、その傾向が強い。 ●やむにやまれず、失敗が重なり業績が低迷し、追い詰められて、さあ大変 と、そこから這い上がる企業もある。どちらかというと、そのほうが多いかも しれない。かなり体力を消耗し、資産も痛んでいるから業績の回復は容易では ないが、トップに会社を変えようという明確な意思があるなら、できるだろ う。経営は、トップの意思なのだから。まず、そこが変革の原点だ。いくら周 囲の我々が、気を揉んでも。声高に変革を叫んでも、当の当事者にその気がな ければできるものではない。 ●少し前に気づいていたら、こんなに苦労することはなかったのにと思うが、 過去を後悔しても始まらない。反省はしてもいいが、後悔から学ぶものはな い。つまづいてこけても、こけたことを恥じたり、悔いることはない。また、 立ち上がって歩き出せばいい。恥ずかしいのは、立ち上がれないことが恥ずか しいのだ。まずは、会社の風土を変えることから、何でも始まる。そう思えば できると信じたら、できるものだ。変えないといけないものを、積極的に変え ることが生き残りの必要十分条件となる。