□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第344回配信分2010年11月29日発行 新卒就職大氷河期は採用のチャンス 〜ここぞとばかりに自社の価値をPRする〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日のNHKクローズアップ現代でも放映していたが、今年は新卒就職大氷河 期だそうだ。まだ4回生で就職先が決まっていない学生が本当に多いらしい。 内定率が60%を切って、数年前の同じ大氷河期よりまだ低下している。このま までいくと、50万人を超える新卒就職希望者の、なんと30%近くが就職できな いで卒業するか、内定がないまま留年することになるらしい。数十社受験し て、ひとつも内定がもらいないと自己不信になり、本当に落ち込む。見ていて も気の毒なくらいだ。 ●筆者は比較的強気の発想で、それは本人の問題だから努力すれば何とかなる さ、と結構簡単に考えていた。しかし、番組を見るとどうもそうではないらし い。一生懸命真面目に4年間勉強してきた学生であるにもかかわらず、どうも 企業から内定がもらえない。アルバイトや部活に一生懸命になり、学業をおろ そかにしたというなら、これは自分自身の問題だと、切って捨てることもでき るが、事態はどうやらそうではないらしい。このまま行くと大きな社会問題に なる。 ●やはり一昨年のリーマンショック以来、世の中の環境が激変した。企業は いっせいにグローバル化を目指し、海外の市場を視野に入れた多面的な展開を 加速している。大企業は当然だが、影響を受けて中小企業にもその傾向が少し 出てきている。以前では考えられなかった企業が、いま中国やベトナムに進出 している。某コンビニ大手チェーンでは中国人の新卒者採用を大幅に増加させ た。このため、日本人の新卒者があおりを食って、採用人数が減っている。 <中小企業は優秀な人材採用のチャンス> ●以前では考えられなかった、新卒者の競争相手が日本人から他国の学生と競 い合う環境になった。成岡の知っている企業でも以前から数名の外国人学生採 用をやってはいたが、これほど急激に変化が起こるとは予想以上のスピード だ。しかし、この環境の変化を冷静に考えれば、日常優秀な人材がなかなか採 用できない中小企業にとっては、新卒者の採用は絶好のチャンス到来である。 新卒者は手間がかかるから敬遠されている企業でも、検討の余地はある。 ●即戦力を求める中小企業では、採用してから実戦で役立つ人材に育てるのに 時間がかかる新卒者は、どうしても敬遠がちだ。教育などやってる暇がある か、というのが大半の理由だろうが、後輩に教育をすることで先輩も大きく育 つことが多い。また、職場の雰囲気もがらりと変わる。後輩が入ってくると、 先輩の緊張感も高まり、相乗効果が期待できる。確かに手間と時間は多少かか るかもしれないが、やってみると必ずしもそうではない。 ●筆者が在籍した某出版社でも昭和61年から本格的に新卒採用を戦略的に行っ た。筆者も採用活動の先頭に立って頑張った。当時の環境はいまとは異なる が、それでも無名の出版社の新卒採用に、そう簡単に多くの優秀な新卒が応募 はしてくれない。なので、何とか優秀な学生を採用しようと、あの手この手を 繰り出していろいろと努力した。内定者に新調のスーツをプレゼントして、囲 い込みを図ったこともあった。もらってから辞退した学生もいたが・・・・。 <採用と面接はトップの仕事> ●新卒者の採用や面接は、トップの重要な仕事だ。まずは、どんな人材が欲し いのか、求める人物像を明確にする。ここが意外と難しい。なぜ難しいかとい えば、自社の将来戦略が描けていないと、求める人物像は出てこない。何でも いい、元気な学生ならOKというものではない。自社の将来戦略がこうだから、 求める人物像はこういう人間でいて欲しい。あるいは、技術的に展開する方向 はこうだから、こういう系統の技術屋が来て欲しい。そういう人物像が明確に あるか。 ●また、面接も重要な判断の場面だ。かなり多くの応募があって、面接に多く の時間を費やすということなら、一次面接は人事関係者だkでもいいが、少な くとも選考の最終面接は絶対に立会い、自分の感覚と一致する学生を選択す る。その学生が自社の制服を着て、自分のオフィスで仕事をしている場面を想 像する。何となくしっくりと落ち着く学生と、どうもフィーリングが合わない 学生に分かれる。その感覚が重要なのだ。なにせ、自社の将来の幹部候補生だ から。 ●トップは自社の将来を熱く語たらないといけない。こういう風にわが社は将 来伸びて行きたい。そのためにこういう人材が必要だ。このような将来戦略を 熱く語れるのは、トップしかいない。トップが情熱をかけて口説けば、優秀な 学生も心を動かされるはずだ。中小企業だから卑下する必要は全然ない。自信 を持って堂々と将来戦略を語ればいい。また、語れないといけない。トップの ビジョンの乏しい企業に、優秀な人材が来るはずもない。左様心得るべきだ。 他人のせいにしてはいけない。 <どんな企業も最初は中小企業だった> ●いまでは堂々たる大企業のパナソニックも、トヨタ自動車も、京セラも、オ ムロンも、最初は失礼ながら全部中小企業から始まった。そして、一人、一人 と頑張って優秀な学生を採用し、定着させ、能力を存分に発揮させ、成長して いった。とても最初から優秀な人材をたくさん採用できたわけでは決してな い。地道に、一人、一人と、着実に増やしていった。定期的な、継続的に採用 活動を続けることが重要だ。景気がいいから大量に採用し、悪くなるとあっと いう間に手控える。それはまずい。 ●当初、なかなか思うような優秀な学生が簡単には来てくれないから、時間は かかる。それでも諦めずに継続していると、いつかはチャンスがやってくる。 大量に採用し、数年間手控えるのではなく、一人でもいいから採用を継続す る。一人より二人のほうがライバル意識があって、いいとは思うがそれは自社 の都合もある。とにかく大事なことは、継続することだ。そして、先輩の声を 大事に、毎年毎年採用活動を続ける。インターンシップを活用してもいい。 ●結論は、企業は人であること。なので、採用活動は企業にとって重要な位置 づけになる。特に、これから数年間新卒就職希望者にとっては、就職大氷河期 が訪れる。これは千載一遇のチャンスだ。今から積極的に採用活動を計画的に 展開する。優秀な人材の採用は、企業の成長にとっての生命線だ。かのリク ルートという企業の採用方針は明快。採用担当者より必ず優秀な学生を探し て、口説いて、入社してもらう。戦略が極めて明快だった。その人材採用の方 針で会社は大きく成長した。見習うべきポイントだ。