□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第351回配信分2011年01月17日発行 名前は体を表す 〜社名はよく考えて決める〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●最近数名の方から、新しく会社を設立する案件の相談に乗った。まだ若い方 なので、これからの未来は洋々たるものがあるだろう。リスクも大きいだろう が、今は今後のことで頭がいっぱいだ。まず、そこで考えるのは起業し設立す る会社の名称、名前をどうしようかということだ。これは創業するときに一番 大きな問題になる。最近では、法令がだいぶ緩和されたが、商号であるから場 合によって先に登記されていたら使用できないこともある。 ●成岡の場合は、比較的簡単というか単純というか社名には個人の姓を付け た。もともと、父が亡くなったことも創業設立のきっかけであったので、母の たっての願いで社名には成岡の姓を使うことが最初から決まっていた。なの で、比較的選択の余地があまりなく、数件の候補から選択するにとどまったの で、あまり迷うことはなかった。あとは、他のことばとの相性の問題だけだっ た。社名は原則単純明快なものがいいと思う。分かりやすいことは必要だ。 ●社名の由来や命名の動機など、細かに薀蓄を語らないといけないというの は、非常に面倒だと思う。誰が聞いても、見ても、ぱっとコンセプトが分かる 名前がいいと思う。いろいろと説明を要する名前は、凝ってていいとは思うが 周囲には分かりにくい。姓が比較的珍しい方は、一度会うと忘れないというメ リットもあるが、社名は思い出せないとビジネス上ではあまりメリットを感じ ない。なので、社名は単純明快なのがいいと思う。 <社名は会社のビジョンやコンセプトを象徴> ●社名やロゴが決まったら、設立の趣意書を作成した。少し前までは会社を設 立するには発起人が必要で、発起人が設立趣意書を作成した。最近では簡単に 法人を設立できるようにと、発起人も必要ないし、設立趣意書も必要ない。し かし、小生が会社を設立した際には、相当時間をかけて設立趣意書を作成し た。そして、その趣意書を親しい関係者、友人、昔からの仕事の付き合いの あった方に送付した。それが法人設立の挨拶文となったはずだ。 ●社名には会社のビジョンやコンセプトがこめられていることが望ましい。こ ういうことをやりたい、こういうことをしたい、こういう想いで会社を作っ た。そのようなイメージが連想される社名がいい。他人から説明を求められた ときに、長い時間をかけて説明しないといけないのは、少々苦しい。あるい は、象徴的なフレーズを並べてその頭文字をとってきて社名にされている会社 もある。それはそれで理屈が通っているのでいいではないか。 ●一度決めて登記した社名はおいそれとは変えられない。社名がまずいから変 えましょうなどということは、本来あり得ない。いろいろな登録した書類、金 融機関の口座、契約書などそれこそあらゆるものに社名と代表取締役の氏名は 記載されている。それをおいそれとは変えられない。まずいなら変えればいい というものではない。従って、相当慎重に時間をかけて考える。小生も最終的 に決断するまでに、随分時間がかかった。 <創業のときに立派な経営理念は要らない> ●よく当初から高邁な経営理念が決まっていないとおかしいという方もいる が、その理屈は正しい。創業設立の際には、その会社を設立した立派な経営理 念があってしかるべきだ。しかし、それは現実を知らない机上の理屈。十分時 間をかけて周到に準備して、満を持して創業した場合は当初から十分検討した 創業の理念がないとおかしい。しかし、たいていの創業のときには、そんなに 立派で高邁な経営理念が初めから決まっているケースは少ない。 ●創業のきっかけがそんなに周到な準備から始まるとは思えない。小生の場合 も、最終いた会社でいろいろな出来事があって、最終決心してから登記創業し たのは2ヶ月くらいしか時間がなかった。いろいろと以前から考えてはいた が、最後のきっかけはあるハプニング的な出来事だった。だから、バスはある 意味突然巡ってやってきた。そのときにそのバスに乗るか乗らないか、究極の 選択のようなものだ。周到に準備をしていたわけではなかった。 ●こういう場合、勢いや気持ちが重要だ。ここで迷っていては後世に悔いを残 すと思ったから、思い切って飛び出した。必ずしもハッピーなリタイアメント ではなかった。だから、当初は大変だった。そういうときに、高邁な創業の理 念がないからダメということはない。想いや気持ちのほうが大事だと思う。 きっかけがそうだから、その当時のモティベーションは今でも脈々と生きてい る。その気持ちが頑張れる源泉なのだろう。そういう場合は、高邁な経営理念 は後付でもいい。 <名刺に短いコンセプトを> ●以前に在籍していた出版社で、新しい書籍などを出版するときに営業的には よくこういうトレーニングをする。それは、A4の白紙を1枚もってきて、新し く出版する書籍の広告宣伝のチラシを作る。その一番上の場所に、その書籍の キャッチコピーを書く。比較的短いフレーズでインパクトのあるコピーが、果 たして書けるか。そして、その下にリードコピーのように注釈的なフレーズを 多少字数が多くてもいいが、書く。それが果たしてきちんと書けるか。 ●書いてみると意外と難しい。ここで、さあどうなんだっけなどと一生懸命考 えているようでは、その書籍は失敗だろう。ターゲットと思える読者にメッ セージがきちんと届かない確率が高い。この場に及んでそういう状態では、そ もそもその企画のコンセプトが明確でないからだろう。このトレーニング、テ ストをやってみると意外といろいろなものが見えてくる。何も書籍に限らず、 いろいろなプロジェクト、新製品の開発、新事業など、すべてに共通のこと だ。 ●新しい名刺を作ったら、上段の社名の横や上に会社の目指すイメージや訴求 したいコンセプトを短く書く。果たしてそれが社名とぴったりしてきちんと書 けるか。何回も何回も書き直して、それでもしっくりこないこともある。しっ くりこないときは、当初はそういうことは諦める。設立して走りながら考え る。自問自答しながらいつも考える。悩んでいると答えがある時浮かぶもの だ。悩んでいないと答えは浮かばない。トップの仕事は悩むことだから。