□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第357回配信分2011年02月28日発行 再生の基本はまず経常収支の黒字化を 〜とにかく毎月の差引勘定を合わすこと〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●年度末が近づいたせいか、経営が難しい状況になり、SOSの応援を依頼され る企業さんが増えている。嬉しい悲鳴といいたところだが、ことはそんなに簡 単ではない。切羽詰っている企業さんも多いので、緊急度は100%にちかい。 日程が詰まっているというような、当方の理由などは関係ない。とにかく、早 く方向性を決めないといけない。金融機関も、3月末の決算に向けて格付けの 再検討などの見直しに着手し始めている。ことはのんびりしていられない。 ●のんびりしていられないが、当事者が意外とのんびりしている場合も多い。 周囲が気を揉んでいるのだが、どうもことの当事者にその意識が希薄なのだ。 周囲がやきもきするが、いたって切羽詰っているようにも見えず、相変わらず の日常を過ごしている。もっと、真剣に取り組んで欲しいと思えど、毎日毎日 そばにいるわけではないから、なかなか日常はつかめない。かくて、数週間 経ってお目にかかっても、ほとんど状況は変わっていない。ますます深刻に なっている。 ●もちろん交渉相手のあることだから、そう簡単に行かないことは百も承知 だ。特に金融機関との交渉は、骨が折れる。遅々として進まない社内改革。固 定費の削減、売上の増加、原材料原単位の向上など、課題は分かっているが従 来の方法、方式、やり方はすぐには変えられない。いや、変えることに抵抗感 が社内に満ち満ちている。また、経営者自身も、従来やってきたことを、そう 簡単に変えられない。変化とは心地よいことばだが、現実は厳しい。 <改革にはトップの不退転の決意が必要> ●当初、ざっくりしか毎月の試算表を見ていないが、こと細かに見せていただ くと、至るところに穴ぼこが開いている。我々が聞けば、見れば、どうも腑に 落ちない、理解できない項目に多額の金額が支払われている。従来からそんな ものだと思っていたとか、これはこれくらいが常識だと思っていたとか、世間 相場をご存じない場合も多い。また、それだけの対価を払うなら、これくらい のアウトプットを求めるのが当然と思えるが、ほとんどそういう交渉をしてい ない。 ●それくらいしか成果を受けていないなら、当然これくらいの金額に削減して もらうべきだと申し上げても、交渉が出来ない場合も多い。また、現場では毎 日毎日が従来の繰り返しで、明日は今日と同じがいい。明後日は明日と同じが いい。人間、変わることには相当な抵抗感がある。一言で変わるような現場な ら、従来からもうとっくに改善や改革が少しはできていただろうに。それが出 来ないから、こういう切羽詰った結果になってしまった。後悔しても仕方な い。 ●現場の改善は、言い古されたことばだが小さな改善、成功の積み重ねだ。特 に製造業の現場などは、なかなか改善が進まないのが実情だろう。それは、分 かる。しかし、それを肯定し認めていては、現場の改善は進まない。反対を押 し切ってでも、やらないといけないときは、やらないといけないのだ。トップ の不退転の決意がないと、現場の従業員の改善のやる気に火をつけることはで きない。反対が多いならやめようかでは、決して現場の改革はできない。 <まずはお金の収支勘定を合わす> ●何はともあれ、理屈はさておき、まずは毎月の収支勘定を合わすことだ。収 支勘定とは、お金の入りと出との差引だ。資金繰りと言い換えてもいい。 キャッシュフローでもいい。表現はどうでもいいが、とにかく毎月お金が持ち 出しにならないように、差引の勘定を合わして欲しい。切羽詰った企業は、い ま、ほとんどの企業が元金の返済を停止しているはずだ。元金の返済を停止し て、さらに毎月資金が足りないとなると、これはもうお手上げ状態だ。 ●このように言うと、非常に姑息な方法で資金収支を見かけ上合わす企業が出 てくる。社会保険料を滞納したり、税金を払わない企業が出てくる。従業員の 社会保険料は預かり金だから、会社のお金ではない。それを堂々と滞納して、 毎月の資金勘定を合わしている。こういう姑息な間違ったやりくりで勘定をあ わしても、早晩こういう状態は長く続かない。正当に払わなければいけないも のは、払う。節減できるものはとことん節減する。正統な方法でないといけな い。 ●一番手っ取り早いのは、まずは役員報酬からだ。自分の収入を削るのはしの びないという方もあるだろうが、会社の危機的状況の際に、そんな悠長なこと は言ってられない。大型の車がもったいないなら、さっさと処分してタクシー に切り替える。会社の費用で私的な行動のガソリン代まで負担させている場合 も多い。さっぱり、きっぱりと車は売却する。タクシーに切り替えれば、固定 費が変動費になる。絶対にそのほうが費用が少なくて済む。 <とにかく資金を少しでもためて前向きに使う> ●毎月の勘定を何とかあわせて、それから毎月資金を少しずつ貯める。貯める ように努力する。資金繰りで飛び回らず、本業に集中する。トップが本気で本 業に集中すれば、何か方法が見えてくるはずだ。それを間違って、この状況が 悪い責任を周囲に押し付ける。金融機関が悪い、従業員が悪い、役員が能無 し、取引先が悪い、・・・・。天につばしているようなものだ。能のない役員 を採用し、任命したのは、どこの誰だったのか。まぎれもない本人ではない か。 ●他人のせいにしている間は、業績の回復は望めない。他人のせいではなく自 力でどう切り開くのか考える。とことん押し詰まる、煮詰まる、切羽詰ると、 人間何とか智恵が出るものだ。少々楽観的だが、本当に追い詰められないと智 恵が出ない。窮鼠猫を噛むとは、けだし名言なのだ。ねずみも猫に追い詰めら れると、猫を噛むことができるという例えだ。なるほど、その通りだと思う。 元金の返済を停止し、資金収支を合わせて、資金をプールし、反転攻勢に打っ てでる。 ●とにかく、現状で手をこまねいていても、所詮ジリ貧になるだけだ。状況が 悪いときほど、積極的に打って出る。何も、じゃぶじゃぶお金を使うことを推 奨しているのではない。それより、ピンチのときほど智恵が出るものだ。い や、智恵を出さないといけない。智恵を出すのには費用は要らない。脳みそに いくら汗をかいても、費用は要らない。少しでも資金を貯めて、前向きの投資 に使う。虎の子の資金だから、絶対に効果を出すと誓う。そう念ずれば、活路 が開ける。信じて実行することだ。